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不思議の王国の奇妙な錬金術師  作者: えのころ
vol.1 便利屋ゼルトザームの事件簿
3/9

CASE3 雇っちゃいましょうか

第3話です

「る、ルドルフさん!あたしに錬金術を教えてください!!」


 ルドルフの元を訪れたルチナが発したのは、ルドルフが思ってもいなかった言葉であった。


「え、ええと、僕に錬金術を?」

「はい!お願いします!」


 面食らうルドルフに対し、ルチナの声と表情からは真剣さが伝わってくる。年端もいかない少女の希薄に、ルドルフは少々押されていた。


「そ、それはいいんだけど…錬金術というのはだれしも扱えるものではないからね…まずルチナ君にそういう素養があるかを見せてもらわないことには…」

「ええ!やります、やりますとも!それで、どうすればいいのですか?」



 ルドルフがそう切り出すと、ルチナはルドルフに顔を近づけ、目を輝かせながら詰め寄る。


「お、落ち着いて…とりあえず、簡単な調合をしてもらうだけでいいから、ルチナ君、オフィスへ入ってくれるかな?」

「わ、私も付き添って、大丈夫でしょうか?ルチナちゃんが心配で…」


 ルドルフに対してクリセルダも詰め寄ると、いよいよルドルフの汗が止まらなくなる。


「だ、大丈夫ですから…」


こうして、ルチナの錬金術の素養を確かめるテストが始まった…。


「…とまあ、一通りは解説したけど、わかったかな?」

「は、はい!わかりました!」


 オフィス内のアトリエで、ルドルフが簡単に錬金術の手順と、注意点を解説した。ルチナはわかっているのかいないのか、なんともいえない返答をした。


「まあ、僕もその基本を理解するまでそれなりに時間がかかったわけだけども…それでは君にはポーションの調合を見せてもらおうかな。材料はここにある。どれを使っても構わないよ」

「きゅむ!」


 解説を終えたルドルフが目くばせをすると、マリーが植物や水といった材料の入った小さな箱をルチナの前に置いた。


「ふむ…ええと、どれがいいかな…」


 ルチナは材料を一つ一つ見ていく。ルドルフは目を凝らしながらルチナが選別する様子を見つめる。


「え、ええと…これは…なんだかあまりよくないような…これは…!いい!すごくよさそうだ…」

「ほう…」


 ルチナがある材料を手に取った時、ルドルフは思わず感嘆の声を漏らした。


「ええと、どうですか?」

「ふむ…ふむ。初めてにしてはなかなかいい目利きしてるね…。ああ、これなら調合さえきっちりできれば、まずまずの品物ができると思うよ」


 一通り必要な材料を選ぶと、ルチナはルドルフに選んだ材料を見せる。思った以上の目利きに、ルドルフはうきうきとした様子を隠せないまま続ける。


「こほん。目利きは大したものだけど、肝心なのは調合。これをきっちりできてこそ錬金術師だよ。まず、材料を釜の中に入れて、この錬金棒でかき混ぜていって…」

「は、はい!わかりました、ルドルフ先生!」


 ルチナは緊張した面持ちで釜に向かうと、選んだ材料を釜の中に入れていく。


「ば、爆発したりはしないよね…」


 ルチナが慣れない手つきで錬金棒で釜をかき混ぜていく。


「ものによっては気を付けないとドカンといっちゃうね…。僕も何度かやらかした」

「え、ええええええ!??やっぱり爆発しちゃうんだ…わわわ…」


 ルチナの脳裏に、目の前の釜がドカンと爆発し、自身が黒焦げになる…そんな映像が浮かんだ。ルチナは映像を振り切るように釜をかき混ぜ続ける。そうしていくうちに、釜の中の液体の色が変わっていく。


「ん。この反応は…ルチナ君。この色になってきたら、かき混ぜる速度を落として…」

「は、はい!」

 

