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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
5 イタリア編

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5-12 お姉ちゃんがお花畑だと僕が苦労する

 精神テレビの画面から様子を見ながら、北都は考え込んでいた。今のこの状況は、かなりおかしい。

 何がおかしいかと言えば、相手がクリシュナとはいえ、ミナが突然連れて行かれたというのに、ヴィンセント側から一切のコンタクトがない。そして北都もヴィンセントとの交信を試みたが、ヴィンセントからの反応は帰ってこない。これは恐らく結界によるものだ。


 では何故結界など必要なのか。ミナはクリシュナの話を聞いて納得し、ここに留まると意志を示した。ミナが了解した以上は急に帰るなどとは言い出さないはずだ。

 それなのに結界を施したという事は、ミナは閉じ込められて出られないし、ヴィンセント達もミナを迎えにここに来るのは不可能という事になる。

 だとすると、結界の目的はミナを閉じ込めるだけでなく、ヴィンセント達を拒むための物だとも考えられる。

 一体何故そこまでして、ミナを独占する必要があるのか、北都にはイマイチよくわからない。


 北都はミナの中からずっと外の世界を見てきた。ミナとは違う視点から物事を見ることもできるし、逆にミナから教わることもあるし、姉弟の協力関係は理想的であると言っていい。

 

 だけど北都は悩んだ。自分の考えを言っていいのかわからなかった。勿論、証拠がないとかそう言う事も迷う理由だが、一番の理由は、ミナが聞き入れてくれる気がしないからだ。


(お義兄さんが本当は敵かもしれないなんて、お姉ちゃんが納得するわけないよなぁ……) 


 そう思うと、精神年齢14歳の北都だって溜息位出る。今は確証も何もないし、自分の考えすぎという事もある。これからここで暮らすのなら、クリシュナが何を考えてミナを連れ出したのか、目的がどこにあるのかも分かるかもしれない。


 そう考えて、北都は改めて精神テレビを見る。いつだってクリシュナは、ミナに優しい微笑みを向けてくれて、ミナを幸せな気分に浸らせてくれている。その事に間違いはないし、ミナを笑顔にする存在には感謝している。


(だけど、それが演技だったら、僕は絶対に許さないから)


 自分の思い過ごしであれば、それに越したことはない。多少束縛が強いというだけで、本当にヴィンセントとケンカしただけかもしれない。あんな失礼な部下がいても、怒るでもなくやり過ごしているのだから、人格に問題があるようにも思えない。


 ただ、確認すべきことはある。北都はミナに頼み、それとなく交代した。本来はクリシュナに聞きたいが、ここは敢えてアンジェロを標的にした。


「ねぇアンジェロ、聞きたいことがあるの」

 喋り方を似せてしまえば、声も姿もミナのもの。クリシュナがいるので気をつけなければならないが、北都の存在を知らないアンジェロには気付かれることはないだろう。

「なんだよ」

 相変わらず無表情で、ぶっきらぼうさが加算された返事が返ってきた。

「アンジェロっていつからここで働いてるの?」

「んなこと聞いてどーすんだ」

「別に? クリシュナにすごく懐いてるみたいだったから、長い付き合いなんだろうなと思って。ちょっと妬ける」

 と言いながら笑ってみせる。実際ミナはちょっと妬いている。アンジェロは呆れたように「アホか」と暴言で返してきたが、一応話を続けた。

「まぁ確かに長ぇな」

 アンジェロがそう言いながら何かを思い出そうと空中を仰いだ。


 そのとき、「ミナ」とクリシュナが話に入ってきた。

「なに?」

 尋ね返しながら、北都は心の中でモヤモヤとした。

(話を逸らされた……?)

 クリシュナはいつも通り柔和な微笑みを湛えている。

「何が気になるのかな?」

 クリシュナは微笑んでいるが、よもや探りを入れているのに気付かれたのか。何となく北都は冷や汗が背中を流れるような心持がした。

「ん? クリシュナや私が吸血鬼でも普通に接してるから、すごく馴染んでるなぁって思って。ある程度慣れないと、カトリックの人は拒絶反応起してもおかしくないんじゃないかなと思ったの」

 何とか平静を保ちながら、普段ミナがするように無邪気に返答を返した。話を聞いたクリシュナは、やっぱり笑った。

「あぁ、そういうことね。信者と言っても個人差はあるし、仕事上吸血鬼に慣れてれば受け入れは早いんじゃない? そうだろ?」

 確認を取るようにクリシュナがアンジェロに尋ねると、アンジェロは相変わらずの無表情で「そーですね」と至って適当に返事をした。


 確かにそう言われてみれば、そう言う物なのかもしれない。だけど、やっぱり先程話を逸らされたようで気になる。この話の流れから察するに、クリシュナは相当手強い。北都の知りたい情報を簡単に漏らしてくれそうにない。

 だとすると、狙うはアンジェロを初めとしたクリシュナの部下だ。結界が解かれるのがいつか分からないが、ヴィンセントと交信が可能になった時に、可能な限り情報を渡しておきたい。

 その為には、今は大人しくして仲良くしておいた方が良さそうだ。


(北都? どうしたの? 急に変われなんて)

(なんでもないよ。お姉ちゃん、ここの人たちとも仲良くなれるといいね)

(うん。アンジェロとは仲良くなれる気がしないけど、他の人とは仲良くする。私はいつかクリシュナのお嫁さんになるんだし!)

 心の中で笑いながら言うミナに、北都は心の中で溜息を吐いた。姉が脳内お花畑満開状態である以上は、自分がしっかりしなければ。


 北都は、「上がちゃらんぽらんだと、下がしっかりしていくものだ」と、どこかで聞いた話を思い出して、もう一回溜息を吐いた。

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