CASE5 錬金術士のHow to
依頼を受けたルドルフはルチナに錬金術士のノウハウを伝えるようですがはてさて?
タイゲンからの依頼を受けたルドルフは、ローズバファローが多く生息する、シュタール村から数キロほど西にある高原へ向かっていた。
「このあたりは質がいい植物の素材がよくとれるんだ。タイゲンくんからの依頼を遂行するついてに採取の注意点や、このあたりでとれる素材のこととかにもついて教えていこうかな」
「はい、お願いします!」
高原についたルドルフはルチナに対し、採取のハウトゥーについて教えることにした。
「この木はタイゲンくんの依頼したハガネグリの木だね。よし、ハガネグリの採取を教えることにするよ」
「わわ…思った以上にとげとげしてるね…ちょっと怖いな」
「ルチナちゃん、しっかり教えてもらって、覚えちゃいなさい!」
ルドルフとルチナは灰色のイガのついた栗を大量に実らせた木の下へ歩いていく。
「え、ええと…木登りなら得意です!」
「い、いや、待って!」
ハガネグリの木を登ろうとするルチナをルドルフが制止する。
「上りながらこんな硬いイガを取ろうとするなんて…痛みに驚いて飛び上がっちゃうよ。まず、ハガネグリというのは普通の栗と比べてもイガが鋭く、硬く、重い。なのである程度大きく実ってくると、木から落ちて地に転がる。そういうものを中心に取っていくんだ」
「ふむふむ…覚えておかないと」
ルチナはルドルフの説明した内容を手帳に書き記していく。
「木の下になければ木を蹴るなり揺するなりして実を強引に落とす方法もあるけれど…。これは危険だから、最終手段ということで。それはさておき、君にこれを渡しておいた方がいいかな」
「これは…手袋ですか?」
「ああ、採取用手袋だ。素材の中には素手で持ったり取ろうとしたりすると危ないものもあるからね。手を保護する役割もあるんだ。破れたりしたら僕に言うように。作るからね…」
「あ、ありがとうございます!」
ハガネグリの採取に関する説明を終えたルドルフはルチナに黒い厚手の手袋を手渡す。採取用手袋を見たルチナは目を輝かせる。
「えへへへ、さっそく採取しなきゃ!えへへへ…確かタイゲン君は10個必要と言ってたね…」
ルチナは木の下に落ちているハガネグリを採取していく。
「そうだね…実とイガを分けて行って…こういうふうにね」
ルドルフはハガネグリのイガから実を取っていく。ルチナも見よう見まねで実をとっていくも、ルドルフのようにうまくは取れず、時間がかかっていた。
「よ、ようやく取れました…さて、このイガはどうすればいいんですか?」
ルチナは空になったイガを持ってルドルフに尋ねる。
「ああ、これはイガも使えるんだよ」
「ええ?イガもですか?錬金術の材料になるんですか?」
ルドルフのが答えると、ルチナは矢継ぎ早に質問を出す。
「まあ、確かに錬金術に使えないこともないんだけれども…このイガは魔物退治の武器にも使えるんだ」
「ええ、武器に?」
ルドルフの答えにルチナの頭上にハテナマークが浮かぶ。
「ああ、特に強い力がなく、強い魔術も使えないような駆け出しの錬金術師にとっては心強い武器になるんだ。使い方はいたって簡単。魔物に向かって投げるだけだ。それだけで弱い魔物なら追い払うことができるよ」
ルドルフは手の中のイガの鋭いトゲを指しながら説明を続ける。
「さてと…ハガネグリはこれで十分かな。ルチナ君、次はローズバファロー狩りになるわけだけど…。まあ、積もる話は一休みしながらでいいか…。クールダウンも必要だ」
「はい、わかりました!」
ルドルフとルチナはハガネグリの木の近くで待っているクリセルダとマリーのもとへ向かっていく。
「ルチナちゃん!ルドルフ社長の言っていたこと、覚えられたかしら?」
「た、たぶん…大丈夫かなー?あはははは…」
二人に駆け寄ったクリセルダに対してルチナが自信なさげに答えた。
「まだまだルチナ君は駆け出しだから…一歩一歩進んでいってくれればいいさ…。それよりも、ちょっと一息つこうか」
「きゅむ!!」
ルドルフが鞄からランチボックスを取り出すと、マリーが目を輝かせる、目線がランチボックスから離れない。
「ああ、マリーの好きなパイもあるよ…って…」
「じゅる…あわわわ、す、すみません…もうおなかすきすぎて…」
ルチナもルドルフのランチボックスから目が離れなくなっていた。こうして一同は一休みし、腹ごしらえをすることに。
「きゅむしゃ、きゅむしゃ…」
「マリー、そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ。喉詰まらせるよ…」
ルドルフが目を輝かせながらパイを食べるマリーを撫ぜる。ルドルフはマリーに温かい微笑みを向ける。
「ルドルフ先生、マリーちゃんってホムンクルス…だったんですよね?」
「ああ、そうだね」
