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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
12 シンプソン砂漠 決戦編
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12-3 ミナがアホで豚に真珠


 ミナは絶好調で千本ノックをかましていたが、ふいにブチブチと音が聞こえることに気が付いた。先にアンジェロが気付いて警戒態勢を取る。

 ミナに撃ち殺されながらも、アイザックは龍を操作しようとしていたのだ。龍は少しずつ身じろぎして、絡みつく雑草を引き千切っていく。ブチブチィッと音を立てて草を引き千切った龍は、一気に飛翔してこちらへやって来たが、ミナの頭上を飛び越えた。ミナはともかく、アンジェロは透明化していたので見えなかったのだろう。

 龍がジョヴァンニ達の方に迫るのを見て、ジョヴァンニが両手を向けた。


「防衛!」


 その瞬間炎の壁が立ちふさがって、龍はそれにぶち当たって動きを止める。何度炎の壁に体当たりをしても、その壁を破ることはできない様子だった。


 アンジェロはほっと胸をなでおろす。アンジェロ、クリスティアーノ、ミナは再生力持ちで、ほとんど不死身と言っていいが、レオナルドとジョヴァンニはそうではない。だから、ジョヴァンニのロマンサーによる絶対防御は、彼らを守る上で大変重要だ。


 だが、ジョヴァンニは両手を掲げながら顔を歪める。龍の力が強い。アイザックの力が強すぎる。このまま何度もやられれば、防御が持たないかもしれない。

 歯を食いしばりながらジョヴァンニが耐えているのに気付いて、アンジェロがミナに言った。


「アイザックは俺がなんとかする。お前はあの龍をなんとかしろ」

「なんとか!? なんとかって……」


 草の拘束は役に立たない。千本ノックでもあの巨体には尾にたかるハエだろう。炎や雷も砂の龍には効果が薄いようだ。本当は水があるのが有難いが、ここは砂漠で水も資源も少ない。

 一体どうしたらいいのかと思い悩んでいると、アイザックに攻撃しながらアンジェロが振り向かずに尋ねる。


「お前の能力は随分多彩だけど、その能力の根源は何だ?」

「えっと、元素の操作と重力制御だったっけ?」


 思わずアンジェロは振り向いた。


「なんだそれ! 卑怯くせぇ! チートすぎるだろ!」

「えぇ? でも、私はヴィンセントさんに教えてもらった事しかできないよ」


 ミナはアホなので、元素だの重力だの言われてもチンプンカンプンで、完全に宝の持ち腐れなのである。

 勿体ない、と呆れながら、アンジェロが少し考えてミナに言った。


「あの龍に重力かけろ。とにかくかけまくれ」

「うん、わかった!」


 言われたとおりにミナは両手を差し出して、龍に向かって重力をかけ始める。炎の壁に体当たりしていた龍は、その重力に押さえつけられて地面に落ちた。それでものた打ち回ってもがいているので、更に重力をかける。

 暴れていた体の動きが少なくなって、頭や尻尾を震わせるが身動きが取れない。それでもかけまくれと言われたので、もっと重力をかける。

 押し潰される様な圧力に、砂の龍は地面にめり込みながら、体の細いところから崩れていく。それを見てミナは一層重力を加える。

 もっと、もっと。重力は10倍に、100倍に、1000倍にまで荷重されて、黒い渦が生まれて龍の体は歪むように黒い渦に引き込まれていく。ずるずると引き寄せられるのに抵抗していた龍が、その力に抗うことが出来ず、するりと黒い渦に飲み込まれた。


 それを見て安心していたが、ジョヴァンニの出した炎の壁まで吸い込まれて、傍にいたジョヴァンニたちまで吸い込みそうになって、慌てて重力を解除した。

 吸い込まれる直前で黒い渦が消えて、べしゃりと砂に落ちたジョヴァンニ達を見てホッと胸を撫で下ろし、アンジェロに振り向いた。


「龍消えたよ!」

「よかった。つかお前もっと勉強しろよ。勿体ねぇ」

「むぅ……。でもあれなに? なんか黒い渦出たよ」

「んなもん、ブラックホールに決まってんだろ」


 ミナの大質量かつ強度の高い重力の荷重によって、時空が歪められブラックホール化したらしい。まさか天体を作り出すほどの能力を自分が持っているとは思わず、ミナはビックリだ。


「そんな事も知らねぇアホ弟子とは……心から伯爵に同情するぜ」

「うるさいな! じゃぁアンジェロが教えてくれればいいじゃん!」

「勿論。そりゃもう丁寧に教えてやる」


 アンジェロとしてはラッキーこの上ない。ミナがバカみたいなチート能力を発動するのを見れば、それをアンジェロもコピーできるからである。

 アホなミナはそんな思惑にも気づかずに、アンジェロが教えてくれることを能天気に喜んでいた。


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