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不死王の愛弟子  作者: 時任雪緒
11 インド/無人島編
105/140

11-1 インドネシア沖航空機墜落事故



 飛行機に乗ったヴィンセント達は、はるか上空にいた。


 うつらうつらとし始めた頭をプルプルと振って、なんとかレミは目をこじ開ける。今は寝ている場合じゃない。ミナとアンジェロの事が心配だったし、先に向かったクリスティアーノ達から連絡が来るかもしれなかった。

 レミはもう一度ほっぺたをぱちんと叩いた。ミナとアンジェロが消えて、既に10時間は経過している。

 今頃アイザックの憑依したアンジェロはどうしているだろう。ミナはどうなっているのだろう。クリスティアーノ達はどこにいるのだろう。もうそろそろ到着しただろうか。

 知りたい、知りたい。知らないことがある、未知の出来事は、レミにとって恐怖だった。

(何が起きているのか、知りたい……)

 そう思いながら、レミは浅い眠りについた。



「レミ、レミ!」

「っはぁ! はぁ、はぁ」

「大丈夫? うなされてたよ?」


 目の前に心配顔をしたジョヴァンニの顔があって、体中汗でびっしょりと濡れていた。


「怖い夢でも見たの?」

「うん……飛行機が、落ちる夢」

「縁起でもないなぁ」


 ジョヴァンニがそう言ってレミの額の汗を拭った時、飛行機が激しく揺れて傾いた。乗客たちが悲鳴を上げて、キャビンアテンダントが必死に宥めている。ドリンクの乗ったカートが通路を暴走し、天井から酸素マスクが下りてきた。


「げっ……冗談でしょ!」

「レミが見た夢って、まさか!」

「予知夢なの!?」



 イーライ・クロード。彼は飛行機の操縦士で、勤続30年の大ベテラン機長。実績もあり人々から信頼される、優秀な機長だ。

 思い返せば訓練学校時代から色々な事があった。ライバルたちとしのぎを削り合い、友と励まし合い、時にはケンカをし、時には美しい女性教官との恋に落ちた事もあった。

 だが、操縦士として半生を捧げてきた彼は今、信じられない物を目にしていた。飛行機の前に人がいる。人が浮かんでいる。金髪に琥珀色の瞳をした、背の高い男が、両手から雷を放出しながら浮かんでいる。

 その男がにやりと笑うのが見えた。男がこちらに手をかざすと、周りの雷雲を巻き込み、激しい雷鳴とともに、強烈な閃光が視界を覆った。その瞬間、機体が揺れて傾きはじめた。


「機長! 第1エンジン、第2エンジン停止しました! 操縦不能です!」


 長年パートナーを務めてくれている副操縦士のデレクが叫んでいる。操縦桿が動かない。急速に高度が落ちていく。エンジンの再起動を試みるが、第1エンジンと第2エンジンは反応してくれない。残ったエンジンを全力で噴射して落下の速度を緩めるものの、このままでは燃料が尽きる。

 必死に操縦を試みるイーライの視界の隅で、落ちていく航空機を見下ろした男が、笑って飛び去っていくのが見えた。



 シートにしがみつきながら、ジョヴァンニがレミを庇うように引き寄せた。レミは必死にシートとジョヴァンニにしがみついていた。


「レミ! お前の見た夢ってコレ!?」

「そうだよ! アンジェロが僕達の乗ってる飛行機を落とすんだ!」

「ウソだろォォ!」

「うわぁぁ!」


 ドアが吹き飛ばされた。気圧が変わって中のものが外に吸い出される。荷物が飛んで行って、誰かの仕事の資料やパソコンが飛んでいく。何人かの乗客が外に放り出されて、隣の列の男性が必死に神に祈りを捧げていた。

 そして衝撃とともに、レミとジョヴァンニは意識を手放した。


  

 ぺちん、と額を叩かれて目が覚めた。


「起きたか」


 ヴィンセントがいて、ボニーとメリッサが安堵したように微笑んでいた。

 よかった、生きていた、とレミとジョヴァンニも安心して息を吐く。


 だが、安心した頭でようやく周りを見渡して、驚く。周囲には木々が生い茂り、鳥や獣の声が響き渡っている。蒸し暑いジャングルの少し離れたところから、飛行機の機体と煙が立ち上っているのが見えた。


「陸地に墜落したのは不幸中の幸いだが、乗客の人間はお前ら以外全員死んだだろう」


 レミとジョヴァンニは墜落の直前、ヴィンセントが飛行して拾ったので無事だったようなもので、飛行機は墜落と同時に爆発四散、炎上。恐らく、誰も生き残れていない。


「そうですか……でも伯爵、ここは……」


 レミが尋ねると、ヴィンセントは本当に本当に不機嫌そうにして、深く溜息を吐いて肩をすくめた。


「困ったことに、無人島だ」

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