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冥福を祈ります。

作者: 霜月あやと

同級生の男が死んだ。俺の親友だった男だった。


学校の屋上から落ちたようだ。


遺書も何も残さず死んだから、自殺なのか事故なのかわからない。


警察は自殺ではなく事故だと判断した。理由は遺書がないこと。


生前自殺をほのめかす事も言っていない事。


手すりに座っていたのを誤って転落しただろうと言う事だ。


そのせいで、屋上は完璧に立ち入り禁止になった。


もちろん、その話はクラスに衝撃が走った。クラス皆でアイツの葬式に出た。


泣いた子もいっぱいいた。アイツは皆に人気があったから。


葬式の次の日には、アイツの机に花が飾ってあった。


ひっそりとアイツの代わりに置いてある花。


アイツが本当に死んだと確信させる。


その花を持ってくる子は、アイツの彼女。


寂しそうに辛そうに花を添える。


「どうして死んじゃったの……」


彼女がか細い声で呟いた。俺は何も言えなかった。



アイツと彼女はとても仲の良い恋人だった。付き合って一年は立つだろう。


アイツはいつも俺に彼女の話をしていた。


楽しそうに嬉しそうに彼女についてアイツは語っていた。


アイツは最後まで気づいていなかったんだ。


俺が彼女が好きだって事。


アイツの彼女の話を聞くたび、俺は辛かった。


日に日にアイツへの憎悪が心に溜まっていくのがわかった。


気持ちを悟られないように必死に隠してきた。


アイツへの憎悪と彼女の思い。


何度も自分に言い聞かせた。


『アイツはとても良い奴なんだ。俺よりもアイツの方が彼女に似合う』


俺はアイツの親友だから本当にそう思っていた。


思っていたのに……。


でも、結局駄目だった。


限界を突破したとき、俺は行動してしまったんだ。


屋上にアイツを呼び出して、俺は背中を押した。


アイツは相手が俺だったから全然警戒していなかった。


あっという間の出来事だった。


大きい音がした時全てが終わったんだ。俺はすぐその場を離れた。


誰も俺を疑わなかった。



「……せめてアイツの冥福を祈ろう」


俺は泣き出しそうな彼女にそう一言言った。


彼女はこくりと頷いた。


彼女のショックがでかいのは誰にでもわかった。


今の彼女には支えがないと駄目だと言う事も。


アイツの代わりに俺が彼女を支えてあげよう。


今度こそ、俺の思いは報われそうだ。

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