上:最悪な誕生日だっ!
短めのを書きたくて、投稿しました。
なるべく早く、次話を投稿したいです。
長さが長めです。
よろしくお願いいたします。
今日は、僕にとって大切な誕生日だ。
両親と兄二人と、楽しく昼食を食べ終わったあと、みんなでサロンへ移動し、メインイベントでもあるプレゼントを、父上が僕に差し出してきました。
「クリストファー、14歳の誕生日おめでとう。さぁ!プレゼントだ!!これが何だか、わかるね?」
「ありがとうございます、父上!ロッド、ですよね?とっても、楽しみにしていました!!」
そう答えた僕は、父上の持っている銅褐色のロッドを見つめ、違和感を感じた。
14歳の誕生日に必ず贈られるロッドは、本人以外が使えぬよう、ロッドに魔力登録する。
登録される前は、何かの金属で出来てるのだろうと思われる銅褐色に、透明なガラス玉が付いているだけの、ただの棒である。
それが普通なのだ。だから、違和感などあるはずないのに…。
でも…。そう。ゲームでクリストファーが持っていたソレは、金色の金属で出来ていて、腰ぐらいの長さに、握るのにちょうどよい太さ、上の方は台座になっている。
そして、その台座には、拳ほどの丸いガラス玉がのっかる。その色は濃い青で、無数の金色の気泡のようなモノが中に入っていて、とても綺麗なのだ。
え…?ゲーム…??
ロッドに食い入るように見つめる僕を不思議に思った父上は、訝しげな顔をして聞いてきた。
「どうかしたのか?見つめてないで、受け取りなさい。さっそく、魔力登録をしようじゃないか?私やイリサと同じ水属性だと思うが、クリストファーは楽しみだっただろう?」
「えっ…?あ、はい!そうでした!『その者の属性がガラス玉に宿り、その者の心がロッドの形を変える』。ずっと、僕のロッドはどんな風になるか、とっても楽しみにしていたのです!」
父上の言葉で我にかえった僕は、興奮しながらロッドを受け取った。
だって、ワタシがいたところは、魔法なんて無かったんだもの。だから、夢にまで見た魔法を使えるんだから、興奮しない方がおかしい!
ん…?日常的に生活魔法や魔法具があるのに、なんで、“無かった”って思ったんだ?
なんか、記憶がオカシイ…?
「さぁ、クリストファー?」
「っ?!あ、はい!」
父上に促された僕は、ロッドを横にし、しっかりと両手で持った。
そして、この日のために、何度も何度も練習してきた、魔力登録の呪文を唱えた。
『我、クリストファー・アボット。汝と契約し、汝の主となるものなり。我の心を受け取め、姿を変えよ。チェンジ!』
僕が言い終わるのと同時に、ロッドは光に包まれた。徐々に光がおさまり、ロッドを見た僕や他のみんなは、驚きを隠せなかった。
柄には、先が割れている花弁5枚からなる花と、その花弁と思われるモノが散らばって彫られていた。
どこかで見たことのあるはずの花なのに、名前が思い出せないが……。
そして、成人男性が持つにしてはやや短めだし、細い。ただ、少し青みのある銀色は、綺麗だった。
杖の先が途中から4本にわかれて、ガラス玉を包み込むようになっていて、角度を変えて見てみれば、ハートのようにも見えるのだった。
さらに、その上には、クラウンのようなものまでついている。
両親と同じ水属性を表す、水色のガラス玉なのは良い。だが、その中の気泡は、何故か桃色で、よく見るとハートのような形をしていた。
ソレは、誰が見ても、とっても可愛らしいと思うだろう、ロッドだったのだ。
「そんな、どうしてっ!?なんで僕のロッドが、とっても可愛らしいんだっっ!!?こんなロッドじゃ、恥ずかしくて、学園にも行けないよ!!」
僕は思わず、大きな声で叫んでしまった。
こんなロッドが出来上がってしまった事に対して、とても恥ずかしいけれど、父上ならどうにかできるかも?という期待を込めて、僕は父上に詰め寄った。
「これは…。一体、どうすればいいのか…。」
「クリスのは、とっても可愛いな…。大丈夫。クリスに似合っているから。」
「アドルフ…。でも、ロッドには、ちゃんとクリストファーの魔力登録されているものねぇ。」
寡黙な次兄のアドルフが、的外れな事を言ったので、父上の隣にいた母上は、困った顔になっている。
「落ち着けよ、クリス。俺の同級にも、少し可愛らしいロッドを持つ男もいたぞ。それに、俺も水色のガラス玉に銀色のロッドだ。同じじゃないか。」
「少し、じゃないよ!!とっても可愛いってアル兄様だって言ったじゃないか?!しかも同じ配色でも、ウィル兄様のは格好いいロッドだ!僕のとは、全然、違うっ!?」
長兄のウィリアムのロッドは、水色のガラス玉に銀色の柄は長く、角張っていて、男らしい太さだ。
丸みを帯びている自分のロッドとは、まったくちがうのだ。
「何を騒いでいる?せっかく、俺が祝いに来てやったのに…。クリス、出迎えもなしか?」
急に響いたのは、今、一番会いたくなかった方の声だった。
僕はロッドの事しか考えられず、周りを気にする余裕がなかったので、執事がこちらに案内してきているのに、気づいていなかった。
気づいていれば、このロッドを隠せたのに…っ!!
「失礼致しました、アーサー王子殿下。お出迎えもせず、申し訳ございません。」
父上は、一歩前に出て、王子殿下に礼をしたのを見て、母上たちと一緒に、僕も頭を下げた。
「ドレイク叔父上、顔をあげてください。この場はプライベートですし、急に、押し掛けたのはこちらなので、気にしないでください。」
そう、王子殿下は、僕たち兄弟にとって、一応従兄弟なのだ。現国王陛下は母上の異母兄だから、ちょっとだけ、僕たち兄弟にも王族の血が入っていることになる。だから、兄様たちは婚約者探しに困っているんだけどね…。
そんなことを思っていたら、すぐに近くに王子殿下が来ていて、僕のロッドをじぃーっと見つめていた。
「クリス…。お前のロッドは、女性が持てるほど、とても可愛らしいではないか。ウィル兄やアル兄が持つと違和感があるが…。うむ。クリスが持つと違和感がないな。あぁ、そうだった、忘れるところだった。14歳の誕生日、おめでとう。」
そう言った王子殿下へ、文句を言おうとした僕に、後ろで控えていた従者が、綺麗にラッピングされた箱を差し出してきた。
「え…。あ、ありがとうございます。アーサー王子殿下。箱を開けても?」
「もちろん。」
箱を開けると、ロッドを腰にさげておく為の皮のベルトだった。
「何も装飾がないのは、ロッドの意匠と同じになるよう呪文が刻まれていてな。まず、ベルトを腰につけ、ロッドを差し込むと、意匠が変わるのだ。さぁ、着けてみろ、クリス。」
そう言われたが…。どうにも、気が進まない僕は、じぃーっとベルトを見つめていた。
「ふぅ。従弟殿は、俺に着けてほしいらしいな。ほら、貸せ。」
そう言った王子殿下は、ニヤニヤしながら、僕に有無を言わさせないよう、どんどんベルトを着け、ロッドを差し込んでしまった。
その瞬間、淡い光に包まれたベルトは、意匠を変えたあと、光がおさまったけれど、周りの人の反応を見て、僕はベルトを見る気にはなれなかった…。
次話をがんばって投稿したいです。