10-11 男だけで盛り上がらないで下さい
「少しずつ体を集めながら、生霊になってまでミナを探し回った、僕の気持ちがわかる?」
「日々伯爵の氷の視線を浴びて、日常的に死の恐怖に晒されてた俺の気持ちがわかるか?」
と、アンジェロとアイザックの頑張りを台無しにしていると、二人から怒られた。ついでにヴィンセントにも怒られた。
はた、とアンジェロとアイザックの目が合った。
「やぁ、アンジェロ。久しぶり」
ぱぁっと後光が煌めく様なときめきスマイルで、アイザックの先制攻撃。
「アイザック。こんな遠いところまで、はるばるご苦労さん」
アンジェロもバサッと華を背負った営業スマイルで応戦。
「君が人間だって知った時は驚いたよ。てっきりご主人様に不毛な片想いをしている、不思議な猫ちゃんだと思っていたからね」
アンジェロの営業スマイルにピキリとひびが入る。
「俺も驚いたぜ。まさか元カレが生霊になってまでストーキングしてるとは思わなかったからな」
アイザックのときめきスマイルにもビシッとひびが入る。
「ん? 僕の聞き間違いかな? 今、元カレって聞こえた気がしたんだけど?」
アイザックの周囲に風が吹き荒れ、足元から空気の渦が立ち上る。
「聞き間違いじゃないと思うぜ。今カレが言うんだから間違いねぇ」
アンジェロの周囲の空気が緊張を帯び、パリパリと青い閃光が走る。
「あれ、何を言っているのかな? 猫として可愛がられているのを勘違いしているんじゃない?」
「そっちこそ、いつまでも彼氏ヅラしてられるって勘違いしてんじゃねーか?」
竜巻を纏ったときめきスマイルと、雷を纏った営業スマイルが激しく睨みあう! 気圧の低下が著しい為、今夜は大荒れの模様です!
その頃のミナ。
「なんかさぁ、別に私いらなくない? あの二人で決めればいいんだよ、もう」
やっぱり仲間外れにされて不貞腐れている。
ミナは三角座りでレミに愚痴っていた。
「僕はまだ子どもですから、大人の話は難しくてよくわかりません」
面倒臭くなった天才少年は、子どもであることを利用して逃げようとしていた。