5-6 これが噂のマリッジブルー
城に戻ってから、どうしようか考えた。
まず気持ちの上では、クリシュナの傍にいたい。だから受け入れたいという気持ちが最初に来る。
しかしみんなと離れたくないと言う気持ちも、勿論ある。何も会えなくなるなどと言う事はないはずだが、ミナは今の生活を気に入っているし、何しろこの人たちをこの人たちだけで放っておいて大丈夫なのかと心配でもある。
次に状況だ。
今の城の生活はほとんど自給自足が成立しているが、それはミナが超能力によって家事を行っているからだ。城が広いから掃除をボニー達だけでこなすのは難しいだろうし、自力でお風呂のお湯を沸かすのは中々大変だろう。そしてあのメンバーの中に、率先して家事を引き受けそうな者が思い浮かばない。
それにミナもまだ修行中の身で、ヴィンセントに教えて欲しいことは沢山ある。超能力の使い方も、吸血鬼のルールも、ミナが知らないことはまだまだいっぱいあるはずだ。急ぐ必要はないと思うが、やっぱり基礎は先人に倣った方がいいと思う。
次に転居先についてだ。
クリシュナの瞬間移動で連れて行ってもらい、場所についての話題はイタリアとしか聞かなかった。軍のお偉いさんならローマだろうか。場所については実はよくわからない。
あそこで暮らすと言う事は、あそこに住む人たちとも共同生活になると言う事だ。あの人達はクリシュナが人間ではないと知っているのかもしれない。変身しているらしいクリシュナを見ても、アンジェロが平然としていた事から想像できる。ならばミナの事も受け入れてくれるかもしれない。
ただ、女子禁制と言っていたから、暮らしているのはあの失礼な男達なのだろうと思う。クリシュナの妻としてあそこに行くのなら、女将さん的立ち位置を求められると言う事だ。
どうやらミナはどこに行っても、お世話係という役割からは逃れられないようだ。
(どーしよっかなー……)
ぼうっと考えながらソファに寝っころがると、なんだかウトウトしてきた。窓の外は紺色から薄らいで紫色の空、東はピンク色に染まっている。つまりもう夜明けだ。
眠い頭で考えても結論は出ない。ミナは寝る支度をしてさっさと眠ることにした。
その頃クリシュナもミナと一緒に城に帰ってきて、与えられた客室の中で考え事をしていた。
(彼女は僕についてきてくれるだろうか)
そう考えながら溜息を零す。あの部下たちを見て引いただろうか。そんな気はする。まだ時期尚早だったような気もする。しかし、あまりボヤボヤしてもいられない。
かといって、ミナが他の男に取られるなんて思ってはいない。彼女に愛されている自信はあるし、関係も安定している。だけどクリシュナには焦るだけの理由がある。その理由をミナに伝えることはできないのだが、とりあえず、このままでいいとは思っていない。
自分を落ち着かせるように、もう一つ溜息を吐く。ミナには自分がイタリアにいることは伝えた。会おうと思えば毎日だって会える。答えは自ずと出てくるだろう。決めるのはミナ、それがいい。本当は無理やりにでも連れ去ってしまいたいけれど。
そこまで考えて空を見ると、空はピンクからオレンジに変わりつつある。もうそろそろ日が昇るころだ。今日は城のみんなと観光に出かける約束をしていた。折角日中何もない日々なのだ。楽しまなければ損だろう。
そう考えてクリシュナも眠りについた。




