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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
12 シンプソン砂漠 決戦編
122/140

12-4 人の能力を悪用しないで


 ついに炎の渦が弱くなり、アイザックが立ち上がる。それを見てアンジェロは透明化をやめてミナに尋ねた。


「重力制御が出来るって事は、斥力も発生させられるのか?」

「せきりょくってなに?」

「……」

「呆れないで」

「重力の反対だよ」

「多分できる! 裏返しだね!」

「裏返し……?」


 ミナは感覚で能力を調整し、感覚で物を言う。ちょっと何を言っているのかわからないアンジェロだったが、アイザックが周囲に浮かべた石をこちらに向けて発射した。それに気付いたミナが慌てて前方に斥力を発生させた。

 それは目に見える物ではなかったが、弾丸のような速度でミナ達に向かって来ていた石つぶては、斥力の力場に入ると急速に減速し、今度は高速でアイザックの方に撃ち返された。


「弾いた!」

「これがあれば物理防御も問題ないな」

「うん! アンジェロすごい!」


 アンジェロ、斥力による物理攻撃の反射をゲット。

 反射された石つぶてはアイザックに向かって命中はするが、やや勢いが落ちたのか、彼を止めるには至らなかった。

 それを見てまたアンジェロは考える。


「砂の中からクロムだけを抽出できるか?」

「うん、できる」

「じゃぁ、できるだけ多くクロムを抽出して、この弾と合成して銃弾を作れ」


 そう言うとアンジェロは手持ちの銀弾をミナに渡した。ミナにはやっぱりよくわからないが、言われたとおりに砂の中からクロムだけを抽出して、銀弾と混ぜ合わせた化合物にし、新たな銀弾を作る。

 その間にアンジェロはアイザックに攻撃を仕掛けつつ、しっかりその様子を観察している。


 クロムと銀の化合物で作った銃弾をアンジェロに渡すと、アンジェロはすぐにその銃弾を装填して、アイザックを撃った。すると、それまではただ銃創が出来るだけだったのに、アイザックはもだえ苦しみ、細胞が異常増殖を起こしてぼこぼこと腫れ上がりはじめた。


「何が起きてるの!?」

「六価クロムは猛毒だ。それにメチャクチャ発がん性が高い。吸血鬼は銀と毒に弱いし、がんは細胞の異常増殖の事だ。銀で傷は治らないし、毒に冒され、異常増殖で再生力を無駄に消費する事になるってわけだ」

「なるほど」

「ホントにわかってんのかお前」


 実はよくわからないが、ミナの造った銃弾がすごいことはわかった。アンジェロがさらに銃撃している間に、銀とクロムを抽出して、もっとたくさん銃弾を作る。それをレオナルドやジョヴァンニにも配給して、ついでにクリスティアーノの持っている剣も、銀とクロムの化合物に変化させた。

 それを見たアンジェロが勢いよくミナの所に来た。


「お前今何やった! ちょ、お前らアイザック攻撃しとけ!」


 仲間に無理やり攻撃を替わってもらい、アンジェロは何故か必死にミナにくらいつく。


「え、何って……元素の成分を変化させたんだけど……」


 それを聞いたアンジェロは、近くに転がっていたアルミニウムのボールを手に取って、それをミナに渡す。


「ちょっとコレを金に変えてみなさい」

「え? うん」


 言われたとおりアルミニウムを金に変える。それを手渡されたアンジェロは感動に胸が打ち震えたが、それをぐっとこらえ、今度は鉄の球を差し出す。


「コレをプラチナに変えてみなさい」


 ミナは素直に鉄をプラチナに変える。金とプラチナのボールを握ったアンジェロは、押し寄せる感動を隠しもせず、それを高々と天にかざした。


「よっしゃぁぁ! これで俺は大金持ちだぁぁ!」

「ちょっと! 人の能力悪用しないでよ!」


 むしろミナが今までこの方法を思いつかなかったことの方が不思議だが、ヴィンセント達はしっかりこの錬金術を悪用して生きてきたのだった。あらゆる物質を貴金属に変えられるなんて、大変素晴らしい能力である。


 話を聞いていたレオナルド達も、攻撃したまま振り向きはしないものの、大層羨ましがっている。


「アンジェロいいなー。俺が金に困ったら金作ってよ」

「いいぜ。もういつでも、いっくらでもたかりに来い」 

「やっほーう!」


 ミナの能力を悪用する金の亡者たち。さすがに今度はミナが呆れた。



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