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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
4 インド編

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4-12 イスラム誘拐事件

 轟音が響いて門扉が破られる。



「うわぁ、本当に来ちまった」

「ぼさっとするな。来るぞ」

 窓を見ると、破壊された門扉の煙の陰からぞろぞろと歩いてくる。

「ねぇクリシュナ、私にはあれが数人には見えないのだけれど」

「そうだね。100人くらいに見えるね」

「ヤバ! 化け物6対化け物100だったらやべーじゃん」

「殆どが武器持ってるから大丈夫じゃない?」

「うーん……どの道やるしかないね」

「了解」

 再び轟音が鳴り響いて玄関ドアを破壊される。修理も楽じゃないのに非常に迷惑だ。コツコツと足音を立てて、すらっとした背の高い男性が進み出る。

「こんばんは。先日は我らが同志がお世話になったそうで」

 優しく微笑んで挨拶をする男。この男の雰囲気は依然感じたことがある。エンジニアと同じだ。

「お前もテロリストの一派か」

 ヴィンセントの問いに、大袈裟に男はかぶりを振る。

「まさか! コーランを曲解するような方たちと混同しないでください。我々はただの修行僧ですよ。化け物がいると聞きまして、化け物退治にやってきた次第です」

「こっちこそお世話になったね」

 クリシュナが進み出ると男は一瞬驚いて笑い出した。

「おやおや、愛しい恋人を傷物にされて怒り心頭と言う訳ですか?」

「当然だよ。このお礼はちゃんとさせてもらうからね」

「クスクス。できるのなら、どうぞ? 私の四大天使も棄てたものではありませんよ?」

 二人の間の空気が張り詰める。しんと静まり返ったサルーンに殺気が漂い始める。


 

 後方から一斉に射撃を浴びて、4人の男が向かって特攻を仕掛けてくる。硝煙で、視界が悪い。クリシュナはすぐに飛び上がって、天井の照明を破壊する。着地しようと下を見ると、着地点には厳つい大男が待ち構えていた。

「くっ!」

 苦し紛れに蹴りつけると、あっさり避けられて足を掴まれ、そのままの勢いで、壁に叩きつけられた。

 即座に立ち上がろうとすると、眼前に男の脚が迫っていて、咄嗟に避けて男の脇腹を殴りつけと、男は脇腹を抉られて2m程飛ばされた。

 さすがに、起き上がっては来れないだろう。そう思っていたら男がゆっくり起き上がってくる。抉った腹部は花弁が集まるようにざらざらと肉が寄り、修復していった。

「君も化け物なんだね」

「テメェもな」

 床を蹴って同時に殴り掛かる。男は殴っても殴っても、その都度肉体が修復されていく。これは、確かに面倒な敵だ。しかし、再生力はあっても、ヴァンパイアほどの耐久力はない。殺していけば、いつかは死ぬ。

 攻撃の手を加速させて、何度も何度も腕を振り降ろすと、段々と男の再生力が鈍くなってくる。

(よし! このまま畳み掛ける!)

 そう思った瞬間、破裂音が聞こえて振り上げた右手を吹き飛ばされた。

「うっ!」

 クリシュナが砲撃による痛みに狼狽えている間に、男の修復は完了してしまった。

「片腕でオレに勝てるかな?」

 左腕で殴りかかるも、攻撃に回したせいで防御できずに殴られて吹き飛ばされる。先程血を飲んだおかげで回復は普段より早い。でもまだ使える状態じゃない。徐々に戦局が苦しくなっていく。

 しかし突然、男の動きが止まった。


 ハッと気を取り戻すと、ヴィンセントが男の腕を掴んでいた。

「この程度の雑魚にいつまで手間取っているんだ。兄様、昔より弱くなっていないか?」

 そう言うとヴィンセントは大男に歩み寄って、男の頭を掴む。

「ぐ、あ、あぁ!」

 ミシっと音を立ててヴィンセントの指が男の頭蓋骨にめり込んでいく。その様子を眺めながらクリシュナは、頭から血と脳脊髄液を垂らし始めた男と、無表情でそれを見下ろすヴィンセントを見やり、「僕はお前ほどの化け物にはなれないよ」と、首を横に振った。

 男の断末魔と共に、頭はグシャっと音を立てて潰れ、男はその場に崩れ落ちた。更にヴィンセントは男の心臓に手を突き刺し、心臓を取り出すと、それも握りつぶした。

「いくら食事量が減ったとしても、兄様ならこいつら程度、雑作もないはずだがな?」

 ヴィンセントは不思議そうにクリシュナを見たが、近くで爆発が起きると敵に視線を逸らした。

「それより、あの後方の迫撃が鬱陶しいな」

 ヴィンセントはそう言うと指をカリッと噛んだ。その瞬間、バスカヴィルとホロコーストが出現する。2匹はヴィンセントの周りを唸りながらヒュンヒュンと周回して、1匹は敵兵に突っ込んでいき、ホロコーストが敵兵を焼き尽くす。ホロコーストとバスカヴィルを逃れた者も、その煙を吸ってバタバタと倒れて逝った。

「さっすがヴィンセント! やるぅ!」

 天使の一人を倒したボニーとクライドが駆け寄ってきて、メリッサも血を払いながら歩いてくる。

「あとはムジャヒディーンだけね」

 メリッサの声にクリシュナの方に目をやると、ムジャヒディーンと呼ばれていた男が笑いながら進み出てきた。

「いやはやお強い。残るは私ですか。では、私のお相手は誰がしてくれるんでしょうねぇ? あなた方如き化け物で、私に勝てるでしょうか」


 嘲笑するように言った声に、階上から声が響いた。


「私が相手する」


 ヴィンセント達は心配そうにしていたが、ミナは階段を下りてムジャヒディーンに対峙した。


「寝てる女の子にイタズラするような変態に、私が負けるわけがないでしょ」


 ミナの怒りに呼応して、北都の怒りも増長する。髪の毛がざわめいてふわりと浮きあがった。

 その様子に誰も水を差そうとはせず、ただ静かに殺意が充満していき、殺気が最高潮まで充実した瞬間、堰を切った。


登場人物紹介


【ムジャヒディーン】

「指導者」という称号で本名は不明。イスラムの修行僧。

信仰が篤すぎる狂信者というだけで、本当のところ悪者ではない。

実はテロリストが化物の次くらいに嫌い。


【4大天使】

イスラムにおける天使の名を冠したいわゆる四天王。

名前を書きだしたメモを筆者が紛失したため名無しになってしまった気の毒な四天王。

この4人も修行僧で狂信者。ムジャヒディーン同様イスラムに仇なすものが嫌い。

正直アッラーを信奉しない人間は絶滅すればいいと思っている。

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