9-3 オリンピックも夢じゃない
見渡せばジュリアスの数はかなり減っていた。ジュリアス、残すところあと13人。
ジュリアス達は歯ぎしりが止まらない。瞬間移動やトリッキーな動きで銃撃は回避され、雪合戦や千本ノックというふざけた戦法で同胞がやられていく。最初に戦った4人はこの間に修復は完了し、ミナは大して傷も負っていない。
勿論、ミナを傷付けたいわけではなかったが、動きを止めるくらいの攻撃ならやむなしと考えていたのに、その動きすらも止まらない。
また一人、新しいバットに持ち替えたミナのノックにより、ジュリアスが心臓を撃ち抜かれて絶命。
残り12人。
おもむろにヴィンセントが上空へ飛び上がり、その背後には無数の雪玉が浮かんでいる。すると、その雪玉は形状が変化し、透明度の高い氷の矢へと姿を変える。
そして夥しい数の氷の矢が上空から雨の様に降り注ぎ、ジュリアスの頭や心臓を射抜いていく。かろうじて急所を避けることが出来たとしても、体のどこかに矢が刺さって動きを止めてしまう。
残り7人。
集団でいるとヴィンセントに狙い撃ちされると考え、氷の矢を抜く余裕もないまま、ミナ達を包囲する様に広範囲に散開すると、ミナが電撃を放った。
すると、刺さったままの氷の矢が避雷針の役割を果たし、ジュリアスは内臓を焼かれて倒れ伏す。
残り4人。
考えてみれば、ジュリアスはこれほど多彩な技を繰り出す吸血鬼と戦ったことはなかった。今まで戦ったことがあるのは、人間より強いというだけで、これほどの能力や技術、コンビネーションを持つ者はいなかった。
「お前達は一体……なんなんだ……」
ジュリアスの青い瞳に映るのは、最早恐怖だった。恐怖の体現者として映るミナが、氷の剣を構えて猛然と迫りながら笑った。
「ドラクレスティ一族! よっ!」
腰を低く落として迫ってきたミナが、ジュリアスの眼前で垂直に上昇したかと思うと、次の瞬間にはジュリアスの首は跳ねられていた。
宙に浮いていた首が落下を始めた瞬間、ミナは滞空した状態から体をねじって体勢を立て直した。そして滞空したまま首に対してボレーシュートを打ちかまし、首ボールを喰らった別のジュリアスの心臓に風穴をあけた。
残り2人。
「ミナえげつな!」
「ヴィンセントの教育の賜物だなぁ」
「2人とも楽しそうなのは、私の気のせいかしら」
残りの吸血鬼3人がなんやかんや言っているが、最早この3人はどうでもいい。
こんなやられ方があってたまるものか。こんな敵を想定していたわけではなかったが、それでも戦力が欲しくてSMARTを作り上げた。さっきまでは死ねと思っていたが、今は彼らの事が心の底から恋しい。
だが、ジュリアスにもまだ手札はある。まだ武器はある。天才少年レミが開発した兵器が。




