表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眼帯娘とオカルト先輩  作者: 水戸
HINOTAMA
1/59

プロローグ

0、追悼


 墜ちていた。

 ……地面。地面が見えた。


 冷たくて固い地面がぐんぐんと近付いていく。視覚的にだけでなく、感覚的にも分かった。


 天から堕ちる天使のようだと、柄にもなく思った。自らが神聖なるものではなく、対比すべき存在が悪魔だったからだろう。或いは悪魔自身は自分の身の周りの環境であったのかもしれない。


 重力が悪意と化して自分を手繰り寄せることをこんなにも残虐に感じるときが来るとは思わなかった。

 加速していく時間がこれまで生きてきたどんな刹那よりも長く感じられた。


 どうして。どうして自分の人生が閉ざされる運びになったのだろうか。……理由については、不思議と納得をしている自分が居ることを認識していた。自分に向けられていた怨恨の深さに驚いている自分と受け入れている自分とが同居していた。


 ただ。やっぱり。でも、だからといって。


 まだ、死にたくない。そんな感情を抱いてしまうのは、あの人のせいだった。仮に死ななければならなくとも、死にたいわけではなかった。


 最後に頭に思い浮かべたのは、好きだったあの人。大切だった人。


 落ちていく先にあの人が居てくれて、私を受け止めてくれれば、どんなにか幸せだったろう。でも、居ない、受け止めてくれない。


 私の落ちていくその場所に、あの人さえ居てくれれば全ては最初からハッピーエンドであったかもしれなかったのに。


 私の身が投げ出されたのは自業自得だ。


 だから、これは自殺だったのだろうか? それとも他殺だったのだろうか? そんなことすら分からない。

 冷たくて固い地面が、すぐそばまで迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