使い魔大暴走!?(後編)
「ここはどこ……? 私は……。そうだ! あのデッカイ熊にやられて意識が……。ということはここは夢?それとも天国とか……」
由香は何もない、光が永遠と続いている所に一人で立っていた。由香がボーっとしていると、前から知らない人が歩いてくる。
「由香、今日は何の日か覚えていますか?」
由香は驚く。それもそうだ。知らない人にいきなり喋りかけられたのだから。
「今日は……あなたの誕生日とか? 後は……聞いておいて何もないとか!?」
知らない人は首を軽く振る。
「そのどちらでもありません。今日は新月の日です。」
由香はハッとする。そうだ、今日は新月だ。新月に現れるっていう天使の力をかりて、昨日呼び出した悪魔を魔界に送り返そうとして……。
「由香、新月の日、つまり今日はあなたの人生が大きく変わる日です。……悪魔と契約しなさい。そうすることで世界はあなたに傾く。質問ですが、 ファルメーター を知っていますか?」
「知ってますけど……。ファルメーターって人より能力を持っている人ですよね? 何故そんなことを聞くんですか?」
知らない人は笑顔でいい放った。
「それはあなたがファルメーターだからですよ」
由香は一瞬口が閉まらなくなった。
「はぁ? ……すいません。どういうことですか?」
由香が嫌がった理由。それはファルメーターとは人と違う能力を持っていることで差別を受けている人種のことを指すからだ。今ではファルメーターは世界で数人しかいないという。
「どういうことって……あなたはファルメーターだと言っただけですけど」
ダメだ。この人とは話が合わない。
「そろそろ時間です。それでは」
知らない人は光の中に消えて行った。
「えっ……。ちょっと待ってよ!」
そこで由香の意識もまた光の中に消えて行った。
☆
「……ハッ! ここは……、現実に戻って来てる!ってそんなこと言ってる場合じゃな~い」
由香の現状は変わっていなかった。なぜなら、由香は熊に飛ばされて空中を舞っている最中だったからだ。
ストッ
「えっ?私……落ちてない!? 誰?誰が助けてくれたの?」
由香は誰かにお姫様抱っこされていた。と、頭上から声が聞こえてくる。
「お前さ、人に助けてもらって『ありがとう』の一言もねぇのかよ」
「あんた……私が昨日間違って召喚しちゃった悪魔!?てか、あんた人じゃないじゃん」
そう、由香を助けてくれたのは悪魔だったのだ。
「悪魔悪魔って俺にも名前ってもんがあんだよ! 特別に教えてやろう。俺様の名前は ヴァルバート だ。ご・主・人・様」
「ご主人様なんてやめてよ……。私の名前は……由香。たっ助けてくれて……ありがとう」
「ふ~ん。由香って俺が思ってたより素直なんだな」
「なっ……何よ! 人が下手に出てるからってよくも……!てかそんなの言ってる場合!?」
由香の言った通り言い合いをしている場合ではない。由香たちが話している間にもデッカイ熊は攻撃しようとしている。
「そうだったな。由香の魔法が思ってたより強力で中々あの部屋から出られなかったからおかげで時間がかかったよ」
「ヴァルバート、今の言葉って私を誉めてるんだよね?」
「そんなこと言ってる場合じゃなさそうだ」
デッカイ熊が爪を振り回す。ヴァルバートが避けなかったら重症を負っていた所だ。そして、ヴァルバートは手のひらを熊にかざす。……すると、熊はいつの間にか身動きが取れなくなっていた。
「どっ……どうなってるの?」
「どうって、魔法かけただけだろ」
「魔法って……杖も持ってないし、呪文も言ってないじゃない……。っもう、どうなってるのよ!理解できない!ヴァルバート、あんたが悪いのよ」
「まあまあ、そんなこと言ってる間にとどめさせよ」
「だから! 私は今杖を持ってないって言ってんじゃない!」
由香は下に落ちている杖をチラッと見る。あれさえあれば私だって……。
「何やってるんだよ! 早くとどめ刺さねぇと俺の魔法効果が消えるぞ」
「……ねぇ、人の話聞いてる? 杖がないって言ってるよね? ヴァルバートがどうやって魔法をかけたか知らないけど、私はそんなことできないんだから……」
由香は『こいつ人の話聞いてんのか?』と思う暇もなく、ただただ固まっている熊を見つめていた。
「あぁ、聞いてるぜ?杖持ってないんだろ?それがどうしたんだよ。さては魔法のかけ方が分からないんだな?こうやるんだよ」
と言いながら由香の手を優しく上に持ち上げる。
「こうして敵に手を向けて、脳の中でどんな魔法をかけたいのか想像するんだ。もちろん呪文を呟いても発動するけどな。さ、やって見ろ。まぁ?俺の事を?いままで悪魔呼ばわりしてた奴が出来るか知らねぇけどな」
一瞬、こいつを優しいと思ったのと、ドキッとしたの完全取り消しね。ハイ。
「……。でも、やらないよりやってみた方がいいよね。出来る可能性は0%ではないわけだし……。やろう。やってみよう」
「早くやれよ。このくだりいらねぇだろ」
集中、集中。ヴァルバートの言葉は無視して……。まず、手をかざすんだよね。それから……、黒魔法……、そうだなぁ、炎系がいいかな。「よし、決めた!」
魔法を決めた瞬間、炎が凄い勢いで熊に襲い掛かる。びっくりして思わず目を閉じた。ゴォォォという音が小さくなったので、目を開けるとそこには熊が跡形もなく消えていた。つまり、消滅していたのだ。
「えっ、え~!どういうこと?」
「まだ信じてねぇのかよ。お前はファルメーターなんだよ」
これは信じるしかなさそうだ。
「そ……そうみたいだね」
「やっと信じたか。それで?俺を使い魔にするのか?」
確かにその問題がまだ残っていた。
「……少し、少し考えさせて」
「ちっ、わーったよ」
「でも、とりあえず無事に事が済んで良かった~‼」
「そうだな、ま、俺のおかげだけどな」
「最後が多い‼」
こんな少しほのぼのとした会話を空高く見ている者がいた。
「ふっ、面白い。私にふさわしいのか少しためさせてもらおう」
白い翼の生えた者はどこかへ飛び去っていった。
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