第一章
この小説は少し作者の癖のある書き方で進行していくので、多少場面がつかめないことがあるかもしれません。
あの頃の記憶を時々思い出すのは、まだあの頃に心残りがあるからだろう
追憶〜retrospect〜
第一章記憶
空はもう真っ赤に染まっていた。
季節は秋、少し肌寒くなってきた風が僕の体を貫く。
僕は少し足を速めながら駅へと向かった。
駅内は人であふれており、どこか僕だけがこの空間で
ただ1人浮いているような気がした。
丁度来た電車に乗り込み空いている席を見つけ座ると
やっと今日一日が終わったような気がしてほっとする。
ゆっくり動き出した電車の窓から景色を眺めていると、
何かを忘れているような気持ちに僕はなる。
30分くらいかけ電車が目的の駅に着いた。
僕は止めておいた自転車の乗り、家へと進めた。
そして、それは帰り道の途中のことだった。
「また・だ・・・、」
僕は自転車を止め、頭を右手で抱え思い出そうとする。
周りはすでに暗くなってきてきて街頭の光だけが辺りを照らしていた。
「ダメだ・・・思い出せない・・」
僕は最近、何か思い出せそうで思い出せない。そんなことが度々起こっていた。
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
「どうして、こう思い出せないことばかりなのだろうか・・・。」
次の日の授業中、僕はそんなことばかり考えていた。先生の声も耳に入らなかった。
そのおかげで、今日の授業はまったく手付かずだった。
「お前が授業中、上の空なんて珍しいな。なんかあったのか?」
休み時間、そう声をかけてきたのは同じクラスで親友の相沢亮輔だった。
「んっなにもないよ。」
僕は聞き流しながら教科書を鞄にしまっていた。
しかし相沢は僕に疑いの視線を向けたまま
「いや、あやしい」
よっぽど暇なのか、今日はなぜか追及してくる。
秋風が教室の窓を揺らす。
「なあ、」
僕は話題を変えようと相沢に言う、
「なんだよ、?」
「亮輔は中学の頃の記憶覚えているか?」
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
また今日も僕は学校が終わるとそそくさと足を速め駅へと向かっている。
でも今日は早く家に帰りたいだけではなくて、雨が今にでも降りそうな様子だった
から、傘をもってない僕は濡れる前に家に着きたかった。
まぁ結局、早く帰りたいことに変わりはないのだが・・
帰り途中、今日の学校の休み時間の亮輔との会話を思い出す。
「はぁ?何言ってるんだよ、そりゃいろいろ覚えてるよ、だって
まだ中学にいた時間のほうが長いんだから」
相沢は不思議そうな表情をしてそう言った。
「そうか・・・。」
聞いた自分がなんだか恥ずかしくなった。
「なんか、今日のお前変だな」
相沢がそういった後、休み時間終了のチャイムが学校内を響かせた。
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
「雨か・・・・」
空を見上げると、降りそうで降らなかった雨雲からポツポツと雨が降ってきた。
仕方ないなと思い、雨に濡れながら帰っていると、道路を挟んだ向こう側で、
中学生の数人が僕とまた同様、雨に濡れながら走って帰っているのを見た。
その時だった。
中学の頃の自分が1人で雨の中を走っている、断片的な記憶が脳裏に
浮かんできたのだった。
続く。
追憶読んでくださいましてありがとうございました。
この小説はとあるブログで書いているものなのですが
こちらでも連載していきます。これからもよろしくおねがいいたします。