8.
「どわああああああああああああああ!!」
という叫び声が長い廊下から響き渡り、俺の鼓膜を刺激してきた。
このくそやかましい声でわかる。どこのどいつか、ハッキリとな。
「間に合ったあああああああああ!!」
ゼエゼエ息をあらげながら、リーダーさんの時と同じように、ドアを乱暴に開け放つ。
いつもいつも朝っぱらからテンション高いやつだな、こいつは。
「よう、遅かったな。なにやってたんだ」
「おう、なんでか今日寝坊しちまってよー。起きて時計見てみたらヤベエ時間で、ソッコーで支度して
猛ダッシュで来たんだけど……間に合って良かったぜ」
そう口にしながら、自分の定位置、すなわち自分の席に腰かける。
そう、こいつが赤義龍二だ。
「皆、おはよう」
ニカッ、となんだがよくわからんスマイルを、顔に描きながら爽やか? な挨拶を向けてくる。
なんでかな? 悲しくなってきたぞ。
「おい龍二、気色悪い笑みつくってんじゃねーよ」
リーダーさんがストレートに、かつ本当に気持ち悪いものを見るような目で、龍二を見下していた。
自分に対して言われてる訳じゃないのに、何故だか申し訳ない気持ちで一杯になった。
「えっと……おはよう」
「お、おはようございます。龍二さん」
「…………」
ありさと智葉那は顔をひきつりながら、一応言葉を返したが、上月はガン無視。目もくれない。
「ちょっと、なんだよ皆してその態度は! 俺達は生死を共にするチームだぞ! 仲間だぞ! それなのに、こんな冷たい対応が、あっていいわけがない!!」
バンバン机を叩きながら、抗議する龍二だが、
「だって、ダサい顔の笑顔見せられりゃ、誰だって嫌がるってーの。なあ、お前ら」
「同じく」「そうですね」「同感です」「…………はい」
俺、ありさ、智葉那に上月さえも同意する。
「……泣いていい?」
勝手に泣いとけよ。
「うむ、いつもと順序は違うが、今日もチーム全員揃ったな。善きかな善きかな」
リーダーが龍二を無視しながら、俺達、チームa24が揃ったことを喜ばしく語る。
このチームとは、六人一組からの小規模部隊のことを指す。
〈ネブラ〉の掃討作戦では数十人、もっと多くて、百人単位の〈ANSF〉の隊員が、戦場に投入される。
そのたびに、その時にあわせた部隊編成をするのだが、何があろうとも一つのチームを解体したり、入れ換えるようなことはできない。
一つのチームは一つの命なのだ。
そして、チーム内の六人は、一人一人それぞれ違った技能を会得しており、それに伴い、兵種も個人個人で違う。
その兵種は決まっており、突撃兵が二人、支援兵が二人、狙撃兵が一人、衛生兵が一人、といった構成だ。
俺達を例にすると、俺と龍二が突撃兵、ありさとリーダーが支援兵、上月が狙撃兵で、智葉那が衛生兵、といった具合だ。一人一人が異なる戦闘技能を会得しているため、バランスよく、様々な戦局に対応することができる。
さっき、チームは解体したり、入れ換えることはできないと言ったが、じゃあどこでチームを決めるんだ、という疑問が浮上してくる。
その疑問を解決してくれるのが、この〈ANSF〉学園だ。
メンバーは、〈ANSF〉学園に入学するときに、学園側が自動的に決めてしまう。しかも、よほどのことがない限り、再検討をしてくれないのだ。