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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
7 フィンランド編
71/140

7-8 アンジェロやっぱり嫌い


 話は少し遡って、ミナの意識が戻った頃。ミナの意識が戻ったことで、ヴィンセントにも所在が探れるようになっていた。ヴィンセントはミナの所在地はわかったが、自分の行った事のある場所ではなかった。

「イタリアに戻ったのではなかったの?」

 メリッサの質問にヴィンセントも首をひねる。

「イタリアどころか……どこだここは? おい、地図を持ってこい」

 言われてボニーが立ち上がり、先住者が置いていった蔵書の中から世界地図を探し出して持ってきた。世界全図のページを開いて、やはり唸りながらヴィンセントが一部を指さした。

「ミナはここにいるようだが……」

 ヴィンセントの指差した場所に、一同は目を丸くする。あり得ない、そんなはずはない。この時間でイタリアに戻る事すら不可能なはずなのに。ヴィンセントにすら不可能なはずなのに。

「一体どういうことだ?」

 ヴィンセントがそう呟いた時、窓ガラスに何かが当たる様なビシッという音がしたかと思うと、次の瞬間にはヴィンセントがテーブルに倒れこんだ。


 3人は驚いたが、瞬時に壁際に退避した。ヴィンセントを見るとこめかみに穴が空いて、そこから漿液と血液が流れ出ていた。

「ヴィンセント! ヴィンセントったら!」

 メリッサが強く呼びかけると、ヴィンセントがゆらりと起き上ってこめかみを押さえて窓を見た。

「どうやら狙撃されたようだ」

 しかし、窓から見える風景は、その状況を否定している。窓の外に広がるのは、山の斜面に広がる一面の雪原だ。かなり遠くの方に僅かな木立が見えるのみで、この窓からヴィンセントに向けて、隠れて狙撃できるような場所などない。

 だが、狙撃されたのは間違いない。必ず次が来る。


 敵はきっとジュリアスだ。しかし、何故この場所が分かったのか。アンジェロの行動は常に監視していたから、アンジェロがここにいた間に連絡を取ったりはしていなかったはずだ。ならば、ここを出た後に連絡を取ったことになるが、それにしてもイタリアからここにやってくるにしても早すぎる。もっと早い段階から連絡を取っていたと考えるべきだ。

 ということは、アンジェロは何らかの方法で自分の居場所を知らせていたのだろう。それを、それとわからぬよう、誰にも気づかせずに。


 そう考えていると、窓が粉々に砕け散り、窓から入って来た金属の物体が煉瓦の壁に突き刺さる。その物体を見てさすがに吸血鬼たちも青ざめて、咄嗟にヴィンセントが黒犬を召還して盾にした。その瞬間に爆発が起き、その衝撃で家具や雑貨が粉々に砕け散り、燃え落ちながらヴィンセント達に降り注ぐ。

「やっべぇだろコレ」

「あたしもうヤダァァ! アンジェロ大嫌い!」

「全く、優秀な奴というのは、敵に回すと厄介だな」

 口々に文句を言い合って、再び身を隠し、窓があったはずの場所を見つめる。一撃目も二撃目も同じ窓からだった。ならば敵はこの窓の正面の位置にいるはずだ。そう考えて目を凝らしてみるが捕捉できない。


 何故見えない? 何故わからない? 白い軍服で雪に隠れているのだろうか? 考えながらも探すが全く敵の行方がつかめない。位置も人数も何もわからない。

「一体どうなっているのだ」


 ヴィンセントが狼狽しながら警戒を強めていたのと同じくして、ジュリアスは新たに指示を出す。

「レミ、ミナの居場所は?」

 まだ幼さの残る、しかし壁画の天使のように美しい少年、レミがチェックしていた複数のモニターから顔を上げた。

「最上階の東側の端の部屋だと思われます」

 それを聞いて今度は戦闘員達に顔を向けた。

「ジョヴァンニは後方支援。お前は俺の傍で防御に徹して。レオ、ここから攻撃を畳み掛ける。その隙にクリスはミナを奪還しろ」

 命令を受けた3人は敬礼を取って、それぞれの仕事に取り掛かった。


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