運命の出来事(2)
俺はいままで聞いたことがない高橋の叫び声に圧倒されて一瞬だけではあるが腰の痛みを忘れてしまった。
驚いた顔を見て高橋はいつもの感情に戻っていた。
「あ・・・あの、ごめんなさい!」
俺が驚いたことで無駄に気を遣わせてしまったらしく、俺はすぐに態度を改めた。
「あ、全然気にしないで。いきなり叫ばれたからびっくりしただけだから。」
それを聞いて高橋は理解したらしく落ち着きを取り戻していた。
高橋が落ち着きを取り戻して一安心したのもつかの間、再び腰の痛みが俺を襲ってきた。
「木下君、大丈夫?しっかりして!」
高橋は痛がっている俺を懸命に気遣って声をかけ続けてくれた。
「大丈夫だ・・・心配ない・・・」
それでも腰の痛みは治まることを知らなかった。
するとまたしても突然、高橋が驚く問いかけをしてきた。
「木下君、よかったら腰を見せてくれない?」
俺は痛がりながら高橋の言葉を理解して返事を出した。
「何か分かるのか?」
すると少し明るい口調で答えた。
「私、お父さんが医者で、たまに父が患者さんの診察をしているところを見たことがあるから。」
いつとなく高橋は明るい口調で今まで見たなかで一番の笑顔だったと思うくらい可愛く思えた。
俺は少し戸惑ったが、思いよりも腰の状態が心配で気になっていたし、先ほど気を遣わせてしまったお詫びとして高橋の要求を素直に受け入れることにした。
「高橋が診れるなら・・・よろしく。」
俺は恥ずかしそうに答えた。
すると高橋は「任せて!」と言わんばかりに「うん。」とこちらも恥ずかしそうに頷いた