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ブラック・レイン  作者: 桐生 彰
崩れた世界、崩れる世界
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4.

 〈ANSF〉学園は、寮から出てすぐそばにあるため、いまからでも十分間に合う。

 俺達の寮を含めた〈ANSF〉学園ととこの東京都は、巨大なドームにおおわれた作りになっている。これを俺達は、東京ドーム都市と呼称している。

 〈ブラック・レイン〉がアメリカを襲ってから、アメリカは崩壊した──訳ではなく大半の人間が生き残り、一時的に地下に潜伏した。その後、世界の至るところに〈ブラック・レイン〉は容赦なく降り続けた。すなわち、どこの国も地下に潜伏してやり過ごしたのだ(もちろん、そうでない国もあったが)。

 冷戦の名残だ。いつ、何処から核が落ちてくるかも知れない世界では、必然的に逃げ場が必要となる。防空壕だ。巨大な防空壕。

 と言っても、それはあくまでミサイルや核から逃れるためだから、まさか"雨"ごときに使用するとは、どこの賢いやつも変人も全く予想していなかったろう。

 そんなわけで、生き残った人間たちはずっと地下に座り込んでいた訳だが……そうもいかなかった。それはどこの国も同じだ。だから世界は統合された。

 冷戦の終結は、〈ブラック・レイン〉がもたらしたのだ。

 そうして世界はひとつになった訳だが、世界各国共通の目前の脅威は、これまた〈ブラック・レイン〉だった。

 そして作られたのが、このドーム都市だ。

 そのためこの巨大ドームは、いまの時代ではそれほど珍しいものではない。東京ドームの何十倍もある大きさのこれは、多くの国々で数多く存在している。

 理由はいくつかあるが、大まかに分けると2。 

 1つ目は、〈ブラックレイン〉を通さないこと。

 2つ目は、〈ネブラ〉の侵入を防ぐため。

 〈ブラックレイン〉や〈ネブラ〉は、いつ現れ俺達──人間を襲うかわからない。当初は約10億 いたとされる〈ネブラ〉も、いまは〈ANSF〉の活躍により、半数の約5億まで、その数を減らした。

 しかし、まだ5億もいるのだ。 圧倒的な力をもった化物が、死ぬことを恐れない化物が、破壊するだけしか脳がない、兵器のような化物が、こんなにも沢山動いているのだ。

 そんなのとまともに戦っていたら、多くの人が死に絶える。下手をすれば人類そのものが消えてしまう。

 だからこそ、このドームは人類にとって重要な砦なのだ。

 生きるための──



 あっという間に〈ANSF〉学園に着いた俺とありさは、9階もある建物の3階に、早足で向かう。

 3階にある俺達の教室、2年a組にはいると、数人の生徒がポツポツ座っていた。

 クラスメートにあいさつをしつつされつつ(特にありさに対して)、自分の席につく。ありさの席は、俺の右斜め後ろで、とても近い。

「龍二さんたちまだ来てないね」

「今日は変わったことが多いなあ。俺の早起きといい、あいつらが遅いことといい」

 これまた珍しいことだ。俺とありさはいつもこの時間にくるのだが、その時にはいつも、赤義龍二という奴が必ず席に座っている。

 赤義龍二こと、龍二は俺達のチームメンバーの一人だ 

 性格は、熱血の一言。

 龍二はいつもやかましく、猪突猛進で、小細工が極端に苦手だ。

 いや、嫌っているといった方がいいだろう。

 だがそのぶん戦闘能力は高く、近接戦闘や格闘スキルは、2年のなかでもトップクラスだ。

 でもこいつの最大の美点は、人を思いやり、助けることができるその心だ。

 俺も、その心に何度も助けられた。

 だから、どれだけバカでも、やかましくても、どうしても憎むことのできない、

 俺の親友だ。

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