「そ、その…どうやって調合したんですか…?材料とか…」
ルチナが尋ねた時。マリーに向けていた温かい微笑みが、能面のような表情に変わる。
「それはだね…言ってしまっていいんだろうか…」
「きゅむ?」
ルドルフの顔が明らかにひきつっていく。マリーはルドルフを見上げ、首をかしげる。
「い、いえ!だ、大丈夫です!急に知りたくなくなりましたので!!そ、それよりも…ルドルフさんの魔術に関して知りたいなーと!ローズバファローに効く魔術あるんですよね?」
ルチナが凍り付いた空気を打破するかのように話を変えた。
「あ、ああ。僕は炎熱系…炎や熱風といった魔術が得意なんだけど…今回の場合、それが使えなさそうなんだ…食材として使う肉が焼けてしまうのは…向こうとしても使いづらいだろうからね…。だから今回は搦め手のような術を中心にだね…。それよりも、君たちはどんなことができる?」
ルドルフはルチナとクリセルダに問いかける。
「あ、あたしは魔術は…そのへんの石とかを浮かせて飛ばしたりくらいしか…」
「ええ、わたしは魔法術は使えないけど弓矢を扱うのが得意です」
ルチナとクリセルダが答えるとルドルフは
「ふむ…そうか…では、そろそろいくとしようか…。ローズバファローが出た時は僕が指揮を執るようにするよ」
「はい!お願いします!」
こうして一行はローズバファロー狩へ向かうことにした。
「突然現れることもあるから、十分気を引き締めていくように…、」
「!きゅむ!きゅむ!!」
辺りを見回すルドルフの足をマリーがさすりながら呼びかける。
「どうした、マリー?」
「きゅむ、きゅむ!」
マリーが指した方向に向き直る。ルドルフたちから数メートルほど離れた場所に、深紅の体毛に包まれ、大きく立派な角を携えた牛がのそのそと歩いているのが見えた。
「いたな…。ルチナ君、クリセルダ君、ローズバファローが突進してきたら、素早く体を横にひねってかわすんだ」
「ひ、ひねり、ですか?」
「ああ。牛や牛系の魔物の目は顔の横についているから正面をはっきり見られないので、素早い動きを追うことが得意でないんだ。かわした瞬間に、カウンターで攻撃をだね」
ルドルフはルチナとクリセルダにローズバファローの突進のかわし方を説いた。2人はこくりと頷く。
「では、わたしがまずは矢を放ってこちらにおびき寄せましょうか、ルドルフ社長」
「ふむ…では、後方支援は任せたよ、クリセルダ君」
クリセルダはルドルフからのゴーサインを受けると、茂みに潜めボウガンを構え、、ローズバファローに狙いを定める。ルドルフたちはクリセルダの放つ矢の進路から外れた場所で待機する。
「ええ…では、放ちます!」
茂みに隠れたクリセルダがボウガンの引き金を引いた。ボウガンから放たれた矢は一直線に数メートル先で草を食べていたローズバファローに突き刺さった。
「グム!グムウウウウウウ!!!」
矢を受けたローズバファローが地鳴り咆哮をあげながらクリセルダの潜む茂みへ一直線へ向かっていく。
「よし、今だ!くりだあああ!」
「きゅむ!!」
「く、くりですか!!」
ルドルフはマリーとルチナとともに、ハガネグリのイガを投げつける。投げられた銀色のイガは弧を描いてローズバファローの額に直撃した。
「グムウウウウウウ!!」
「わ、わわああ!!」
ハガネグリを受けたローズバファローは標的をルドルフたちに変え、怒涛の勢いで向かっていく。地を踏み鳴らすドシンという重みのある足音と耳を劈くような咆哮は駆け出しのルチナを動揺させるには十分だった。
「ルチナ君!ひねらせろ!」
ルドルフが必死に呼びかけると、ルチナは右方向に体を捻らせ、ローズバファローの突進を間一髪でかわすことに成功した。
「よし…今こそ…シャーフ・ヴァルデシュランゲ…!」
ルドルフがローズバファローに向けて手をかざすと、ルドルフの掌からリング状の光が放たれる。光を浴びたローズバファローがよろめく。
「よし、効きつつあるな…このまま眠らせて、即座に永眠させて…」
「グムゥ…ムウウウウ…」
催眠魔術をかけ続けるも、ローズバファローは眠らず、唸りを上げる。眠気を振り払った猛牛は地響きのような唸り声をあげたと思うと、一直線にルドルフへ突進していく。
「な、なに!効かないか!?しまっ」
魔法術を出し続けていたルドルフは咄嗟に動くことができなかった。ローズバファローはどんどん距離を詰めていく。
「せ、先生!」
ルチナが石を浮かせ、飛ばそうとするも一足遅かった。
ドガァァァァッ
激しい衝突音と共に、ルドルフの体は勢いよく突き飛ばされ、地面に頭から落ちて行った。
「せ、先生!先生!?」
「グムゥゥゥゥ…」
荒れ狂う猛牛は青ざめるルチナの方へ向き直る。ルチナは倒れたルドルフに手を伸ばすしかできないでいる…
いかがでしたか?ルチナの運命とルドルフの生死や如何に?次回をお楽しみに!




