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不思議の王国の奇妙な錬金術師  作者: えのころ
vol.1 便利屋ゼルトザームの事件簿
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case1 便利屋ゼルトザーム

初投稿となります。つたない文章ですが、どうか目を通していただければ幸いです。

 西方大陸のヴァルト王国。豊かな自然と、活気あふれる人々であふれる王国…

その北部にある小さな村、シュタール村には二つの目玉と呼ぶべきスポットがあった。一つは多種多様な鉱石などが採掘される鉱山と、もう一つは…。


「便利屋?」


「そうだよ。報酬さえ払えば、いろんなことを請け負ってくれるんだ。ほら、あれがオフィスだよ」

若い村人が王都から訪れた行商人に小高い丘の上にある赤レンガの建物を指さす。

赤レンガの建物のドアには、看板がかけられていた。


      御用があればご気楽にお尋ねください! 便利屋ゼルトザーム


 一見するとなにを取り扱っているかよくわかるようなわからないような…。それがもう一つの目玉スポット、便利屋ゼルトザームである


「ひぃぃぃ!!ま、まさか緋燕のセリアに見つかるなんて…」

「ふっふーん、いつまで逃げられるかなー?」


 村はずれの林にて、一人のガラの悪そうな男が逃げまどっていた。男を追うのは、白と黒の市松模様の三角帽子をかぶり、マルーン色の外套をまとい、右目にはモノクルいう奇抜な魔法使いのような姿をした長身の女だ。緋燕のセリアと呼ばれた彼女は、追いつかない程度の速度を出す箒に跨り、男を追いかけていく。


「でもま、さっさと済ませてかまわないよね。出ておいで、ルカスくん」


 セリアが懐から筒を取り出し、声をかけると、筒から矢のような速度で何かが飛び出す。


「んばあっ!!」

「な、ななな、魔物ォ!?」


 筒から飛び出したのは銀毛の胴長の狐のような姿をした魔物だった。ルカスと呼ばれた魔物は、男の前に立ちふさがる。全問の魔物、後門の魔女というべきか…。その瞬間だった。


「ウィンドヴンデ」


 セリアの指先が緑色に光ったと思うと、一瞬強い風が吹き、男の頬に一筋の赤い線がが走った。男は突然の出来事と痛みに腰を抜かし、その場にへたりこんだ。


「今のはほんの威嚇。今のうちに投降した方がいいんじゃないかなあ?」


 セリアは悪そうな笑みを浮かべて男ににじり寄り、左手の人差し指を男の喉笛にあてがう。


「あはは…あたしね、さっきみたいに切れ味の鋭い風を操る魔術しか取り柄のない魔法使いなんだけど、指にまとわせるくらいのことならできるんだよ、そしたら…喉から水が飲める男の出来上がりー!やってみる?やってみる?」


 セリアが無邪気そうな声と表情で男に訪ねていく。男の脳裏に、自分の喉笛が鮮血をまき散らせながら穴をあけられていく映像が浮かぶ。


「投降します、投降します!!だから、穴あけだけは勘弁してええええええ!!」


 男は顔面を青くしながら、喚き散らす。


「決まりだねー。えーと、ルカス君、とりあえずこいつ村の駐在さんのところに連れてってよ」

「わかったよ、それ!!」


 セリアの指示をうけたルカスは一回転すると煙に包まれた。煙が晴れるとそこには狐耳をはやした銀髪の少女に化けたルカスの姿があった。ルカスは男を縄で縛るとそのまま村へ引っ張っていった。


「変なことするならその首筋を食いちぎるよ!!」

「し、しません!!」

「ばいばーい♪」


 男を引っ張るルカスをセリアはハンカチを振りながら見送る。


「さて、ついでにお兄様の仕事に役立ちそうな野草でも引っこ抜いて帰ろうかなっと」


 一仕事おえたセリアは林の中を探索し始め、野草や木の実を拾っていく。


「なんでも適当に拾ってくるんじゃないって怒られるかもだけど、いいよねっと」

 セリアは野草や木の実の入った籠を抱えながら村へ戻っていった。
















「懸賞金2万コール。まあこんなもんか」

 村に戻り、ルカスから男の懸賞金を受け取ったセリアは小高い丘の上にあるオフィスへ向かって走りだす。その時…


「ああ、セリアさん!!」

「ん?ああ、ルチナちゃんじゃない、どうしたの?」


 セリアを呼び止めたのは、ルチナと呼ばれた萌黄色の二つ結びの髪が特徴の幼い回立ちの少女だった。その幼い顔には焦りの表情が浮かんでおり、声は震えていた。そばには目つきの鋭い朱色の髪の少年が立っていた。


「ええと、その…」

「ええいじれってえなあ!!俺が説明するから下がってろボケナス!!セリアさん、ミカのやつが毒持ちの魔物に噛まれちまって…」


 焦るあまりうまく話せないでいるルチナにかわり少年がセリアに説明する。手には赤い染みのついた麻袋が提げられており、ぐったりとした様子の高貴そうな服装をした少年を背負っていた。


