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第40話「深き海から来たもの」

 ディナー会場で食事を終えた俺とアーリアはデッキへと移動していた。

 外は暗くなっており、夜空には綺麗な月が浮かんでいる。


「もうすっかり夜だな」


 景色に目を向けると大海原が広がっており、夜のせいか暗くてなんだか不気味な感じがする。

 遠くに明かりが見えるが、おそらくルクアーヌの灯台だろう。

 明かりを見ると、ここから街まで結構な距離があることがわかる。


「ゲェプァ……ちょっと食べ過ぎたブヒ」


 アーリアが俺の隣で、とても美少女がするとは思えない下品なゲップをする。

 一緒にいるうちにアーリアのこういう所に俺は慣れてしまったが、すれ違った乗客が驚いた顔をしていた。


「アーリアは、もう少し周りに気を使えよ」

「人前でオナラをしないように気を使ってるブヒ」


 だったらゲップするのにも、少しは気を使って欲しい。


「それとさっきは肉ばっかり食べすぎだ、ちゃんとバランスよく野菜も食べないとダメだぞ」


 アーリアは会場で肉料理ばかり食べていた。


「アーリアは食べるのが早すぎるし、もう少しゆっくり噛んで食べないと体に……」

「そういう話は後で聞くから、今はオレに話をさせるブヒ」


 そもそも、なぜ俺達がこんな場所にいるかというと、アーリアが話があるからデッキに行きたいと言い出したのだ。

 ちなみにケインさんとローゼさんはリコリスの歌が終わると、いつの間にかいなくなっていた。


「……わかったよ、それで話ってなんだ?」


 他にも言いたい事はあるけど、今はアーリアの話を聞くことにする。


「最近、シンクは何を悩んでるブヒ?」


 それは唐突な質問だった。


「クリスとタングラルに出かけてから、なんだか様子がおかしいブヒ、何かあるならオレに話してみるブヒ」

「べ、別に何も……」


 そんな事を聞かれると思っていなかったので、思わず声がうわずってしまう。


「オレはシンクのパートナーブヒ、シンクが悩んでるなら力になってやりたいブヒ」


 アーリアの綺麗なエメラルドの瞳が俺の顔をまっすぐ見つめてくる。

 その瞳からは、アーリアが本気で俺の事を心配しているのが伝わってきた。


「アーリア……」


 正直、告白されて答えに悩んでるなんて、アーリアには言いづらい。

 だけど一人で悩んでいても答えは出そうにないし、アーリアに話せば自分の気持ちを整理する事ができるかもしれない。


「わかった、実は……」


 俺はタングラルでクリスから告白されたこと、カリンとシオンからも告白されたこと、そして答えを出せずに悩んでいること……それらをアーリアに伝えた。


「むぅ、シンクはモテモテブヒね……なんだかイライラするブヒ」


 アーリアは告白の答えを先延ばしにしている俺に対して、不誠実なことを怒っているのだろう。


「……すみません」

「シンクが謝る必要はないブヒ、これはオレの気持ちの問題ブヒ」


 気持ちの問題って、どういうことだ?


