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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
10 オーストラリア編
93/140

10-3 やっぱりヴィンセントパパが怖すぎる


 初日はシャンティ達と近況報告をしあって、翌日はミナはお留守番だと言われた。何故自分だけ留守番なのだと不貞腐れたが、アンジェロもお留守番を言いつけられたので、渋々二人でシャンティの屋敷に留まっている。


 ヘタレ猫は基本的に食事・排泄・入浴の時は人間に戻る。ただ、睡眠時や気が緩んでいるときもうっかり人間に戻ってしまう事がある。

 なので今日もミナが不貞腐れながらベッドに寝そべる横にすり寄って行って、ミナの撫でる手が気持ちよくてウトウトしていたら人間に戻ってしまい、ミナもビックリしたがアンジェロもビックリした。


 ミナは驚いたが、久しぶりにアンジェロと話したかったし、アンジェロも猫に戻ろうとはしなかった。ヴィンセントパパがいないからである。


「置いてきぼりで拗ねてんだろ」


 アンジェロがからかう様に言うので、思わずミナは口を尖らせる。


「だって、また私だけ仲間外れなんだもん」


 ミナが拗ねる気持ちも理解できたが、アンジェロはヴィンセント達がミナをお留守番させた理由もよくわかっている。

 ヴィンセント達はエゼキエル家へ行っているのだ。彼らはクリシュナの家族だ。クリシュナの事を報告しないわけにはいかない。

 記憶があれば当然ミナも連れて行ったが、今記憶のないミナがエゼキエル家へ行ったとして、父親を失ったラジェーシュや、祖父に懐いていたジャイサルの気持ちを思うと、記憶のないミナが他人行儀にクリシュナの死を悼むことは、彼らに見せるべきではないと判断したのだ。


 だが、アンジェロにはそれをミナに説明する事は出来ないし、説明する気はない。説明したところで記憶がないのだから、話す必要もない。


 だからアンジェロはベッドに寝転がったまま、不貞腐れてシーツに顔を埋めるミナの髪を撫でた。


「そんな拗ねるなよ。こういう時でもなきゃ、お前と二人にはなれねんだし」


 その言葉にミナは勢いよく顔を上げた。そうだ、よく考えたら人間の姿のアンジェロと二人きりになる機会などそうそうない。今がチャンス!


「アンジェロ大好き!」

「グフッ!」


 勢いよくアンジェロに飛び込むと、その衝撃でダメージを喰らったようだが気にしない。

 アンジェロにぎゅぅっと抱き着くと、ダメージから回復したらしいアンジェロも、ミナの背中に腕を回して抱きしめた。それがすごく嬉しくて、どきどきしながらアンジェロを見上げた。

 ミナと視線を合わせたアンジェロは笑ってミナの頬を撫でる。


「伯爵には秘密だぞ」

「うん」


 そうしてミナもアンジェロも目を瞑り、今にもくちづけを交わそうとした刹那。


(おいクソ猫、調子に乗るな)


 ヴィンセントの声が頭の中に響いて、アンジェロは飛び上がって驚いた。その勢いのまま起き上がって、窓や周囲を見渡してキョロキョロする。


(どっから見てんだ! なんで知ってんだ! 怖い怖い怖い!)


 震えあがったアンジェロはすぐさま猫に戻り、ミナの腕の中でガクガクと震えていた。


秘密結社トワイライトの短編集の方に、この辺りの時期の小話を掲載しました。

「ヴィンセントパパとヘタレ猫の攻防」http://ncode.syosetu.com/n0426bm/5/

そちらも楽しんでいただけると幸いです!

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