4-13 イスラム誘拐事件
攻撃の応酬。二人とも早すぎて目で追うのがやっとで、割って入る隙もない。男達はどうやら人間のようだが、その動きは人間のそれを明らかに超越している。男達は何故か再生能力を身に着けているが、ミナが戦うムジャヒディーンの再生能力はすさまじいもので、ミナのつけた傷がたちどころに修復されていた。ミナだって弱いわけではない。ミナなりに能力を使って、北都と協力しながら戦っているので、背後にだって隙はない。それでもミナが押され始めている。それを見て唸るようにヴィンセントが言った。
「あの男、強いな」
「ええ。ただの修行僧ではなさそうね」
「先天的な才能か、それとも修行と信仰による賜物か」
「どちらにせよ、私達には理解の範疇を超えた力ね」
攻撃は熾烈さを増してゆく。攻撃の手をかいくぐり、ミナが髪の毛を延ばしてムジャヒディーンの胸に突き刺し、琴を弾く様に掻くと、その振動が髪を伝わりムジャヒディーンの胸部が破裂した。ミナはふっと息を吐くが、他の男達とは比べ物にならない速度で再生したムジャヒディーンに足を払われたミナはバランスを崩し、その隙を突いて吹き飛ばされた。
「ミナ!」
慌てたクリシュナがミナの下に駆け寄り、男の前に立ちはだかる。ムジャヒディーンは笑いながら、帯刀していた剣を抜いた。その剣は抜いた瞬間輝きだして、清廉な、ヴァンパイアたちにとっては虫唾が走るような気を放つ。
「ミナは、殺させない」
「そうですか。じゃぁあなたが死んでくれるんですね」
ニヤッと笑うと、ムジャヒディーンは剣を構える。
「聖剣デュランダルの露となるがいい」
殺気を感じて迎撃の姿勢を取ると、ムジャヒディーンは床を蹴って一気に歩を詰めた。
「アッラーアクバル、優男さん」
ドスッという鈍い音と衝撃が走って、床に倒れこんだ。倒れこんだのはムジャヒディーンだった。クリシュナに気を取られている隙にミナが後ろに回り込んで腕を突き刺し、心臓を取り出していた。
ミナの手に握られた心臓はまだ少しヒクヒクと痙攣するように動いていた。
「さようなら変態さん」
ミナが心臓を潰すと同時に、クリシュナが頭部を踏みつぶした。




