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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
11 インド/無人島編

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11-9 精神世界のダンジョンがかなりムリゲー


 その頃、アンジェロと北都は精神の迷路の中を走り回っていた。複雑怪奇な迷路だったが、北都には出口はわかっていた。来た道を引き返すわけだが、北都は迷路の構造など無視して、壁を壊して真っ直ぐに突っ切ってきていたのだった。


「人の頭の中で、よくそんなことできるな。つかこれ俺の精神構造だろ? 俺大丈夫?」

「心配しないで、これはアンジェロのじゃないよ」

「アイザックか。じゃぁもっとブッ壊しちまえ」

「気持ち的にはそうしてやりたいけど、無駄にエネルギー消耗したくない」

「お前、姉貴と違って合理主義だな」


 苦笑しながら走っていると、空間がゆらいだのが分かった。なんなのかわからないが、何か流れが変わったのが分かった。何かが起きている。そう思って北都を見ると、北都も頷いた。


 北都が空間に向かって手を延ばし、何かを掴んで横に薙ぐような仕草をすると、壁紙が破れるように空間が裂けた。その向こう側に映し出されたのは、アイザックから見た外の世界の様子だった。

 それを見て、アイザックが交戦中であることと、その相手を見て思わず声を上げた。


「クリス! レオ!」

「よかった、生きてたみたいだね」


 確かに良かった。生きていてくれて本当に嬉しい。ただ、相手はアンジェロの体を乗っ取ったアイザックだ。ハッキリ言って、今にも死にそう。


「ジョヴァンニはいねーのか!?」

「二人だけみたいだね」

「マジかよ! ジョヴァンニさえいれば、俺なんか敵じゃねぇのに!」


 アンジェロの嘆きを聞いて、北都は不思議に思って首をかしげた。ミナと一緒にSMARTの訓練の様子は見ていたし、オーストラリアに行ってからも彼らの能力については教えてもらった。

 だが、わかっているのはアンジェロがズルいくらい強いことと、ジョヴァンニはアンジェロには及ばないという事だった。だから疑問に思って尋ねた。


「ジョヴァンニって実はアンジェロより強いの? アンジェロを倒せるくらいに?」

「アイツ一人だと無理だな。でも、アイツが誰かと組めば、確実に俺は死ぬね」

「そうなの?」

「そうそう。アイツはある意味最強だからな。でもそのジョヴァンニがいないんじゃ、かなりヤバい」

「よくわかんないけど、とにかく体を取り戻すしかないわけだね。急ごう!」


 そうして北都は更にスピードを上げていく。アンジェロは北都を追いかけながら、ぐんぐん進んでいく北都が、よく見ると走っていないことに気付いた。


「お前飛ぶとかズルくね!?」

「精神体が肉体と同じ動きをする必要ある?」

「なるほど!」

「精神活動は意志の力と発想の転換が物を言うんだよ」

「伊達に長年精神体で生きてねぇな」

「当たり前だよ」


 見た目は少年なのに、北都はそう言ってニヒルに笑う。姉がお花畑なもので、随分しっかり者に育ったようだ。 

 北都の言った通りイメージしてみる。超能力で飛行したことはあるので、飛ぶこと自体は簡単だ。

 あとは願う。早く、速く、ここを出て、クリスティアーノとレオナルドの窮地を救って、ミナを助け出したい。

 そう願うと、体が静かに光を帯び始めたと思うと、キィィと絹を裂くような音がしたと思うと、アンジェロは高速で迷路の穴を通過していた。


「折角迎えに来てあげたのに、僕を置いていくとかひどくない?」


 やれやれと溜息を吐いて、北都も高速飛行に切り替えてアンジェロを追いかけた。


 北都がアンジェロに追いついた頃には、迷路の終わりに差し掛かっていた。広大でマトモに入ったら抜け出すことも困難な迷路だが、北都のお陰で一直線に来れた。

 やっと迷路を脱出した時、その向こうには別の空間が広がっていた。そこはシンプソン砂漠に似た、砂丘の連なる広大な砂漠だった。今度は砂漠越えをするのかと考えたが、出口が分からなかった。


「来るときどうした?」

「精神空間って言うのは、精神状態によって変動するものだよ」

「つまりここは通ってきてねぇと」

「そういうこと。でも問題ない」

「どうする?」

「空間は有限なんだ。どんなに広く見えてもね。だからパンクさせる」


 そう言うと北都は砂漠の上空に飛び上がって、両手を広げた。すると、北都の両手からダムが決壊したかのように大量の砂が流れ出した。


「うおぉ! お前砂で埋める気か!」

「そう。僕一人だと大変だから、アンジェロも手伝って」


 よくわからなかったが、北都の言った通り、北都と同じようにやってみた。要はイマジネーション、想像力と意志の力。戸惑いつつも、イメージしながら強く願う。そうすると北都の様に怒涛の勢いで砂が溢れだした。

 

 しばらくすると、その空間は砂で埋め尽くされてしまって、風船が割れるようにはじけて消えてしまった。その変わり、エネルギーを大量に消耗したのか、アンジェロはひどく疲れてしまった。それに引き換え、北都はケロッと先を急いだ。


「お前すげぇな」

「アンジェロはヘタレだから、この程度でへばるんだよ。こういう時くらい、男見せなよ」

「うるせぇ。俺だってやるときゃやるんだよ」

「今がその時。頑張って」


 言い返せないのが悔しいが、北都の言う通り。今が頑張り時だ。 

 次の空間は巨大な図書室だった。天井が見えない程高い上空いっぱいまである本棚に、本がぎっしり。その棚が縦横無尽に配置されている。


「なんだこれ。また迷路か?」

「いや、多分これは全部の本を読むコースだね」

「なにそのコース!? ムリゲーすぎるだろ!」

「んー、そうかな? 本って言うのは知識って事だ。アイザックの全ての知識がここにある。僕は大して知識はないけど、アンジェロってレミの天才脳も持ってるんでしょ?」

「あ、なるほど。じゃぁなんとかなるか」

「本の傾向を見ながら、その概要を思い浮かべてみて」


 本棚に触れて、本の背表紙を見ながら大まかな知識を頭に思い浮かべる。医学、薬学、経済、歴史……。すると、アンジェロの持つ知識に該当したであろう書架が、器械的な音と共に書架ごと消えていく。


「アンジェロすごい! その調子!」


 この精神世界では無敵なんじゃないかと思っていた北都が喜んでいる。その事に気をよくしたアンジェロは、本棚に触れながらガンガン書架を消していった。

 北都も多少は手伝って、今度は大してエネルギーの消耗もなく、図書室の空間は消滅した。


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