10-5 お前の「なんでもねぇ」程信用できない言葉はない
最近アンジェロの様子がおかしい。どこかに向かってにゃんにゃん言っていたり、急に耳と尻尾をピンと立てて立ち上がり、テレポートしていなくなったりする。
にゃんジェロに聞いても、アンジェロに聞いても「なんでもねぇ」と言って答えない。
クリスティアーノ達に何か聞いていないかと相談してみたが、彼らは何も知らないし、聞いてみても答えないのは同様だった。
だけどクリスティアーノが言っていた。
「アイツがなんでもねぇって言う時は、大体何かある」
いつも一人で我慢してしまうからと、クリスティアーノ達も心配そうだった。
だから、ミナとクリスティアーノは、ヴィンセントに相談する事にした。アンジェロはヴィンセントにビビっているので、彼の言う事はよく聞くのだ。ヴィンセントなら聞いているかもしれないし、聞いていなかったら聞いてもらえばいいと考えた。
「それで、お前はどうしたいのだ?」
赤土コンクリートの建物の最上階。この部屋とレオナルドの部屋だけは、周囲への警戒の為に窓が大きくとられている。その窓から入ってくる月明かりを背景に、ヴィンセントが対面に座るアンジェロに問いかけた。
アンジェロは報告をしていた。失敗の報告を。そしてどうするべきか相談したら、逆に質問で返された。
「私は……」
言いながらヴィンセントの様子を窺うように覗き見る。ヴィンセントがご機嫌な事の方が珍しいが、今日も例に漏れず冷たい目をしている。
だが、それがいつもの冷淡なだけの調子なのか、怒っているのかは、アンジェロにはまだ測りかねた。
だから、恐る恐る答える。
「伯爵達の感情を無視するなら、ですが……今のミナに関わらせるわけにはいかないと考えています。ミナには……」
一つ唾を飲み込んで、勇気を振り絞って言った。
「私がいますから」
ヴィンセント達の気持ちを無視するなら。ミナの事を思うなら。
頑張ったようだがやはり怯えるアンジェロの様子に、ヴィンセントはやれやれと息を吐く。
「私も同意見だ」
ミナとクリスティアーノがヴィンセントの部屋の前まで行くと、丁度アンジェロが出てきたところだった。やっぱり何か話していたのだと、クリスティアーノと顔を見合わせた後、アンジェロに駆け寄った。
しかしミナ達に気付いたアンジェロは、猫に変身してミナ達の横を通り抜けて行ってしまった。それを呆然と見送り、やはりミナとクリスティアーノは顔を見合わせた。
「んもー! やっぱり何か隠してるよーっ!」
「何も逃げるこたねぇだろうよ……」
逃げられる、頼ってもらえない。友としてこんなに悲しいことはない。ミナとクリスティアーノはアンジェロの悪口を言って、お互いを慰め合うのだった。




