9-7 ヴィンセントパパが怖すぎる
一先ず全員で砂漠のお家に到着し、戦いの経過を説明した後、今後の話を始めることにした。
ミナは当然の様にアンジェロ達に言う。
「アンジェロ達も一緒に来るよね?」
その問いかけに対して、アンジェロ達は返答しかねている。何故かというと、ミナの斜め横から、ヴィンセントパパがものすごい形相で睨んでいるからである。しかし、ミナはそれに気付かず続ける。
「アンジェロ、一緒にいちゃダメ?」
ダメじゃない。ダメじゃないが、いかんせんパパが恐い。パパの背後から悍ましい瘴気が立ち込めて、絶対零度の威容を放つ氷の視線に冷や汗が止まらない。
だがやはりミナは気付かずに、立ち上がってアンジェロの傍にかがんで、アンジェロの手を取った。
「アンジェロのことが好きなの」
その瞬間、ヴィンセントパパから溢れだす殺気! 意識が飛びそうになるほどの威圧感! 鋭い眼光は紅く輝きはじめた!
アンジェロは嬉しい反面、生命の危機を迎えている!
恐ろしくてヴィンセントパパを見れないアンジェロは、ミナに握られつつ、冷や汗でじっとりした自分の手を見る。
(どうしよう)
OKと言ったらヴィンセントに殺されそうだ。かといって、断ってもミナを傷付けたと恨まれそうだ。
どうしようどうしようとオロオロアワアワして、アンジェロは助けを求めるようにクリスティアーノに視線を注ぐ。
「ど、どうしよう」
アンジェロの求めに対し、クリスティアーノはケッと顔を歪める。
「知るかよ。リア充、死ね」
アンジェロは親友に見捨てられた。よく見たらみんなの顔に死ねと書いてある。アンジェロの味方はどこにもいない。これぞまさしく孤立無援だ。
そろそろ泣きたくなってきた。ミナの気持ちはとても嬉しいが、命は惜しい。保身第一をスローガンに掲げ、すっかりヘタレたアンジェロは背中を丸めて、ぽんっと変身した。
「わぁ、アンジェロ可愛い」
ミナが満面の笑顔で抱きあげたのは、ふわふわの金色の毛並みの猫だった。
(よし、しばらくコレでやり過ごそう)
ミナが撫でるので、にゃーごろごろとすり寄る。この状態なら白黒ハッキリさせなくて済むはずだ。さすがのヴィンセントパパも、ミナの飼い猫を殺したりはしない……と思いたい。
「うわ、逃げた」
「まさか猫になるとは」
「なんというヘタレ」
仲間たちには幻滅されてしまったようだが、命には代えられない。命大事に。
ミナが「にゃんジェロにゃんジェロ」言ってヘタレ猫を離そうとしないので、結局クリスティアーノ達は「アンジェロが殺されないか心配だから」という理由で、行動を共にすることになった。




