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まだネットが繋がらないです。
1話だけ投稿します。
彼女の髪の毛がまだ濡れている事に気づいたのは、ソファーに向き合うように座って話そうとしてた時だった。
「気が利かなくてゴメン。ドライヤー渡すの忘れてた。」
脱衣所に取りに行こうとすると彼女は
「大丈夫です!それより話し合いをしましょう!」と言って俺を引き止めた。
「とりあえず、拾って頂いてありがとうございました。榎並瑞希と言います。
年は25歳。A型。12月12日生まれです。
昨日の夜に寝て、何故か起きたらお昼頃で猫になって屋根の上にいました。
後は、そのままさっちゃんが見たとおりです。
あっ、さっちゃんと友達さんが言っておられたので猫の時さっちゃんと呼んでいましたが、何てお呼びすればいいですか?」
「皆好き勝手に呼んでるから好きなように呼んでくれていいよ。
俺は沢渡耕介。28歳。O型。4月28日生まれ。って誕生日や血液型はいらなくない?
瑞希ちゃん、25歳って事は仕事してるよね?」
「呼び捨てでいいですよ!むしろ呼び捨てにしてください。
血液型と誕生日は自己紹介と言えば定番かな~っと思いまして。
仕事は昨日、退職した所で3ヶ月くらいのんびり就職先を探そうかと思ってた所です。
でも、今のままでは完璧に仕事できません…。猫ですし…。本当にどうしよう…」
泣きそうな顔をしながら瑞希はさっちゃんを見た。
さっちゃんの顔が微妙に赤いのはお風呂でちょっとのぼせたからかな?大丈夫かな?
「まぁ、それで今後の事の話し合いだよね。家が実家なら両親に帰れないとか言っておかないと大変な事になるし、理由も考えないと。」
「実家は実家でも私以外に誰もいないので大丈夫です。それに、これから1人で生きていく為には丁度よかったです。
申し訳ないんですが、迷惑を承知でお願いがあります。買い物には行けないので食料だけ運んでもらっていいですか…?
日持ちのするコーンフレーク等でいいので!コーンフレークの味が変われば全然余裕で生きていけます!」
さっちゃんは目を丸くした。
『実家に誰もいないって…天涯孤独ってやつか?で、猫のまま1人で生活する気かよ。それよりも…』
「いや、ここで一緒に住めばいいよ。そしたら、元に戻る方法も探し易くなるだろうし。ただ、男と一緒に住むのは嫌だとは思うけどね。」
微笑みながらさっちゃんは私を見た。そして肩を震わせて
「しかし、何故コーンフレークをチョイス・・・ぶぶっ!!」そう噴出しながら大笑いをしていた。しょうがないじゃん!それしか思い浮かばなかったんだから!!
「じゃ・・・じゃあ、どんな物があるんですか!言ってみてくださいよ!猫の手が使える範囲で!」
「ん~。レトルトとか日持ちのするパンとか、果物とか?」
ニヤニヤしながら私を見るさっちゃんの顔はどこか意地悪だ。そして不意に真剣な顔になって、
「それより今までずっと一人だったの?」
「はい。父は低学年の時に事故で。母は4年前に病死しました。兄弟もいなかったので…。」
「そっか…。じゃあ、今から俺が瑞希の家族と言う事でこれから宜しく。」
「家族と言うより飼い主ですよね?ご主人様?」
悪戯っぽくさっちゃんにそう言うと顔を真っ赤にしながら
「そういう事は言わないの!」と怒られた。
照れてるさっちゃんって可愛いな。
「でも、本当に一緒に生活させてもらっていいんですか?彼女とか、これから彼女になるであろうと言う人はいないんですか?私が家にいてたら邪魔でしょ?」
「あぁ、いないよ。彼女なんてここ数年いてないし。」
さっちゃんはニッコリ笑うと私の頭をナデナデと撫ではじめた。
「じゃあ、お世話になります。お世話になる変りに家事全般私が引き受けますね」
「それは嬉しいな。ただ、1人の時は猫に戻るのかな?」
さっちゃんの疑問を聞いて私は固まった。どうなんだ?!
「まぁ、2人でいる時には人間に戻れるし問題ないよね。買い物も言ってくれれば俺が行くし。
そして、明日は2人で瑞希の実家に行って荷物を取りに行こうか。色々持ってくるものあるでしょ?」
「色々とありがとうございます」
さっちゃんっていい人だなぁ~。
そう思っていると、どこからともなく頭上から紙がひら~りひら~りと不自然な程ゆっくりと落ちてきた。
さっちゃんは訝しげな顔をしながら紙を広げて中身をみた。
「あのクソが…」
黒い!さっちゃん黒いよ!!
私をチラリと見るとさっちゃんは2枚ある紙の内1枚を私に渡し、目をそむけた。なんだ…?
『忘れてたけど、キスは1日最低3回しないと元の姿に戻れないよ!そうじゃないと体内エネルギーが足りなくなるので忘れないようにね(ハァト)』
…あぁ…新手のイジメですか。
そうですか…。
チクショー!!!
そう簡単に戻れないって事か!
こんな事までさっちゃんに頼めない!!
神様のアホーーー!!!