変身★
ゆっくりと流れる雲を眺めながらあたしは思っていた。。。
家に帰りたい
でも彼女がそれを許さないだろう。
横断歩道の向こう側からこちらに向かってかわいらしく走ってくる人物。
「ごめんね、待った??」
全然、てかむしろ来ないでほしかったな。
「・・・来ないでほしかった、とかおもってるんでしょ??」
怪しげにあたしの顔を覗き込む彼女。
エスパーかっ!!!
心の中で欧米かっ、並みの鋭い突っ込みを入れた。
古いって??ほっとけ
「じゃあ、いくよっ!まずはあたしの家に☆」
・・・なぜ??
「えっ、なんで??」
「なんでって。。。あんたその恰好で合コンいくつもり?!」
「え、うん」
「ちょっ、待ってよ。ビックリだわ!東京沈没ぐらいビックリ!!雪ちゃんビックリ!!!」
・・大げさって思うのは私だけ?
これでも結構おしゃれしてきたつもりなんだけど。
「こりゃ、話にならんワ。いくわよ!」
そうしてあたしは拉致された。
そして、あっという間に雪の部屋。
ピンクとかかわいらしい感じの部屋なのかと思ったら意外とシンプルだ。
壁も床も天井も真っ白。
赤、黒、青の家具やおしゃれな照明がセンスよく並べられている。
「ここに座って」
赤の丸い小さなテーブル。
床に敷かれた黒の洋風な座布団に座る。
「すごい。おしゃれな部屋だね〜。しかも意外ときれいにしてあるし。」
「意外て何よ!!失礼ね」
ほほを膨らます彼女はほんとに可愛い。
そしてあいつを彷彿とさせる。
やっぱ兄妹なんだな。似てる。
雪は正志の妹であたしと同級生。
つまり正志は一個上なのです。
雪とは正志と仲良くなって最初に正志の家に遊びに行った時、ちょうど雪がいて仲良くなった。
正志と雪の苗字が違うのは両親が離婚したからだ。
正志が高2、雪が高1の時だったそう。
いまは別々に暮らしているけどすごく仲がいい。
たまに・・・羨ましくなったりする。
「あった!!なき!!これ着てよ。」
なにやらガサガサやっていた雪が何か見つけたようだ。
差し出されたそれは・・
「ムリーーー!!!」
あたしは叫んだ。
だって、雪が差し出した服、ワンピースなんだけどさ、すっごいミニスカで・・・
パンツ見えるわっ!!!
いやいや、言っているうちに雪に強引に着せられてしまった。
青が基調のポロシャツみたいなワンピース。
シフォン素材で裾にはフリルが付いてる。
「きゃーーーーーーーーー!!!かっわいい!!!」
「はあぁ・・・・・」
どよ〜んとしたあたしを尻目に雪は着々と作業をつづける。
もぅ、どうにでもなれーーーーーーーーーー
あたしは抵抗するのをやめました(泣)
しばらくメイクやら髪の毛やら、されるがままになってると、
「できた!!!」
どうやら終わったらしい。
やっと解放だわ〜〜〜
「やばい。やばい。なき、あんためちゃ可愛いじゃん!!
可愛いだろうとは思ってたけど、まさかここまでとは。。。。。」
何を言ってるんだ…と思いながら雪に差し出された鏡で自分の顔を見てみる。
・・・えっ、これ、あたし???
雪は口をあけてぽかーんとしている。
その時、部屋のドアをノックする音が鳴った。
「雪ーー!!いるのか???」
正志だ!!
ど、どどどどうしよ、こんな姿見られたらきっと。。。。
《お前何してんの。マジにあわねぇし!!引くわ〜(爆)》
・・・ってなことになるかもしれない。
あたしは妄想の中で一度正志の脇腹にパンチを加えてから雪に助けを求めた。
「雪!!正志きた!!」
が、雪は助けるどころかにやり、とほほ笑み
「正志〜〜!!!みてみて!!」
正志を呼んだ。。。。
終わった…
私は自分の負けを確信した(涙)
「何だ・・・・よっ?!」
いやいやあなた。そんな化け物見るみたいに見なくてもさ。
「ちょっと、見ないでよ!」
あたしは顔から火が出た。
火が出る思いだったってはよく言うけど自分の中では出た。
「かっ、」
正志が口を開いた。
かっ??かっって何だ??
「カワイイ・・・・・」
へっ?!
正志を見ると顔が真っ赤だった。
「やべ、マジ可愛い」
「でしょ!!あたしもビックリ!!日本沈没ぐらいビックリ」
ぁ、規模が大きくなってる。
「なき!これなら今日の合コン、絶対モテモテだよ!!」
雪ちゃん・・・・・それはタブー・・・・
「はぁ!!?合コン??」
ほら見ろ、正志さまがお怒りでっせ。
「なき!!俺は合コンなんて認めん!!今からおれとデートしろ。」
「ちょっと〜あたしのなきをつれていかないでよ。」
「知るか!!ほら、行くぞ」
あの〜あたしのことで兄妹ゲンカしないでください。
「ちょっ!!!正志ー!!」
本日二回目の拉致。
ってか、このカッコ恥ずかしすぎ〜!!
しばらくして噴水公園って表示されている公園にたどり着いた。
まぁ、噴水公園っていうくらいだから噴水があるんだろう。
あたしはそんなことを考えながらも、いつもと違う距離感に違和感を感じていた。
正志はなぜかあたしの方を見ようとしない。
「照れてるの??」
彼は何も答えない。
真ん中にある噴水に設置されてるイスに座った。
やっぱり噴水あったな。
時刻は18:50分。
犬の散歩している人や、仕事帰りのサラリ―マンが通り過ぎていく。
「なきはさ・・・」
ふいに、彼が口を開く。
あたしは静かに聞く。
「可愛いんだから、合コンとかいったら、他の男に持って行かれちゃうだろ?」
「だから、合コンとか行かないで」
「・・・」
あーた、いくらあたしが好きだからって自己中すぎない??
あたしはさ、正志のこと好きだからうれしいけどさ
あたしがもし正志のことなんとも思ってなかったら
何なのこいつきもーーーーーー!!
って思っちゃうゾ★
でも、うれしいけどさ
「・・わかった」
あたしがそういうと正志は嬉しそうに笑った。
ポツ・・・ポツ
「雨・・・・」
ポツポツポツポツ・・・・
「雨…だね」
ポツポツポツポツポツ・・・・・・ザーーーーーーー!!!
「雨だーーー!!いくぞ!!」
あたしたちは慌てて近くのトイレに駆け込んだ。




