使い魔大暴走!?(前編)
可愛い小鳥のさえずり、雲一つない空、窓から射し込む朝日、中庭から聞こえる怒鳴り声……って
「うっるさーい!」
部屋で一人叫ぶ少女、由香がベッドの上で暴れ回っている。
「せっかく寝てたのに!今日はカリァと朝から一緒にどこか行こうって約束してるのに。」
どうやら由香は学院で数少ない友達の一人、カリァ=コンクレフゥトと遊ぶ約束をしているようだ。ちなみにカリァは何億もの金を当然のように動かしている一流大貴族「コンクレフゥト卿」の一人娘である。金もっていいなぁ、由香はそんなことを考えていた。その時、ドアが5回ノックされた。
「由香!おはよー。来ちゃった!てへぺろ」
ドアの向こうに立っていたのはカリァだった。
「はやっ!私まだ用意も何も……。」
「だってー、待ちきれなかったんだもん」
ここまででわかったと思うが、カリァは凄く自分をアピールする方だ。(ぶりっこだということ)
「だってまだ待ち合わせまで30分もあるじゃん」
「30分だけ、でしょ」
こうしたうざい会話をしている間に由香は用意を済ませた。そして、用心深く鍵を閉める。
「由香~、そんなに鍵にこだわらなくても……。」
「最近泥棒増えてるみたいだし。魔法なんかに頼っちゃ駄目!」
「由香は魔法の才能あるのに、なんで使わないかなぁ?」
由香はこう見えてリアリストなのだ。では、なぜ由香が魔法学院にいるかというと、この国、ミシュラは生まれてきた赤ん坊にある検査を行う。その検査とは、魔法が使えるかどうかということである。ここまで説明すればわかったであろう。
「あっ、そういえばカリァは名前変えなかったの?」
「うん。めんどくさいし。」
「そっか。」
名前は変えても変えなくても自由だ。といっている間に由香たちは建物の玄関に来ていた。すると、前から男子生徒らしき人物が走ってきた。
「わ~!ヤバいって」
他の生徒も走って逃げている様子だ。
「何がヤバいの?」
カリァがのんきそうに聞く。
「外でモンルが使い魔召喚してたらデッカイ熊が出てきてさ、暴れてんだよ!こうしちゃいられない。早く逃げないと……。あっ君たちも早く逃げた方がいいよ」
と早口に男子生徒はいい、逃げて行った。
「由香、そのデッカイ熊を倒せば成績上がるかなぁ?最近落ちてるんだよね。とりあえず外に出てみよ~」
「ちょっと待って!カリァ、外は危険なのよ~」
注意を聞かず、カリァは外に出ていってしまった。はぁ、と小さくため息をつきながらも由香はカリァを追いかけて行った。
☆
外では、デッカイ熊と学院生徒の激しく熱かりし(?)バトルが繰り広げられていた……と思ったのもつかの間、生徒皆逃げてるし!?外の中庭にいるのはカリァと由香、そしてデッカイ熊を召喚した張本人のモンルしかいない。と思ったのもつかの間(って2回目だし!?)
「キャー!デッカイ!こんなの無理」
とカリァは走って逃げた。さっきまでの威勢はどこへ?由香は、つくづく自分勝手な人だと思った。そんなことをしている間にまたデッカイ熊が暴れだした。先生たちはというと、今日は国全体の学院教師が集まって会議をするんだといって朝早く学院を出ていってしまった。そして由香は決めたのだ。今まさに暴れているデッカイ熊を倒すことを。ま、とりあえず魔法かけっみっか。熊だから炎属性かな。
『ファイアーボール』
熊が少しよろける。ちょっと効いたかな?でも……
「ぐゎ~!」
デッカイ熊は怒ったみたいで、長い爪を振り回している。
「わ~!」
あっ、まだモンルいたんだ。でも逃げていっちゃった。中庭に残ったのはこれで由香ただ一人。このデッカイ熊意外に強い。
「ぐゎ~!!」
熊が突風を作り出す。由香はそのまま後方に飛ばされて行った。
(熊ってあんなことできるもの?今、白魔術の気配がしたのは気 のせいか……)
「白魔術には黒魔術でしょ!」
由香は自分で勝手に納得し、呪文を唱える。
『ダークプローション』
辺り一面暗くなる。そして、空から雷が落ちる。
「どうよ!この技は得意中の得意なんだから」
熊はしびれて動けないみたい、と思っていたら由香の体に衝撃が走る。そう、由香は油断していたのだ。熊のしびれがこんなに早く解けるなんて思ってもみなかったからだ。熊はさっきより強力な突風を繰り出した。由香の身体は空中に浮かぶ。その時、魔術を使う人の命とも言える杖が手から離れる。この時、由香はもうダメかも知れないと心からそう思った。杖がなければ魔法は発動出来ない。ということはこの状況は挽回出来ないということだ。(私の人生はこんな所で終わるの?……そんなのイヤ!私は、こん な所で死んだりなんてしない)
由香の周りに光が満ちる。由香の意識はその光の中に消えて行った。
由香の運命はいかに!?そして、部屋に閉じ込められていた悪魔はどうなったのか。次回に続きます。
感想お願いします。変な所などあればご指摘よろしくお願いいたします。