2話・異世界生活スタート
今回は神視点からスタートです。
〜 神 side 〜
神は困っていた。
「ぐぐぐ、しまったのう。せめて幾つかは聞いとくべきじゃったか。」
頭に浮かんでくるのはさっきの会話の一シーン。
“能力とかうんぬんはわしが勝手に決める。”
そう、始めは自分が見てて面白い状況に勝手に転生させ、さっき転生のために亜空間に引きずり込んだ奴が苦労する様を見てほくそ笑んでいたいと思って言ってしまった言葉だ。
「クソ、アイディアが降りてこんのじゃい。」
神としてどうかと思うセリフを吐きながら何かを考えている神がそこにはいた。
そう、こいつは今自分で後でツマラねぇとか思わないような設定を考えているのだがなかなか決まらずに悩んでいるのである。ゲスい。
神は考える。
(どんな能力じゃったら面白いかの。ただ単純に便利な能力を持たせてやってもいいのじゃが、それだとつまらん。やっぱここはチート。そう、チートな能力をもたせてやろう。しかし、いきなり世界が終わる系でも面白くない。微チートくらいの能力にしとこう。まあそれでもあっちじゃすごく強いんじゃがのう。そういえばあの世界は魔法もあった。確か魔法を使えるのは限られた者だけじゃったかの。まあ使えるようにしといてやろう。設定は濃いほうがいいのじゃ。あとは確か記憶の一部を消すのだったかのう?あっちへ行っても混乱しないよう生前の名前や人間関係、その他諸々の記憶を消しときゃいいじゃろ。他に決めることはあったっけかのう?まあ後の事ははあっちの世界に委ねよう。名前決めるのとかめんどいしの。はっ!そうじゃ種族決めんと。種族決めるのはこれまで数々の神がやってきた異世界転生の醍醐味じゃ。危うく忘れるとこだったわい。種族は…そうじゃのう。うーぬ。人型の何かになるようにしとこう。ランダムで選んで、転生してからのお楽しみでも面白いかもしれん。ほっほっほ、なんか今からしばらく退屈にならん気がしてきたわい。性別はこれまで通り男にしておこう。良し!それじゃいざ転生じゃ!)
この間0.8秒。
〜 なんかいきなり死んだらしいので転生しようとしたら思い描いていたのと全然違くてしかも神に選んだ選択肢を間違えられる不憫な人 side 〜
いきなり謎の空間からさらに変な空間に引きずり込まれてしまい。
意識が飛んでいた。
(ハッ!)
意識が戻り、なんとか今の状況を理解するために目を開けようとしてみると。
(…目が開かない。why?なぜ?)
瞼がめっちゃ重い。
起き上がろうとするが身体に思うように力がかからない。
声を出して誰かを呼ぼうとする。
「ゔぅ…あぅ…」
声がうまくでない。すぐに息がきれる。
ここまでやって自力では動けないことが分かり。何もできることがないので神に最後に言われたことについて考える。
数分後、今の状況についてなんとなく理解した。
(俺は今、転生したところだよな。つまり、今は子供だからこうして身動きが取れない訳か。なんか納得。)
ガチャ!
ドアの開く音が聞こえた。
(ん?誰か来る?おそらく親とかそこら辺だろう。)
「…グスッ。ゥゥ。」
声の高さでなんとなく女性の声だとはわかるのだが、いま気になるのはそちらでは無く。
(え?なんか滅茶苦茶泣いてる気がするんだが。気のせいだろうか。)
「ぅぅ…ごめんね。ノア。」
(俺の名前ノアなのか。というかなんで謝られてるの俺?)
「貴方のお父さんとお母さんが、グスッ」
(俺の親が何⁈)
「死んじゃったのよ。」
(はい?)
女性は、まだ生まれたばかりの俺に言ってもわからないだろうと心のどこかで思っていながらも様々なことを語ってくれた。
女性が俺の両親と親友のような関係だったこと。
両親がこの世界では数少ない魔法使いという種族だったこと。
そして自身も魔法使いであること。
両親が突然起きてしまった国間の争いに巻き込まれてしまったこと。
そして死んでしまったこと。
俺を引き取って育てると約束したこと。
俺に強く育って欲しいこと。
俺は転生後、親にあったことはない《というかさっき意識が戻ったばかりだが》がこの人の話によるととてもいい人だったらしい。
だが、そんな親が簡単に死んでしまうような危険な世の中だと聞き、誓った。《言葉にはでないが》
(絶対に親と同じように争いに巻き込まれたりして弱いまま死にたくない。理不尽に殺された親の代わりにその分生きてやる。)と。
そしてその後、俺はこの女性《名前はミシェルというらしい》のもとですくすくと育てられた。
注1)神が考えていることは作者が実際に思っていることではありません。
注2)ノアは男の子の名前です。要検索。最近の何でもかんでもキャラを女性にするゲームのせいで女の子の名前だと思われてるだけです。