表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
11 インド/無人島編
107/140

11-3 私はあなたのものにはならない


 ミナの殺害予告を聞いても、アイザックは笑って平然とミナに触れる。嫌悪感に眉を寄せながらも、ミナは耐えた。


「ヴィンセントさん達を、殺したんですか」

「うん、追って来られても迷惑だからね」

「私に恨まれるとは思わなかったんですか」

「思ったよ。だけど、君が僕をどう思っていようが関係ない。僕は君を愛してる」

「イカれてる」

「なんとでも」


 抵抗も拒絶もしない。その代り、腸を混ぜ返される様な怒りを忍耐力に変えて、ミナは顔を上げて、アイザックの耳元でささやいた。


「アンジェロ」


 ピクリとアイザックが反応したのを見て、もう一度囁く。


「アンジェロ」

「やめろ」

「アンジェロ」

「僕はアンジェロじゃない」

「大好きだよ、アンジェロ」

「アンジェロの名を呼ぶな!」


 見下ろして怒鳴りつけるアイザックを、しっとりと睨んだ。


「この体はアンジェロのもの。私はアンジェロに抱かれてるんです。決してあなたじゃな……むぐっ」

「黙れ」


 ミナの口を掌で塞いで、アイザックはアンジェロはもう戻ってこないと何度も言った。


 ミナはただただ耐えていた。耐えて、そして、その時が来るのを。その時が来た時、一際膨れ上がった嫌悪感を宥めすかしながら、心の中で叫んだ。


(北都、今よ! 行って!)

(うん! わかった!)


 アイザックが恍惚の表情でミナを見ている。唾を吐きかけてやりたかったが、相変わらず口を塞がれていて、それすらも出来ない。


「アンジェロはもう戻ってこないよ。この体も君も、僕のものだよ」


 せいぜいほざいているがいい。ミナにとっての苦痛も、アイザックにとっての天国も、いずれ終わる時が来る。

 ミナはただただ時を待ち、北都を信じて耐え忍んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