11-7 コイツと戦うのは本当に嫌
クリスティアーノはレオナルドの元に戻ると、成功の報告をした。そしてもう一度電話を掛けると、レミはすぐにヴィンセントと電話を交代した。ヴィンセントに状況を説明し、シャンティ達を逃がしたこと、様子を見てミナを救出する予定だと話した。
「そうか。私の到着を待てと言いたいところだが、そうも言っていられない。ミナを頼む」
「はい。伯爵たちの方はどうなっていますか?」
「レミがレーダーを修復してな。軍用機か何かがこちらへ来ているそうだ。陸地にさえ到着できれば、私の瞬間移動ですぐにそちらに行く」
「そうですか」
クリスティアーノがほっと息を吐いた時、隣のレオナルドが突然慌てだした。
「レオ?」
「ヤバい、見つかった」
「は?」
「アイザックと目があった」
「ゲッ! マジか!」
聞こえていたのか、ヴィンセントが「どうした?」と尋ねるので、慌てて電話口で言った。
「アイザックに気付かれました。屋敷に忍び込むのは不可能になりました。というより、お仕舞です」
「何故だ」
「アンジェロも千里眼を使えるし、アンジェロとタイマン張って俺達が勝てたことはありません。逃げても空間転移で追いつかれます」
「お前達では勝てないのか」
「無理です。無茶は承知ですが、早く……」
電話口でヴィンセントに懇願していると、レオナルドがバシバシと肩を叩いた。
「ヤバいヤバい! こっちくる!」
「マジかよ! あぁっ、ジョヴァンニ連れてくれば良かった! すいません切ります!」
後悔しながらも携帯電話を仕舞って、背中に背負っていた剣を抜くと、その瞬間にアイザックが目の前に現れた。
アイザックは微笑みながらこちらを見ている。アンジェロと一対一で戦って勝てたことはない。レオナルドと二人で戦っても正直厳しい。
「あーあ、ジョヴァンニさえいれば、絶対勝てたんだけどなぁ」
レオナルドは後方に下がって銃を構え、クリスティアーノは冷や汗を流しながら二本の剣を構えて、親友の姿をした敵を睨む。
「驚いた。君たち生きていたんだね。もしかして別行動だった?」
「戦力を分散させるのは戦術の基本だぜ」
「なるほどね。でも君たち二人ってアンジェロより強いの?」
「残念だけど、アンジェロには勝てない」
「そっか。じゃぁ可哀想だけど、君たちも死んでもらおう」
クリスティアーノは冷や汗を流して顔をひきつらせながらも、なんとか不敵に笑った。
「俺達も? 残念だけど、誰も死んでねぇぞ。伯爵たちは生きてる」
その言葉にアイザックは怪訝そうにした。
「生きてる? そんなはずはないよ」
「信じる信じないはお前の自由。とにかく俺達は時間を稼いでいれば、それでいいわけだ」
「ふぅん、稼げるの? アンジェロより弱いんでしょう?」
「アンジェロには勝てねぇけど、お前になら勝てるかもな」
「そう言うのを、減らず口って言うんだよ」
アイザックはそう言うとニヤニヤと笑いながら両手を広げる。その両手にまとわりつく電流を見て、クリスティアーノは笑うしかなかった。
「やっぱジョヴァンニ連れてくれば良かった」
アイザックは笑いながらクリスティアーノに腕を向けて、雷鳴と共に電流がクリスティアーノに襲い掛かった。
だが、クリスティアーノはその脚力で瞬時に避けて、アイザックの背後に回った。その勢いのまま斬りつけたが、アイザックの背中に受けた傷はたちどころに修復された。
「友達だろ? 本気で斬るなんてヒドイな」
「どうせ斬っても、俺らは死なねぇだろうが。つーかお前は友達じゃねぇよ」
クリスティアーノは恐るべきスピードでアイザックに肉薄し、アイザックが気付いた時には胸部と腹部が切り裂かれた。と思ったら今度は背中を切り裂かれ、左手を切り落とされる。立て続けに風の様に繰り出される斬撃に、アイザックはテレポートで距離を取ったが、わかっていたかのように転移場所に現れた瞬間に狙撃された。
(僕にも同じ力があるはずなのに、彼のスピードに対応できない……あっちの彼には僕の動きが読まれてる……なぜ?)
多少の距離ならクリスティアーノにすぐに詰められる。クリスティアーノの動きを目で追うのがやっとだ。彼の繰り出す斬撃を避けることが出来ない。
しかも後方からレオナルドが狙撃してくる。クリスティアーノと交戦しているというのに、嵐のような乱撃をかいくぐった銃弾が、アイザックにだけ命中する。この二人の戦闘能力の高さには、驚かされるばかりだ。
だが、アイザックは彼らとは違って、様々な能力を有している。これくらいで窮地には立たされない。
クリスティアーノの前に竜巻が起き、巻き上げられて空に打ち上げられた。だが、クリスティアーノは空中でバランスを取って体勢を立て直すと、空気を強引に踏みしめて圧縮し、空中に足場を作って空を駆けた。
空中を駆けて彗星の様に迫るクリスティアーノに、流石にアイザックは驚いて、テレポートでその場から距離を取った。そのまま激突するかと思ったが、瞬時に減速して地面に降り立った。
「空を走る人間なんて初めて見たよ」
アイザックは本当に驚いている様子だったが、やはり笑って炎を纏い始めた。
「アンジェロの顔でニコニコするな。気持ちワリィな」
「君だってずっと笑ってるじゃないか。笑顔が標準装備なのはお互い様だよ」
アイザックは纏い始めた炎を一気に広げ、周囲に炎の壁を作り出し、彼らを取り囲むように炎上させた。ジョヴァンニの炎の壁からは逃れられない。どうやら逃がす気はないらしい。
続いてアイザックは電流まで纏い始めた。しかもその電流は広範囲に拡大していった。
それを見ると、やっぱりクリスティアーノは笑うしかなかった。
「出た、広域殲滅。あーもー、だからアンジェロと戦うの、嫌なんだよなぁ」
本当にうんざりしてきたクリスティアーノに、全方位から電撃が襲い掛かった。