「それよりシンクの気持ちを確認したいブヒ、シンクはカリンの事が好きブヒ?」

「そ、それは……」

「付き合うとか抜きにして、好きかどうかだけで考えてみるブヒ」


 カリンの事を考える……。

 カリンは一見冷静そうだけど、意外に照れ屋な所もあって、ソフィーの事をとても大事に思っている優しい女の子だ。

 顔もかわいいしスタイルも良くて、ソフィーの身の回りの世話をしてるから家事も得意だ。

 きっと結婚したら、いいお嫁さんになると思う。

 俺は、そんなカリンの事が……。


「俺はカリンを意識してる……きっと好きなんだと思う」


 告白された時は突然だったのもあり、ソフィーも一緒にと言われて答えを出せずにいたけど、俺はカリンを恋愛対象として意識してる。

 そして、この気持ちはきっと好意なんだと思う。


「それじゃあ、シオンはどうブヒ?」


 シオンの事を考える……。

 シオンは何を考えているかわかりにくい所もあるけど、俺やアーリアの事をきちんと考えてくれている信頼できる相手だ。

 今まで辛い思いをしてきたシオンには、絶対に幸せになって欲しいと思っている。

 シオンが俺を求めるなら、幸せにするためにもその気持ちに応えたい。

 だけど、シオンは男だ……例え元は女だったとしても、今のシオンは男なんだ。

 そんなシオンを俺は……。


「俺はシオンを幸せにしてあげたい、俺を求めるならその気持ちに応えてやりたい」


 そう思うのはシオンの過去に同情しているからじゃない、俺がシオンに惹かれているからだ。

 そうじゃなければ、答えを出すのに悩んだりしない。

 正直、性別に関してはまだ完全に割り切れていない……だけど俺はやっぱりシオンが好きなんだと思う。


「クリスの事はどう思ってるブヒ?」


 クリスの事を考える……。

 クリスは男友達のいなかった俺にとって、女の子とできないような話題も気楽に話せる存在だ。

 剣聖の息子で才能もあり、努力家で女になった今も、その強さはかなりのモノだ。

 強さだけじゃない、女になったことで見た目もかわいくなり、胸もかなり大きくて、その姿はまさに美少女だ。

 クリスなら男心も理解してくれるし、恋人としてはとても魅力的だと思う。

 だけど、少し前までクリスは男だったのだ……今は女でも、その事実は変わらない。

 俺は、そんなクリスが……。


「俺は、クリスを女の子として好きなんだと思う」


 だからあの時、クリスが男のままだったらという話をされて、胸が苦しくなった。

 俺はクリスに男友達よりも、女の子として傍にいて欲しいと思っているんだ。


「結局、みんな好きってことブヒ?」

「そうみたいだな……」


 自分の気持ちを確認してみたけど、結局俺はみんなの事が好きなようだ。

 だからこそ、誰か一人を選ぶことができないでいる……。


「それじゃあ、最後にオレのことはどう思ってるブヒ?」

「なんで、アーリアのことまで……」

「いいから答えるブヒ!!」


 俺はアーリアのことを考える……までもないな。


「アーリアは俺にとって大事なパートナーだ、変わりなんていない大切な存在だよ」


 素直に自分が思っている事をアーリアに伝える。

 パートナーになった理由はどうあれ、今となってはアーリア以外のパートナーなんて考えられない。

 なんだかんだで、俺はアーリアのことが気に入っているのだ。

 

「オレもそう思ってるブヒ、シンク以外のパートナーなんて考えられないブヒ」

「そうか、ありがとな」


 アーリアが自分と同じ気持ちでいてくれたことが、すごく嬉しい。

 絶対にアーリアと一緒に試験を乗り越えて学院を卒業しようと改めて思う。

 こうやって相手の気持ちを確かめることも、パートナーとして大事なことなのかもしれない。


「だ、だからオレをシンクの……」


 そう言って、アーリアが黙り込んでしまう。


「アーリア?」

「……シンクのパートナーでいさせて欲しいブヒ」

「そんなの当たり前だろ、今さら何言ってるんだ」


 アーリアの変わりなんていないとさっき伝えたはずだ。


「シンクは気が多いから、改めて確認しただけブヒ」

「うっ、それはそうだけど……パートナーに関してはアーリアだけだ」


 それだけは絶対だ、何があっても俺はアーリアをパートナーから変えるつもりはない。


「シンクを信じるブヒ……それで告白の答えは出そうブヒ?」

「それはまだだけど……」


 三人とも好きだということはわかったけど、どうするべきか答えは出ていない。


「みんな好きなら、全員シンクの女にすればいいブヒ」

「オレの女って……」


 つまりハーレムを作れってことだろうか?

