滑稽死刑囚
ザ・バッドエンドストーリー
−彼女と出会ったのは三年前の〇月〇●日でした。
−正直、一目惚れでしたね。
−身体が燃えるかと思いました。
−思わず話し掛けてしまいました。
−それからしばらくお話して、意気投合しましたね。
−見た目は穏やかそうなのに、中身は活発でした。
−それから…時たま会うようになりました。
−二人きりでよく遊びにいきましたよ。
−いろいろなところに行きましたね。
−思い出の品もたくさんありましたよ。
−写真もよくとりました。
−会って一年位後に、告白して晴れて恋人同士になりましたね。
−赤くなった顔が可愛かったですわ。
−僕の顔も赤かったでしょうね。
−つかの間だった逢瀬は楽しかった。
−今まで以上に楽しかった。
−…どうしてこうなってしまったんでしょうね…。
−いや…現実逃避してる訳ではないんですよ。
−付き合い始めて三ヶ月目の始めてのクリスマス。
−ケーキも用意しました。
−ツリーも用意しました。
−…指輪も用意しました。
−プロポーズするつもりだったんですよ…。
−ささやかにセットした二人だけのクリスマスに…。
−夜に家に来て下さいと、朝連絡して。
−約束の時間の一時間前位にセットが終わりましたね。
−…で、約束の時間になっても彼女は来ませんでした。
−彼女への電話は繋がりませんでした。
−それから一時間、料理が冷めたくらいに…インターホンがなったんです。
−彼女かと思って、ドアを開けてしまいましたね。
−それからの記憶がなく、気がついたら此処にいました。
−最初は錯乱し続けましたね。
−何が起こったかわかりませんでしたし。
−…で、何日か後に落ち着いたわけです。
−一ヶ月たったんでしょうか?
−僕は衰弱してましたね。
−天井から垂れる雨水しかなかったんですからね。
−意識が薄れてきた頃に…人が来ました。
−救いかと思いましたね。
−逆でしたが。
−ああ、怒らないで欲しいです。
−彼らは私より良い人なのは確かなのは知ってますから。
−話を続けていいですか?
−で、現れましたね。
−いきなり蔑みを向けられて驚きましたが。
−後ろにいる黒スーツな男に容器に入った何かを投げ付けられましたね。
−ええ、僕の食事ですよ。
−残飯をミキサーで混ぜたものでした。
−最初はゲロかと思いましたよ。
−投げ付けられた後、こう言われましたね。
−死刑執行は●●●●年●月●●日だと。
−最初は何言われたのかわかりませんでした。
−飢餓で思考能力が低下していたのもありますが…一番は理解したくなかったからなのでしょうね。
−それだけいって去りましたよ。
−その後で僕は地面のペーストを飲みましたね。
−空腹は最高の調味料っていうのが身に染みましたよ。
−それから毎日廃水か残飯を投げ付けられましたね。
−そんな嫌な顔されても困ります。−いくら裸の醜い半腐乱体だからっていくらなんでもひどいですよ。
−腕も足も髪もないですけども。
−滑稽ですよね…。
−ただ彼女を好きになって。
−ただ彼女を愛するようになって。
−ただささやかにプロポーズしようと思って。
−…結果がこれですよ。
−喚かないで下さいよ。
−あなた記録者でしょう?
−明日処刑の死刑囚の話くらい最後まで落ち着いて書き留めれないんですか?
−…どうせ表に出ずに書庫行きだからいいだろうって?
−…ああ、そういうことですか…。
−くくくっ、あははっ。−そうか、そういうことですか。
−あまりの身の滑稽さに笑いしかでてきませんよ。
−これで最後だからいい残すことはないかって?
−彼女を愛したことは後悔してません。
以上が、記録官▲▲が記録した死刑囚番号■■■■■の末期の話である。異例ともいえる長い独白が特徴であるが、これは書庫の奥深くに隠されて長年放置されていた。書庫の大整理時に発見されるまで、放置されていたとおもわれるが…殆ど劣化していない状態で見つかった。処刑が長く異様に醜かったことと、犯した罪の醜悪さで有名な死刑囚の意外な一面が解読により明らかになった。罪状との食い違いがあるのが気になるが、精神が可笑しくなっていたことによる妄言であろう。表に何故出なかったのかは不明だか…社会の膿の中の膿といわれているため、恐らく出す価値もなかったためと思われる。書庫に納められていたもののため、一応一般公開される予定である。
▼▼▼の孫の話。
お婆は何時もいってましたね。私の初恋の人は殺されたと。祖父のことは余りしりませんね。母五才、おじ五才、おば五才の時に事故でなくなったらしいですが。初恋の人との三つ子だったのよと言ってましたね。祖父達が死んだから言えるといってましたから、昔何かあったのでしょう。祖母の宝物のペンダントには祖父でない男の人の写真が入ってましたけど…誰だったんでしょうね?