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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
4 インド編
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4-6 ジロジロ見ないで下さい


 テロリストを一網打尽した「沈黙シリーズ大作戦」から一月経つというのに、報道熱は冷めやらず、ミナ達ののことを必死に探していた。犯人たちはほとんどが逮捕されて収監された。そのせいで、情報がもっとたくさん流れてしまったことも事実。

「というわけで、ヘアカラー剤を買ってきますね。カラーは黒で3人分でいいですよね」

 メリッサもボニーもミナも、この国では外国人だし髪色が明るくて目立つのだ。せめて髪色くらいは変えておきたいところ。メリッサに確認を取っていると、近くで聞いていたシャンティが半目で話に入ってきた。

「ミナ様、報道されている人相と激似なのがそんなに気に食わないわけ?」

「と、当然でしょ。誤解されたら困るじゃん」

「誤解ねぇ……」

 シャンティの疑いの眼差しが晴れることはなかったので、そそくさとその場を後にした。すると、屋敷を出ようとしたところでクライドに呼び止められた。どうやらクライドはヴィンセントに頼まれてお使いがあるらしい。ボニーも一緒に行こうと言う事になって、3人でいつものごとくクライドの運転するハマーに乗って出かけた。

 ショッピングモールの駐車場に車を停める。バックで駐車しようとしていたので、ミナが下りて誘導する。

「オーライオーライ」

 声をかけながら手で招いていると、視界の隅に見覚えのある顔が。

「っあー! 女優のディーピカ!」

「ウソッ! マジで!?」

 興奮したクライドが窓から顔を出した瞬間、アクセルを踏み込んだらしく急発進。ミナはハマーと後ろのアウディに挟まれてしまった。挟まれて尚ハマーはゴォォォとエンジンを吹かしてミナの体を押し潰す。

「痛い痛い! ちょっと! アクセル離して下さい!」

「あ、ごめ」

 気付くと女優のディーピカはいなくなり、何とか挟まれていた状態から脱出できたものの肋骨は折れているし、ハマーは勿論後ろのアウディもボコボコになっている。

「んもークライドさん!」

「えーうそ、オレのせい?」

「そーでしょ!」

 いくらなんでも当て逃げするという選択肢はない(クライドはその気満々だったようだが)。しばらく3人でアウディの持ち主を待っていたがなかなかやってこない。

 あと1時間もすれば店が閉店してしまうので、ボニーとクライドに買い物に行ってもらい、ミナはその場で待つことにした。それから閉店の音楽と共にボニーとクライドが戻ってきたが、その間も持ち主はやってこない。

「従業員かな?」

「なら客用の駐車場には停めねぇだろ」

 もう少し待ってみたがまだやってこない。ミナたちも暇なわけではないので、手帳に名前と連絡先、住所を記し、そのページを切り取ってワイパーの間に挟んで置いた。

「ごめんなさい! 弁償しますから!」

 メモに向かってパンと手を合わせ屋敷に戻った。


 屋敷に戻って予定通り髪染めをしていると、異臭に釣られてやってきたらしいヴィンセントが顔を歪めている。状況は彼もわかっているので特に文句は言われなかったのだが、ヴィンセントはボニーを眺めるくらいどを発見すると、何故か不機嫌なご様子である。頭にラップを巻きながらどうしたのかと尋ねると、ヴィンセントは溜息を吐いてクライドを見た。

「クライド、報告を聞いていないが?」

 そう言えばクライドはヴィンセントのお使いがあるとの事でお出かけしたのだった。しかし、事故のせいですっかり忘れて直帰していたのだった。一瞬クライドは顔を青ざめさせたが、何とかいつも通りのヘラヘラスマイルを取り戻す。

「あ、イッケネ。忘れてた。ワリーワリー、今から行ってくっからさ」

 怒られるであろうことを予測したのか、クライドは脱兎の勢いで屋敷から飛び出していった。それを見送って、ヴィンセントを見上げた。

「クライドさんに頼んでるお使いってなんですか?」

 少し怒りが収まったらしく、溜息を吐いたヴィンセントがソファに腰かけた。

「裏の方に情報収集するように言ったのだ。裏の世界の事なら、クライドにはうってつけだからな」

 確かにクライドなら一瞬で溶け込めそうである。クライドのスキンヘッドにグラサン、両腕にまんべんなく入った刺青といかついボディは完全裏仕様だ。しかし、何故裏の情報を欲しがっているのかが分からない。

「今度は裏社会で何かするんですか?」

「なにかするとはなんだ」

「い、いえ……」

 失言である。いつもヴィンセントがよからぬ事をやっているような事を言ってしまった。よからぬことを考えているのは間違いないが、まだ何もやっていない。大事な事だから二度言うが、まだ何もやっていない。

「すいませんでした。でも、それならどうして裏の情報を集めるんですか?」

「気付かないか?」

「へ?」

 予想外の質問返しに、ついアホな声が出た。なんだろうと見まわしてみても、ミナには何もわからない。そんなミナと、一緒に髪染めをしていたメリッサとボニーを近くに寄せて、ヴィンセントは少し声を抑えた。

「最近、どうやら屋敷を見張られている。もしかしたら使用人どもが何かを企んでいるのかもしれないが、スレシュの残党の可能性もある。相手が使用人たちならこちらでも監視する事は出来るが、スレシュの残党であればその筋の情報が必要だ。それでクライドに行かせた」

 話には納得できたが、見張られていたのかと驚いて女三人で顔を見合わせる。先日シャンティ達に真実を打ち明けたばかりだ。話を聞いてどのような動きをするのか様子見をしていたが、使用人たちに目立った動きや、態度が変わったと言う事はないように思う。ミナはシャンティと特に仲がいいので、贔屓目になっているのかもしれないが、ボニーもメリッサも使用人に不審な動きは見当たらないと言う。だとすれば、スレシュファミリーの残党などの外野の可能性が高い。その内屋敷にやってきてスレシュを奪還する気なのかもしれないし、もしかしたらスレシュファミリーが崩壊したと知った別の組織が何かを吹っ掛けてくるのかもしれない。そうした情報を探るために、クライドは今頃酒場ででも情報を集めているのだろう。

「お前達も周囲には気をつけておけ。なるべく単独行動は控えろよ」

 そう注意されて、ミナ達は神妙に頷いた。


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