 そういえば、前にカリンが……。


『もし他の方達から告白されて選べなくなったら、そういう道を進むのもありだと思いますよ?』


 なんて言っていたのを思います。

 あの時は、他の誰かから告白されるなんて思っていなかったのだが……。


「オレのいたオークの部族の強いオスにはメスが何匹もいたブヒ」

「いや、人間とオークを一緒にするなよ」

「この国の王様だって、たくさん妻がいるって聞いたブヒ」

「国王は特別だよ、ハーレムなんて作れるのは一部の人間だけだ」


 聖王国の法律では一夫多妻は可能だ。

 だが、ハーレムを作るなら、他人から認められる地位と豊富な資産が必要だ。

 現在この国でその両方を持っているのは、王族と一部の資産家くらいだ。


「でも、シンクの悩みを解決するには、この方法が一番ブヒ」


 アーリアの言うとおり全員の気持ちに応えられるなら、悩む必要も無くなる。


「いや無理だろ……その前に相手が納得しない、一番大事なのは相手の気持ちだ」


 いくら相手のことが好きでも、簡単にハーレムを認める女性はいないはずだ。


「シンクの周りにいる女はみんな普通じゃないから、たぶん大丈夫ブヒ」


 確かに普通じゃないけど、アーリアが言える立場じゃない。

 カリンは認めてくれそうな気もするけど……意外に照れ屋で純情っぽい所もあるし、実際はどうだかわからない。


「そもそも俺にハーレムなんて……」

「オレはシンクならできると思ったから言ったブヒ」


 俺はただの一般人だ。

 生まれはちょっと特殊で、最近創造錬金なんてモノが使えるようになったけど、それがハーレムを作るのに役立つとは思えない。


「何を根拠に言ってるんだ?」

「根拠なんてないブヒ!!」

「おい」

「オークは強くなければメスを自分のモノにできないブヒ、だからメスがたくさん欲しいオスは強くなるブヒ……シンクも欲しい女がたくさんいるなら、ハーレムを作れる人間になるブヒ」