 ルチナはルドルフの言葉を受け、かき混ぜる速度を落とした。


「ふむ…ふむ」

「ひゃわあ!?」


 ルドルフが顔を近づける。充血し真っ赤に染まった目と目の下のクマが威圧感を与える。


「あ、あの…やりづらいんですけど…」

「あ、ああ…すまない」

「…きゅむう」


ルドルフは申し訳なさそうに顔を引っ込めた。ルドルフの傍らにいるマリーがため息をついた。そうこうしているうちに…


「ええと、できたみたい、です」

「ああ。どれ、どうかな…」


 ポーションができたという報告を受け、ルドルフは出来上がったポーションを見つめ、においをかいでいく。


「ふむ…これは…思った以上の出来のようだ…。ちょっと試したいところだけど…そんなことで使うわけにもいかないからね…」


 ルドルフはルチナの作ったポーションを見て感嘆の声を上げる。


「ええと、試したいこと?」

「ああ、ちょっとばかりこう自分の脇腹をえぐって…」


ルドルフがさらりと言うと、ルチナの顔が引きつる。


「そのままポーションをぶっかけて、どれだけの効能が…」

「い、いえ!それはしなくてよかったです!はい!」


 ルチナの脳裏に脇腹をえぐり、臓物がこぼれたルドルフがポーションを自分にぶっかける、そんな映像が浮かんだ。ルチナはルドルフが試さなくてよかったと安堵した。


「それはそうと…改めて。君の面倒は僕が見るよ。弟子入りを認めよう」


 ルドルフはルチナに微笑みかけた。


「い、いいんですか!あ、ありがとうござ」

「やったじゃない!すごいわ、ルチナちゃん!!」


 ルチナが喜びの声をあげた瞬間。クリセルダがルチナを抱きしめ、祝福した。


「ええと…弟子入りに関して…錬金術を教えるとともに…」


 ルドルフは弟子入りに関して、説明をしようとする。


「ほんと、やればできる子だと思っていたわ!うん!優秀でかわいくて、もう自慢の妹なんだから!」

「く、クリ姉ぇ…くるし…」


 ルチナは聞ける状況じゃなかった。


「錬金術を教えるとともに…便利屋ゼルトザームの業務も…」


 かまわずルドルフは説明を続けるも、ルチナが聞ける状況ではないのには変わらなかった。ルドルフの顔に軽く青筋が浮かぶ。


「あのさぁ…。これから弟子入りしようってのに浮かれちゃ困るんだけど…」


 ルドルフが低く震える声でつぶやくと、察したルチナとクリセルダが振り向いた。ルドルフの手はアトリエ内のテーブルのふちにかかっていた。テーブルの上でマリーがじとっとした目で二人を見つめている。


「ええと…弟子入りにともない、錬金術を教えるとともに、便利屋ゼルトザームの業務に関しても覚えてもらいたいけど…大丈夫かな?」


 ルドルフは一呼吸置くとルチナに問いかける。


「は、はい!わかりました、ルドルフ先生!」


 ルチナはその問いかけにまっすぐな瞳を向け答えた。ルチナの声を聞いたルドルフは安堵したような表情を浮かべる。


「な、ならば、私も便利屋に雇っていただけますか?書類仕事と魔物狩り、ルチナちゃんのお世話、得意ですから!」

「それは助かる…。今はやることが増えすぎて大変だから…。ぜひミカくんやヘルムートくんも誘ってください…」


 自分も雇うようにと詰め寄ったクリセルダの入社をルドルフは二つ返事で認めた。ルドルフはすでに立っているので精いっぱいと言わんばかりにふらふらとしている。


「で、では先生、さっそく調合に関して詳しく…」


 羽ペンと手帳片手にルチナがルドルフに教えを乞う。その目は錬金術に対する知識欲で輝いていた。


「うん…でも…今日は帰って…今日はもう…」

「きゅむ…きゅむ…」


眠気の限界を迎えて床に崩れ落ちたルドルフをマリーが自室へ引きずっていく。


「…便利屋って大変なのね…」

「わ、わたしたちもああなっちゃうのかな…」


引きずられていくルドルフを見たルチナとクリセルダは今から不安にかられていたのであった…

さていかがでしたか?次回はあるところからの依頼が…?

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