【introduction】
預言してやろう。
退屈なのだろう? この世の理をすべて網羅し、最早その精霊は万能を得たと思ったか?
いずれお前の元に、世界の運命を背負った子が集まるだろう。
一人は「世界を守る者」。
一人は「世界を愛する者」。
一人は「世界を治める者」。
一人は「世界を壊す者」。
その子らをどう導くか――世界をどうしたいのか、決定的な奇跡をお前に委ねておく。
観測は私の役割だ。この世界の精霊で構成されている以上、お前も世界の為に生きよ。
その精霊を腐らせておくことは世界の為にならない。何もしない、という選択をその黄金色の輝きに課すのは、この世界がより進化するのに勿体無い生命活動だ。
この世はお前が悟っているほど浅くもなく、簡単でもなく、退屈でもない。
お前が本当に万能なのか、四人の子らに問うがよい。
この世の奇跡を知り得ていながら、その手のひらに運命が転がらぬ難しさを味わえ。
それが私からこの世界のお前に送る、とっておきの――美酒だ。
鐘塔の窓からミスリアは一人、夜天に輝く星々を見上げる。
手にした杯を空に傾け、彼女は見えない誰かに向かって語った。
――一人の運命が花開いたぞ。
――果たして……それは世界をどうする役割のものだったのか?
――守る者が壊す者を覚醒させたのか? 壊す者が守る者を育てたのか?
杯をあおる。中の酒が一滴、彼女の口元を伝った。それを舌で舐め取り、ミスリアは――
「なるほど、美酒だ」
と満足そうに呟いて、もうこの次元にいないだろう相手にその想いを届けるのだった。
読了感謝です。大勢の読者さんのご期待があるなら、続きを書こうと思っています。