3-3 父親がわりも悪くない
「ヴィンセント、さすがに今回はやりすぎたわね」
メリッサは腕組みをしながら苦笑気味に睨む。
「あぁ、すまない。もう、こういう事はしないとミナにも約束した」
ヴィンセントは溜息を吐きながら床に視線を落とした。
「ばかばかしい嫉妬だ」
「そうね。私にもあなたの気持ちはわかるわ。だからってミナちゃんを傷つけていい理由にはならないわ」
「あぁ……全くだ。本当に私はどうかしていた」
「あの時、最初にミナを撃った男を殺した時、ミナは私に対して失望した。あの時のミナの落胆に満ちた目が頭に焼き付いて離れない。ミナの心が私から離れたと思うと恐ろしかった。ミナの強さが憎らしかった。どうしても、ミナを私に屈服させたかった」
その言葉を聞いて、メリッサは少し思案すると微笑んだ。
「いつのまにか、形勢は逆転していたみたいね」
その言葉にヴィンセントは不思議そうにしていたが、それを見てまた微笑んだ。
「少し前まではヴィンセントなしで生きられないと思っていたのはミナちゃんに間違いなかったけど、今は逆転してしまったみたいね。彼女なしで生きられないのは、あなたよ、ヴィンセント。だから、これからはミナちゃんをうんと大事にするのよ。家族をおいて、まだ若い娘が外国に飛び出してきたんだもの、あなたがお父様の代わりになってあげるのよ。これからは、私達は家族のように過ごすのだから」
そう言うと、メリッサは3階に上がっていった。
”強くありたいと願うのは大事な人が傍にいてくれるからです。大事な人を大事に思いたいからです。”
脳裏にミナの言葉が蘇る。メリッサの言った家族と言う単語。自分には久しく使われていなかった言葉だ。父親代わりになれと言うのも相当面映いが。
「家族、か」
そう思うと何となく、これまで抱えてきた孤独が薄れゆく気がした。




