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眼帯娘とオカルト先輩  作者: 水戸
HINOTAMA
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16


「甘利ちゃん。さっきバリエーションって言ったよね? これ以外の話もあるのかい?」「ええ、それはですね____」「先輩っ! 甘利ちゃんと何の秘密の話をしてるんですかっ! そんなに楽しそうにっ!」


 ガバッと紗綾が二人の間に割って入った。手にはジョッキを持っている。


「ほらほら先輩、何辛気くさい顔をしているんですか! グビッと!」


「ちょっと紗綾さん。楽しそうとは何ですかー、真面目な話をしてたんですよっ!」


 突然の紗綾の横槍に甘利があからさまな不快の感情を顕にする。しかし紗綾はどこ吹く風で。


「ま、紗綾にとってはどうでもいいですけど! そんな事より楽しく飲みませんか!」


「黒澤先輩は私の話を聞きたいって……」


「甘利ちゃんのばかーっ! ひくっ! 誕生会のメイン人物を独り占めなんてっ! ズルいぞっ! えいっ!」 


 ぺしり、と紗綾が甘利の頭を叩いたので甘利の頭に血が上る。

「紗綾さんの馬鹿ーっ!」


 アルコールも良い感じに入ってぺしぺしと叩き会う、見ている人にとっては微笑ましい、当人たちにとっては本気のつもりの乱闘が始まった。 


 駿河がキャットファイトを冷ややかに横目でみつつ距離をとってグラスに口をやるとあっさりとした苦味が口の中を満たした。それだけではなく、柑橘系の香水の匂いがした。 


「……筒賀」


 筒賀澪。目にかかってしまうんじゃないかと思うくらいに長い前髪が相も変わらず顔を覆っていて表情を読み取ることはなかなかに難い。


 今日も言い方は悪いが黒の割合だけで言ったら喪服と遜色がないレベルで真っ黒なコーディネートをしている。だが、黒色の服は何でもこの女の子に嫌味な程に似合う。


「はっぴぃばぁすでぃ。駿河」


 ぱちぱちと筒賀が手を叩いた。


「筒賀? 大丈夫かお前?」


「大丈夫。ふにゃ……眠い……。駿河のふともも、借りる」


 ばたり、と筒賀が駿河の太ももに倒れ込んですやすやと眠り始めた。


「勝ちました」


 甘利の声が横から聞こえてきた。見ると言葉通りに勝ち誇った表情の甘利が居た。 


「甘利ちゃん?」


「紗綾さんを倒しました」


 甘利がテーブルのあっち側を指差すとそこには紗綾がぐでー、と寝ていた。紗綾は甘利にやられたわけではなくて、どうやら疲れて寝てしまったようだ。というかこの甘利、酔うと訳の分からない事を口走る性質たちだった。


「ふふふ」 


「あ、そうだ。甘利ちゃん」


「何ですか黒澤先輩」


「甘利ちゃんがすれ違ったときに僕の誕生会だって言ってくれれば良かったのに。そうすれば僕は恥をかかずに済んだのに」


「えへへー、だから先輩には秘密だって言ったじゃないですか……ひゃあ!?」


 甘利がすっとんきょうな声を上げる。御津が甘利の背中にグラスをくっつけている。甘利はくるりと後ろの御津を睨み付けた。

「なんですか御津先輩! 冷たいじゃないですか!」


「あみゃりたんは今日も可愛いわねー」


 御津奈々子。アパート〈ルプラホーン〉の住民の最年長で法学部。最年長らしく見た目の派手さに反して落ち着いてはいるのだが、酒が入ると一番子供っぽいのがたまにきずだが。


 奈々子が好んでつけるローズの香水が自分の前を通りすぎていくのを駿河は感じた。笑いながら手に持っている一升瓶が酒豪であることをこれ以上ないくらいに主張してくる。


 笑いながら御津がジリジリと甘利との距離をつめていっている。


「御津さん……? かなり酔ってません? ちょ、ちょっと近寄らないでください」


「冴木くんが酔い潰れちゃったもんだから。お姉さんが、甘利ちゃんと遊びに来たゾ」


「は、はあ……?」


「ああっ、その嫌がる顔ももうたまんない! 甘利ちゃん可愛いわねー! 食べちゃうぞー!」


「きゃー! 御津さん!? 意味が分かりませんっ! 止めてくださいっ!」


「がおー」


「にゃー!」

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