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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
6 ローマ編

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6-7 なんかオマケがついてきた



 ややこしくなるのが目に見えていたので、心底辟易しながらヴィンセントが立ち上がった。

「こンの、バカ娘が!」

 すぐさま詰め寄ってミナをアンジェロから引きはがそうとした刹那、ミナの腕がもう片側から引っ張られて、ミナは思わずそちらの方に振り向いた。ミナの腕を掴んだクリシュナが、ミナに視線を合わせて柔和に笑いかけた。

「ミナ、僕と一緒にいこう。僕の所においで。こんな男の所にいても、君は幸せにはなれないよ」

 そもそもミナはクリシュナに出会った瞬間一目惚れしてしまったので、この時も例に漏れず超絶タイプでイケメンのクリシュナに口説かれてトキメキはしたのだが、出会いがしらにヴィンセントの悪口を言われたので、少し嫌な印象を受ける。やや顔を赤らめながらも、ミナは掴まれた腕を離す様に嫌がる素振りを見せた。

「あの、離してもらえます? 知らない人についてっちゃいけないって、お父さんに言われてるので……」

 ミナのセリフを聞いてクリシュナは目を丸くして驚き、メリッサは吹き出して爆笑し、ヴィンセントはいい加減弟子のアホさ加減に呆れているが、呆れている場合ではない。ウチの娘に触るなと言わんばかりにクリシュナの手をえんがちょし、ミナを引き寄せるとメリッサも抱き寄せた。クリシュナが慌てて追い縋ろうとする直前、その場から姿を消した。瞬時にボニーとクライドを拾うと、荷物もほったらかして吸血鬼たちは城から消えた。


「クソッ!」

 逃がしてしまったことに地団太を踏みそうになるほど怒りに震えたクリシュナだったが、そのまま振り向いた。

「アンジェロ、追跡は……あれ」

 振り向いてアンジェロに次の指示を出そうとしていたクリシュナだったが、振り向くとアンジェロがいない。自分のすぐそばにいたはずだったので、思わずキョトンとしていると、言い難そうにしてクリスティアーノが言った。

「課長、アンジェロは……」

 話を聞いてクリシュナは心底呆れて溜息を吐いた。

「アイツはほんっとに女には手が早いな……」

 ミナの反応はおかしいし、しかも逃がしてしまった上にこの状況。これをチャンスと見るべきかピンチと見るべきか。いや、どう考えてもピンチだ。アンジェロのアンジェロのあの「いい性格」では。

 仕方がないのでクリシュナはクリスティアーノ達に次の指示を出して、城を後にした。



 その頃、トワイライトのお友達の所に到着したヴィンセントが、安堵したように一息ついて振り返ると、ムッと表情を変えた。それにミナも気付いて、そして誰かが袖口を掴んでいるのに気が付いた。

「あれ、アンジェロ」

 ミナのすぐそばにいたのはアンジェロも同じだ。クリシュナはえんがちょされたが、アンジェロはすぐさまミナに手を伸ばして、なんとか袖口を掴むことには成功したのだ。それは別に女に手が早いとかではなく、アンジェロとしては仕事熱心だと評価して欲しいところである。

 

 アンジェロもすぐに自身のおかれている状況を察して考える。自分が今いる場所も金持ちの邸宅と言った設えだ。放置されているようではなく明らかに誰かが住んでいる。となれば、ヴィンセント達の味方であることは想像できる。そこに勢いとはいえ自分一人でついてきてしまった。本来ならミナを奪う為に奮闘するべきなのだろうが、多勢に無勢。どう考えても無駄死にだ。


 そこまで考えて、アンジェロは自分を見つめるミナに笑いかけると、がしっと肩を組んだ。

「いやー、ホンットお前の言う通り。ケンカはよくねーよな、うんうん。いや、俺はいつだって仲良くしたいと思ってんだぜ? お前いい奴だしさぁ、ほら、俺達友達だろ?」

 アンジェロの言葉に嬉しそうに笑うミナと、「この野郎いい性格してるな」と呆れる吸血鬼たち。


 とりあえずこめかみを揉んで精神を落ち着かせたヴィンセントがアンジェロに言った。

「殺してもいいが、大人しく出て行くなら見逃してやってもいい」

 本当に殺してもいいのだが、友達だと言われて嬉しそうにするミナを見ていると、殺すのはさすがに気が引けたのでこう言った。しかしそれを聞いて、アンジェロはそれとわかりやすい営業スマイルを浮かべた。

「よろしいのですか? 私を手元に置いておけば、SMART側の情報が手に入るかもしれませんよ?」

 全くいい性格をしているものである。ただで引き下がる気はないようだ。勿論ヴィンセントも引き下がる気はない。

「ふざけるな。それと同時に、こちら側の情報が筒抜けになるだろう。お前がここに留まるなど論外だ」

 それを聞いたアンジェロは「なるほど」と頷くと、上着を脱いで裏地を破って、中から小さなカードを取り出して落とし、携帯電話も取り出して落とし、靴の踵で思い切り踏みしめた。

 粉々になった電子機器から目を離したアンジェロは、満足そうにしてヴィンセントに向いた。

「これでそちら側の懸念は解消されましたが、いかがでしょうか? 私は課長と伯爵、お二人の懸け橋になりたい、そう願っております」

 続けてアンジェロはミナに笑いながら言った。

「吸血鬼のミナと人間の私が、生物の垣根を越えて友達になれたのです。私とミナにお任せいただければ、人間対吸血鬼の戦いも解決に導くことが出来るでしょう」

 アンジェロのプレゼンを聞いて満面笑顔で頷いたミナが、今度はヴィンセントに猫なで声ですがりつく。

「ねぇヴィンセントさん、アンジェロもここまでしたんだし、大丈夫ですよ。ちょっとくらいいいでしょ? ね? ね?」

 今世紀最大のアホと思いながらヴィンセントが盛大に溜息を吐くと、何故かその溜息をOKだと解釈したらしいアンジェロが礼を取って、ヴィンセントに惚れ惚れするほどの営業スマイルを向けた。

「私はSMARTで主任を務めております、アンジェロ・ジェズアルドと申します。今日からお世話になります、伯爵」

 もう本当にいい性格をしていると心底呆れたが、とりあえずその内どこかに捨ててやろうと考えて、やっぱりややこしい事になったとヴィンセントは深い溜息を吐くのだった。

アレ……? どうしよう。終わらないw

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