転校生と俺
俺は角田先生に遅刻した本当の理由を説明して、生徒指導室で居残りをする約束してから教室へと急いだ。
教室がある二階へ上るとちょうど朝のLHRが行われようとしていた。
俺は教室のドアを思いっきり開けて、クラスのみんなに「おはようございます!」と一言告げてからいつものように自分の席に座った。
そしていつものように出席簿を読み上げた担任の斎藤先生が皆の名前を読み終わった後に一つ咳をしてから話始めた。
「今日からこのクラスに転校生が来る。みんな、仲良くするように!」
それを聞いてクラスのみんなからはどよめきが起きた。
しばらくしてから教室のドアが静かに開き、転校生が入って来た。
その転校生とは拓哉が朝方に会ったあの女子高生だった。
俺はハッとして気がついたら席を立ち上がっていた。
「ん?どうした?木下。」
俺は正気に戻って何事も無かったかのように席に座りなおした。
そして斎藤先生が引き続き転校生の自己紹介をした。
「では紹介する。今日からこのクラスになる高橋由梨亜ちゃんだ。みんな、仲良くな!」
そして今度は高橋がみんなに挨拶をした。
「みなさん、初めまして。今日からこのクラスにお世話になります。高橋由梨亜です。宜しくお願いします。」
高橋が挨拶を終えると教室から大きな拍手が起きた。
そして次に斎藤先生が高橋の座席を教えた。
「高橋は木下の隣に座ってくれ。木下、宜しくな!」
俺は「はい。」と返事して高橋を席に誘導した。
高橋は「ありがとうございます。」と丁寧におじぎをして俺の隣に座った。
そして午前中の授業が終わって昼食時間になった。
俺はいつものように屋上に向かった。
屋上に行くと、そこには見慣れた子が一人座っていた。
「おー。おつかれ拓哉。」
「おー。おつかれ。」
先に俺を待っていたのは俺と同級で同じクラスの米山武志だった。
俺と米山はご飯を食べていると米山からあの子の話をしてきた。
「なぁ。あの子を見たか?」
「えっ?」
「いや、えっ?って今日転校してきた高橋由梨亜ちゃんだよ。」
「あー。あの子ね。」
俺は武志が高橋の事が気になっているのではないかと一瞬思った。
「まさか、お前。」
「んな訳ねぇだろ!」
俺は真面目で真っ赤になってる武志の顔を見てつい爆笑してしまった。
でも本当は気になっていたのは武志ではなく、俺自身である事にこの時は気づいていなかったのだ。