10-2 お前ら本当に人間か
ミナ達が住んでいるのは数千の砂丘が連なり、荒野が広がる砂漠のど真ん中。砂漠気候で日照時間は長く、日中の気温は40℃を越え、夜間は-10℃を下回る酷寒だ。
元々は冒険者の為に建てられた家だったが、砂漠が国立公園になった頃には、無闇に冒険をする人もいなくなり、ほったらかされていた。
一番近い年は南オーストラリア州のアデレードという所だが、一番近いと言っても、それでも1000km以上離れている。野生動物保護の為国立公園とされていて、それ以外は民家など影も形もないし、それどころかインフラさえ整っていない、純然たる荒野である。
ミナ達はともかく、人間であるアンジェロ達がそんな所に住めるのかと、シャンティ達は不思議そうだ。
当然アンジェロがここを見つけたのは、単純にその場しのぎの為であって、住むつもりなどはなかった。
しかし、砂漠を横断しようとする冒険者や旅行者しか訪れないこの土地をヴィンセントが気に入ってしまった。
その為、人間でもある程度生活できるように、ミナとヴィンセントとアンジェロで改良を施したのだ。
少し南下して雑草の生えている荒野まで行き、そこに家を建てた。砂漠の砂や石を使ってコンクリートを生成し、ヴィンセントが上空から指揮監督しながらミナが家を成型。あっという間に立派な赤土コンクリートのビルが完成。
日照時間が長いので窓は小さめにした。砂嵐も起きるので、はめ込み式だ。木材は入手できなかったので、砂漠から採れたコンクリートや金属、ガラスを用いた。はめ込み式の窓ガラスをはじめ、石英のドア、銅の椅子。思った以上にインダストリアルでオシャレな建物になった。
次にヴィンセントが地面に亀裂を入れ、深く深く掘り進めていくと水が出てきた。雑草が生える水分があるなら、深く掘れば水が出てくると思ったのだ。これで井戸を作った。
水以外は用意する必要はなかった。電気も火もミナやアンジェロが発生させることが出来るからだ。現代っ子レミはそれに大喜びしていた。
忘れてはいけないのが空調だが、夜はミナが火や電気を使って家を温めて、昼はアンジェロが窒素を冷却して温度を下げている。これでかなり過ごしやすくなったし、能力の行使を維持するのは修行にもなると言ってヴィンセントも満足そうである。
だが、ミナ達は致命的なミスをしていた。吸血鬼は排泄をしない為、うっかりトイレを作るのを忘れていたのである。催し始めてからそれに気付いた、レオナルドの絶望的な表情が脳裏に思い返される。
慌てて工事をしてトイレも作った。絶対水洗じゃなきゃ嫌だと人間たちがいうので、レミにトイレの構造を教えてもらいながら作った。
こうして大体の生活基盤が整って、2,3日の間だけであるが、人間だけでお留守番も出来るようになったのだった。
話を聞いて感心したように頷いていたシャンティだったが、不思議そうにした。
「ミナ様たちもだけど、アンジェロ達も、メシはどーしてるんだ?」
そこも問題ない。大体買い出し係はアンジェロとクリスティアーノにお願いしている。恐らく今日はアンジェロがいないので、クリスティアーノがお買い物に行っている事だろう。
「いや、買い物行くって、近いところまで1000kmもあるんだろ?」
そこも大丈夫。クリスティアーノは筋力強化をすることが出来る。ためしにと思ってミナはクリスティアーノと砂漠で競争をしてみたのだが、全く勝てなかった。
以前レミが計測してみたら、音速に近い速度で走っていたらしい。なので、クリスティアーノに任せても2時間程度で買い物に行けるのである。
話を聞いてシャンティはジト目でにゃんジェロを見つめる。
「本当に人間なのか、そいつら」
「にゃーん」
「一応人間みたいだよ」
猫に人間だと主張されても困ると思うシャンティだった。




