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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
9 フィンランド スポーツ大会編

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9-1 お前のドヤ顔は本当にムカつくんだ



 四肢のいずれかを切り落とされボロボロになったメリッサ達、全身に銀弾を浴びて痛みに喘ぐヴィンセント。フィンランドに戻ってきたミナの目に飛び込んできたのは、そんな凄惨な光景だった。

 すぐにヴィンセントの元に走り寄って抱き起し、ヴィンセントや他の仲間たちも何とか生きていることを確認して一息ついた後、ミナは敵として対峙するジュリアス達を睨んだ。睨んで、一瞬でドン引きした。

「なにあれ……」

 金髪碧眼の同じ顔をした同じ男がたくさんいる。アンジェロが傍に寄ってきた。

「課長のクローン」

 短い答えでも十分に理解はできるが、正直言ってこれはひどい。と思っていたら、ジュリアス達がミナに一斉に微笑みかけてきて、ミナはそれにギョッとした。

「ミナ」

「俺のミナ」

「さぁ一緒に行こう」

「そんな奴すぐに殺すから」

「一緒に暮らそう」

「幸せにする」

「大事にする」

「そばにおいで」

 口々に口説きはじめるジュリアス達。ミナはその光景に鳥肌が立って、思わずアンジェロに縋り付いた。

「なにあれキモイキモイ! マジ無理マジ無理! ほんと無理!」

 ミナのあんまりな反応に、痛いんだけども可笑しくなる吸血鬼4人。そしてピンと閃いちゃったアンジェロは、最後にして最大の仕返しを思いついた。


 縋りつくミナの肩を抱き寄せ、ジュリアス達に向けるのは、いつものやる気のなさそうな無表情でも、爽やか営業スマイルでもない。

 アンジェロ渾身のドヤ顔である。


 それを見て

「この野郎……!」

 と一斉に顔を引きつらせるジュリアス達。

「あいつスゲェな」

 と感心するクライド。

「あは、面白い」

 見直した様子のボニー。

「気に入らないけど、殺さないであげるわ」

 ようやく殺意が引いたらしいメリッサ。

「……まぁいいか」

 ジト目で呆れながらも、ちょっと何かを諦めたヴィンセント。


 アンジェロのドヤァに包まれた空間で、何故か少し元気を取り戻した吸血鬼は、痛みをこらえながらもなんとか起き上がった。そしてヴィンセントがミナに振り向いた。

「来るなと言った筈だが?」

 それにミナはムッとしながら答えた。

「仲間外れはヤです! イジメ、カッコ悪い!」

 イジメではないがツッコむ元気がなかったのでそこはスルーして、未だにミナの肩を抱いているアンジェロをジト目で見た。

「で、お前はいつまでそれを続けるつもりだ」

 ヴィンセントに氷の視線を向けられ、慌ててミナから手を離して、冷や汗を流しながらバンザイするアンジェロ。

「伯爵、違います」

「何が違うんだ、言ってみろ」

 何か言い訳をしたかったようだが、アンジェロがアワアワしているので、これもスルー。


「お前がいる時に闘うのは避けたいんだが……」

 なにしろアンジェロは他人の能力をコピーしてしまうので、手の内を知られたくないヴィンセントとしては、アンジェロの存在は本当に厄介なのである。黒犬はもう見せてしまっているので恐らくパクられているし、これから他の術もパクられる可能性はある。アンジェロは人間だが、様々な能力を駆使されたらと考えると、ヴィンセントでも危機感を感じる。

 その辺はアンジェロも一応わかっていたので、いつもの営業スマイルで答えた。

「ご心配なく、すぐに戻ります。戦いが終わったらミナを迎えに上がりますので、テレパシーでご連絡ください。では失礼します」

 と言って消えた。


 それを見送って首をかしげるミナ。

「そういえば、なんでアンジェロはテレポートとかテレパシーとかできるの?」

「テレポートはこの際いいとして、お前アンジェロの前でテレパシー使っただろう」

「あ、はい」

「はぁ……あのパクリ野郎」

 いつのまにやらテレパシーをパクられていた。自分の腕を拾って何とかくっつけたメリッサが腕組みをする。

「それよりも、ミナちゃんを迎えに来るってなによ」

「あれ、俺らは?」

「アイツ本当にちゃっかりしてるねー」

 やれやれと言った様子の吸血鬼たちは、完全放置していたジュリアスにようやく意識がいった。


 そしてミナが前に進み出る。両手いっぱいに電流を流して、心にハチマキを締めて。

「ヴィンセントさんのお兄さんの仇! いざ尋常に勝負!」

 

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