 根拠なんて意味は無い、それよりもハーレムを作る努力をしろとアーリアは言いたいのかもしれない。


「もちろん、どうするかはシンクの自由ブヒ……だけど、このまま悩み続けるならシンクにとっての一番の答えを選んだ方がいいと思うブヒ」


 俺にとっての一番の答え……。


「例えシンクがどんな答えを出しても……一人になっても、オレだけはシンクの隣に絶対いるブヒ」

「アーリア、俺は……」


 その時、どこからか爆発音が聞こえ、船が揺れだした。


「な、なんだ!?」

「なんか船が揺れてるブヒ!?」


 少しして揺れは収まったが、どうにも嫌な予感がする。


「おい、海に何かいるぞ!!」


 乗客の男性がそう叫ぶと、海面から突然何かが飛び出し、デッキの上に着地する。


「なんだ!?」


 それは一瞬人の形をしているように見えたが、よく見ると目が飛び出していて、首の左右にはエラがあり魚のような顔をしていた。

 体は全体的に灰色がかった緑色だが腹部は白く、皮膚は光ってツルツルした感じで、背骨の隆起した部分はウロコで覆われていた。

 手足の先には水かきがあり、かぎ爪がついている。


「ひぃ、モンスターだぁ!?」


 デッキにいた乗客達は、その姿を見て船内に逃げ込もうとするが……。

 さらに海面から別の魚人が現れて、船内への扉の前に立ちふさがる。


「こ、これじゃあ逃げられないじゃないか!?」


 そして、次々と海面から魚人が飛び出し、船のデッキに飛び乗ってくる。

 その手には槍を持っている者までいた。

 その数はざっと見て、三十匹以上いるように見える。

 魚人達は目ばたきをしない顔で俺達の事をじっと見つめており、その顔からは何の感情も伝わってこない。


「どう見ても友好的には見えないな」


 おそらくモンスターではなく、ゴブリンやトロルのような亜人の類だと思うが……こんな種族がルクアーヌの街の近くに住んでるなんて聞いたことがない。


「シンク、どうするブヒ?」


 戦うにしても今の俺達には武器がない。

 アーリアは魔法を使えば戦えるだろうが、道具すら持っていない今の俺には創造錬金しかない。

 だけど人がいる場所で創造錬金を使えば、俺が邪神を創造できることが他の人間に知られて、聖王騎士団に伝わる可能性がある。


「きゃぁあ!!何するのよぉ!!」

「や、やめてくれぇぇぇ!!」


 魚人達は逃げようとする乗客達に襲い掛かり、辺りはパニック状態になる。


「このままってわけにはいかないか……やるぞアーリア!!」

「わかったブヒ!!」

「まずは槍を持ったアイツを狙う」


 俺は小声でアーリアに指示を出すと、槍を持った魚人に向かって行く。

 それに気づいた魚人が俺を突き刺そうと槍を構える。


「ライト・ニードル!!」


 アーリアの指先が光ると細い光の針が現れる。

 光の針は槍を持った魚人に向かって高速で飛んでいき、飛び出た目に突き刺さる。

 すると魚人は目を押さえて怯み、その隙をついて俺は槍を両手で掴むと腹を思いっきり蹴り飛ばし、魚人の持っていた槍を奪い取る。


「武器がないなら奪い取るだけだ!!」


 奪い取った槍を胸に突き刺すと、魚人はその場に倒れた。

 今度はその光景を見ていた別の魚人が襲い掛かってくるが……。


「フレイム・シュート!!」


 アーリアの手のひらに炎の塊が現れると勢いよく飛んでいき、襲い掛かってきた魚人の頭に命中する。

 魚人の頭は燃え上がり、俺に数歩近づいた所で力尽きて倒れた。


「こいつら見た目のわりにあんまり強くないな」


 俺が簡単に槍を奪えたし、アーリアの下級魔法で倒れるくらいだから、普通の人間とそんなに変わらないのかもしれない。


「たぶんそこらのザコモンスターとあんまり変わらないブヒ」


 冒険者ギルドの依頼で下級モンスターとは何度も戦っているし、このくらいの相手なら俺の創造錬金やアーリアの姫騎士の力を使わなくても楽に倒せる。

 だけど、今回は敵の数があまりにも多すぎる、せめて船内に逃げることができれば……。

 そんなことを考えていると、今度は魚人達が三匹同時に襲い掛かってくる。


「アーリア、俺が二匹止めるから、一匹倒してくれ」

「わかったブヒ!!」


 俺は槍を投げつけて、一匹目の肩に命中させると、二匹目の攻撃を回避して後ろに回りこみ、背中に蹴りを入れて転ばせる。

 その間にアーリアに襲い掛かった三匹目が、炎属性の魔法で返り討ちにあい頭部が黒こげになる。


「続けていくぞ!!」


 二匹目が倒れている間に一匹目に向かうと、かぎ爪で襲い掛かってきたが軽く回避する。

 脇腹に蹴りを入れて肩の槍を引き抜くと、体勢を崩した魚人の胸に向かって槍を突き刺す。

