四人の軌跡 俺編
俺は今でもお前のこと愛してるんだ。
通り魔に巻き込まれて
ナイフが俺に刺さって
俺が通り魔を殴り倒したとき
お前は気絶しちまったよな
情けなねえけどよ
俺は救急と警察呼んだ後の記憶がないんだ
医者に聞いた話だと
運ばれてきたとき、出血とかで危ない状態だったんだとよ
目が覚めたら一週間たってて驚いた
通り魔はその場でのびてて捕まったよ
ニュースで、でかでかととりあげられてたからお前も知ってるだろうな
誰も僕を大切にしてくれなかったからってのが動機だったか?
甘ったれた奴だと腹がたった
人に求めるだけで、自分はなにもしないダメ野郎だと報じられてたからな
親にさえ見捨てられてたよ
こんな奴にやられたのが
嫌になった
思いかえせば…誰もかもが僕を見捨てる!消してやる!僕は偉いんだ!
とか喚いてたな
医者の話が終わった後
警察からも話を聞いて
聞かれたことを答たあと
お前がどうしてるか聞いたんだ
気まずそうに目をそらされたよ
なんでかその時はわからなかったが
当たり前だよな
お前の記憶から俺が抜け落ちて
お前に前々からアプローチかけてた若いエリート上司が
俺のところにはまっていたんだから
怖ず怖ずと、聞いて後悔しないか聞かれたよ
後悔しないと言って教えてもらったさ
お前が今も入院していることも
お前の記憶から俺が消えたことも
見舞いに来た上司が
たまたま腹に怪我をしていたのをいいことに
お前が俺のことだけを忘れてるのをいいことに、嘘をついことも
お前が上司のプロポーズをうけたことも…
一週間であった全てを聞いたさ
情けないけどショックで一日気絶したさ
また目覚めた時に医者に励まされたよ
不覚にも泣いたさ
ありがとうばかり言いながら泣いた
医者が去ってしばらくしたら
お前の親友がきたよ
泣きながら謝られたね
普段凛々しい奴だから
俺は驚いた
上司からお前を守れなかったことがよっぽど堪えたみたいだった
たまたま県外出張が入ってて
一昨日帰ってきて通り魔に俺らが巻き込まれたのを知り
昨日お見舞いに来て最初に眠る俺をみて
お前が何故此処に来ないのか疑問に思ったそうだ
まだ入院してるのを知ってたからな
お前の病室を覗きにいって愕然としたそうだ
そりゃそうだよな?
上司と楽しそうに幸せそうに語りあって
出張前にはつけてなかった指輪をして
笑ってたんだから
幸い気付かれなかったから、そうと出てから捕まえた看護婦に聞いたそうだ
何があったのかと
医者のところに連れてかれて
俺が知ったのと同じ内容を知らされたんだそうだ
仕事の時間が迫ってたから
昨日は帰って仕事して部屋で泣いたそうだ
悔しかったんだろうな
俺らの殆どを知ってたんだから
お前が幸せそうに俺とのことを話すのも
俺が恥ずかしそうに惚気るのも
俺らとつるんで自分だけ砂糖はくのも…
俺らの側にいつもいたあいつだから
通り魔に憤り、上司に憤ったんだろうな
泣きやんだ後、話をしたよ
お前はそれでいいのか?と聞かれた
それでいいと答えた
悲しそうにしながら
こんな時にいうのも…と言いながら
終わったら付き合わないか?と言われた
俺のことが大切で
お前のことが大切で
俺らが付き合いだしてすぐに
お前には俺が好きだがお前に譲ってやる!幸せにしろ!
俺にはお前が好きだか俺に譲ってやる!幸せにしろ!
っていって、思わず三人で笑った発言をした奴だったから…弱った俺を支えたかったんだろうな
思わず撫でて了承したよ
あいつのことも好きで、お前のことが大切な俺だったから
泣きながら申し訳なさそうにしながら
くしゃくしゃの顔を俺の胸に沈めて泣きだしたよ
ぎゅっと抱きしめたあいつのちっこい体に安心したよ
お前は俺より先に退院したよな
窓からみてたよ
お前が幸せそうに上司と歩いて退院していくのを
涙を流してな
俺もその後退院したよ
あいつのおかげで俺も立ち直ったよ
情けないけどお前の退院の日からしばらく
俺は虚ろだったんだ
見舞い来たあいつが、俺を見て悲しそうに顔を歪めながら近づいてきたよ
目が死んでたんだろうな
あいつの胸に抱き寄せられて言われたよ
泣いていいと
思わず泣いたよ
あいつの温かさと匂いに癒されながら
虚ろだった俺は立ち直った
退院してしばらくして
お前の結婚式に出席したよ
あいつに誘われたんだ
退院して始めてお前を見にいけたのがその時だ
それまで、情けないが顔を見にいけなかった
傷は癒されていってたけど深かったからな
式の後、あいつに頼んでお前と上司を呼び出したよ
始めてましてと言い
始めてと返されるのが
辛かった
あいつが辛そうに俺を見て
お前を悲しそうな顔で見てたっけ
お前が新郎の親のところに行った後
新郎に幸せにしてやって下さいといったときの
奴の顔は見物だった
あいつが大丈夫かと隣で見てたから
目で大丈夫だと伝えたよ
新郎に、うらんでないのかと言われたよ
卑怯なことをしたことの自覚はあったんだろうな
うらんでないさと言った時愕然としてたね
な…なんでと言われたから答えてやったさ
お前が幸せならそれでいいんだと
何がいいたそうにしてた新郎が、お前に呼ばれてさるときに
いってやったよ
幸せにならなかったら承知しないと
幸せにしなかったら承知しないと
終わってしばらく立ってたよ
二人で複雑な感情を整理するように涙を流しながら
しばらくして、あいつがいった
帰ろうかと
終わったねと
これからよろしくと
俺は
ああ、帰ろうかと
終わったなと
こちらこそ、相棒と
俺とお前の道は途絶えたけど
俺は今もお前を愛しています
俺はあいつと
お前は上司と
生きていくのだろう
俺はお前の幸せを祈ることしかできないけど
お前への愛は伝えられないけど
いつか三人でまた笑いあえるように
いつか四人でつめるように
俺はしようと思う