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チャイルド  作者: ポン汰
4/6

十人十色

―同じような髪形。同じような服装。同じような仕草・歩き方・しゃべり方・・・etc.


「なーきィ!!」



甘ったるく可愛い感じの声。

そしてその声の持ち主が子犬がしっぽを振ってるように無邪気に近づいてくる。


(・・・こいつ、可愛いな。あたしが男だったら絶対襲うわ〜)


ここは大学の食堂。

隣のテーブルの女の子5.6人の集団に集中していたあたしの意識が彼女に移る。

海老フライとハンバーグがメインの定番みたいなランチを食べるあたしの前に彼女は座った。


栗原くりはら ゆき


雪って名前がぴったりなくらいの白い肌。

さらに胸のあたりまで伸びたまっすぐな黒髪は、最初会ったとき、雪女ゆきおんなを連想させた。


雪もまた、あたしにとっては特別な存在。

「親友」って呼べるような子だ。(あたしの中では)

人懐っこく友達も多い。しかも美人。

あたしと正反対ともいえる雪。

なんであたしを相手にするのかいまだによくわからない。


あたしは「友達」がすくない。

そのすくない「友達」でさえも「友達」って呼べるのかナゾ。

広く浅い「知り合い」なら多いけど。


「ねェ〜、今日さ、コンパあるんだけどなきもいかない??」


「え〜あたしそういうの苦手だってば」


自信なく言うあたしに雪はすごい勢いで説教?した。

「なきはさ、磨けばぜったい可愛くなる!!いつもそんなださいメガネして、同じようなカーディガンばっかつけてるからくさっちゃうんだよ!もう大学生2年目よ?!たまには正志以外にも目をむけようよ!!」



腐ってますか・・・そうですか・・・

可愛い顔して毒舌なんだから★


「う〜、わかった。でもあたしすぐ帰るよ?」


「オーケー★行くことが大事なの。なきの対人恐怖も克服しなきゃ」

雪も正志と同様あたしのこと理解してくれる。


「・・ありがと」

うれしくてたまらない。思わず笑みがこぼれた。


「いつもそんな顔したらいいのに〜。なきさ、いつも鬼みたいに怖い顔してるんだから。」

こうだよ、といってあたしの顔まね(あたしは断じてそんな顔してない)らしきものをする雪を見てため息。

ちょっと〜、と隣で怒る雪を無視。


それにしても大学は人が多い。


多すぎて他人のことなんて気にならないし、自分のことも他人は気にしてない。


大学は自由で好き。


小・中・高みたいにひとつ「クラスメート」という狭い世界に縛られることがないから。

40人前後の人間が無理やり「教室」一つの空間に閉じ込められる。


そこには組織図があって、必ず「リーダー」がいる。

次に「リーダー」に近い位置にいる「トリマキ」

そこからはいくつかのグループに分かれていて、そこにもそれぞれ順位がある。

必ずどこかのグループに配属しなければならない。

弱肉強食。

「リーダー」のお気に召さなければ、ゲームオーバー。



十人十色。

これが本当だとしたら「教室」の中は四十人四十色。

一体何人の人間が自分の色を出しているのだろうか。



あたしは・・・

いつからこんなに人の顔色をうかがうようになったのだろう。

いつからこんなにも人の「存在」を気にするようになったのだろう。

いつからこんなに人の色に染まるのがうまくなったのだろう。


あの時のあたしは、「あの子」の色に染まるのに必死だったんだ。

あたしの世界は「あの子」中心でまわっていた。

・・・違う。あたしだけじゃない。

あの時の「クラスメート」のなかでもきっと。

「教室」の中は「あの子」でなりたってた。


かがみ まさみ


一生忘れられない名前。

あたしはあいつを許さない。










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