 それと同時に転んでいた二匹目がアーリアの炎属性魔法で燃やされる。


「オレとシンクにかかればこんなもんブヒ♪」

「気を抜くなよ、まだ敵はたくさんいるぞ」


 仲間を倒された事に気づいた他の魚人達が、今度は十匹で俺達の方に向かってきた。


「いくらなんでも、今度は多すぎブヒ!!」


 アーリアの魔法では単体しか狙えないため、さすがに数が増えるとこっちが不利だ。

 クトゥグアの力を創造すれば、一瞬で焼き殺すことはできるが、それではあまりにも目立ちすぎる。


「姫騎士の力を使うブヒ?」


 アーリアが姫騎士の力を使えば、例え剣が無くてもこの場を切り抜けることは可能だろう。

 だけど誰が見てるかわからないし、できれば姫騎士の力は人前で使って欲しくない。

 そうなると……。


「アレを使ってみるか……アーリア、俺の後ろに下がってろ」

「よくわからないけど、わかったブヒ!!」


 タングラルの図書館の本を開いた時に出会った邪神……あれは目で見えるモノではないし、今のパニック状態なら目立たないはずだ。


「俺は創造する……」


 俺は目を閉じると、タングラルの図書館で出会った邪神……『トルネンブラ』を創造する。

 クトゥグアの時とは違い、今度は創造するのと同時に邪神の名前が頭に浮かんでくる。

 それと同時に喉が燃えるように熱くなり、俺の口から、静かで、ゆっくりとして、断固とした、嘲笑うかのような音色が鳴り響く。


「シンクから、なんか変な音が聞こえるブヒ!!」


 アーリアが驚いているが今は説明している暇はない。

 トルネンブラの音色は衝撃波となり、襲い掛かってきた魚人達をまとめて吹き飛ばす。

 だが、それと同時にデッキの床まで破壊してしまう。


「ぐはっ!!」


 俺は喉が苦しくなり、その場で血を吐き出してしまう。

 なんだこれ……クトゥグアの時と違って上手く制御できない!?


「シンク、大丈夫ブヒ!?」

「のど……が……切れ……て……ごふっ!!」


 喉が切れているのか、話すことができず再び血を吐き出してしまう。


「今、治癒魔法をかけるブヒ!!」


 アーリアが俺の喉に治癒魔法をかけると喉の痛みが弱まり、なんとか話せるようになった。


「はぁはぁ、ありがとうアーリア」

「いきなり血を吐いたから、びっくりしたブヒ」


 まさか創造錬金を使っただけで、こんな目にあうとは思わなかった。

 俺がトルネンブラを上手く制御できなかったのが原因だと思うが……その理由がわからない。


「でも、アイツらは倒せたみたいブヒね」


 破壊された床には穴が空き、その下には襲い掛かってきた魚人達が倒れていた。

 体がありえない方向に曲がっており、もう動く気配はない。


「けど、まだ終わりじゃないぞ」


 さらに別の魚人達が俺達の方に向かってくる。

 その数は二十匹……いや、さらに海面から新たな魚人達が現れ、その数は三十匹以上になった。


「こいつらいったい何匹いるブヒ!?」


 さらにデッキの上に吸盤のついた大きな触手が姿を現す……それはデビルオクトパスのモノだった。

 しかも一匹ではない、三匹のデビルオクトパスが現れた。

 もしかしたら、実習中に遭遇したデビルオクトパスと何か関係があるのかもしれない。


「今はそんな事を考えている余裕はないか……」


 魚人が三十匹ってだけでも多すぎるのに、上級クラスのモンスターが三匹も現れたら、普通に戦って勝てるわけがない。

 こうなったらアーリアが姫騎士の力を使うか、俺がクトゥグアの力を創造するしかない。

 そう思っていると、破壊された床の穴から声が聞こえてきた。


「シンク様、こちらにいたのですね」


 それはリコリスの声だった。


「リコリス、なんでここに!?」

「シンク様を探していたんです」


 そう言うと、リコリスは穴からジャンプしてデッキの上に飛び乗ってくる。

 穴の下からデッキまで3メートル以上はあるのだが……。


「シンク様、またお会いできましたね」


 リコリスは俺の前までやってくると、嬉しそうに微笑む。


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!ここは危険だ早く逃げ……」


 その時、リコリスを狙って魚人の一匹が槍を投げつけるのが見えた。


「危ない!!」


 俺は咄嗟にその場からリコリスを突き飛ばす。


「あっ……」


 驚いた顔をしているが、リコリスは無事なようだ。

 だが、俺の右肩には魚人の投げた槍が突き刺さっていた……。

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