「そ、それは大変、早くオフィスに入って!」


 セリアはルチナたちをオフィスに入れると、ミカをオフィスの床に寝転がせた。

「とりあえず、社長を呼んでくるから…」


 セリアはオフィスの奥にあるドアを開ける。


「…ふむ…この反応は…とすると…」


 カーテンをかけ、日光のほとんど当たらない部屋の奥の机に、火のともされたランプの灯りを頼りに一人の男が本を読んでいた。


「……ほーら、日光浴とお仕事の時間だよ!!」

 セリアが窓にかけられたカーテンを一思いに開くと、室内が太陽の光に包まれた。


「んへあああああああっ!!!???」

 

 お兄様と呼ばれた目の下のクマと金縁の丸眼鏡、オレンジ色の三角帽子が特徴的な長身の男はセリアの暴挙に飛び上がるほど驚き、素っ頓狂な叫び声を上げた。


「お兄様、依頼が来たよ!お兄様のお仕事!」

「依頼か…わかった、次からは普通に呼べ、そして…仕事中は社長と呼ぶように、セリア専務…よし、マリー、いくぞ」

「きゅむ!」


 気だるげに立ち上がったのはルドルフ。セリアの兄にして、便利屋ゼルトザームの社長

である。肩の上にはゴスロリ風の衣装を着たマルーン色の髪をサイドテールにし、と鋭く尖った耳、目の下のクマが特徴的な60センチほどの小さな妖精のような少女がいた。




「それで、毒と言ってもいろいろあるけど、どんな魔物に噛まれたんだ?」

「ああ、こいつだよ」

 ルドルフに尋ねられた朱色の髪の少年は、麻袋の中から首を切り落とされ息絶えた蛇の魔物の死骸を取り出した。


「ふむ…この大きさにこの模様は…ベノムスネークだな。…ふむ、よく持ってきてくれたね、助かるよ、ヘルムート君」


 ルドルフはヘルムートに礼をいうと、次にミカの足の噛み跡を見つめる。

「ああ、この毒の解毒剤ならすぐにでも調合できるよ、マリー、それまでミカくんの様子を見ていてくれ」

「きゅむ!」


 ルドルフの肩の上に居たマリーがミカの傍らで薄めたポーションを飲ませるといった応急処置を始めた。


「ええと、必要なのはこれと…あと、これか」

 ルドルフはオフィスの片隅のコンテナからいくつかの野草と青い液体の入った瓶を取り出すと、釜の中に入れ、杖でかき混ぜていく。釜の中の真珠色の液体が明るくなっていく。


「ふむ、仕上がるまで2時間といったところか」

「……じとー」

 

ルチナは釜をかき混ぜるルドルフの様子をじっと見ている。


「み、見るのはかまわないけど、少し離れてくれないか?あまり調合中に近づかれるとやりづらいんだ…」

「わわ、すみません!!」


ルドルフがやんわりと注意すると、ルチナは数歩後ろに下がった。

「さて…。頃合いだな」


釜の光がみるみる強くなっていったその時。


「さて、仕上がったな」


光がおさまったとき。釜に入っていた真珠色の液体は透き通った青い液体に替わっていた。


「山師の解毒薬。さて、これを…」

「んぐっ…」


 ルドルフは横たわるミカの噛み跡に青い液体を塗っていく。青ざめていたミカの顔色がどんどん朱に染まっていく。


「ふむ、一晩もすれば全快すると思うよ。さて、よければ余りの解毒薬と失った体力を回復させるポーションも持たせておくけど、どうするかな?」

「お、お願いします…」


 ミカが返答するとルドルフは解毒薬とポーションを持たせる。


「ああ、ありがとな、ルドルフさん、ほらミカ、ルチナ、帰んぞ」

「ありがとうございます…助かりました…」

「無理して立つんじぇねえドアホ!家まで連れてってやるから!ほら!」


 ヘルムートはルドルフに報酬を手渡すとミカを背負い、オフィスから出ようとする。

ルチナはなにか言いたげにルドルフを見つめている。


「ん、どうしたんだルチナ君?」

「い、いえいえいえいえいえいえいえ!!なんでもありません!!」


 ルチナは大きく体を震わせると、オフィスのドアを開け、去っていった。


「なんだったんだ…?」

「なんだったんだろうねえ、でも今日はなかなか儲かったし言うことなし、かな?

それよりも、手配犯を捕縛するついでにいろいろ拾ってきたんだし、使える素材あるかどうか見ていてよ」

 

セリアは籠の中身を無造作に机の上に置いていく。


「……質の低いものしか作れそうにないな、この素材じゃ」

「え」


 それらはお世辞にも良い素材とは言えないものであった。セリアはそのまま固まった。


「…きゅむ」


 固まるセリアの傍らではマリーがやれやれといったふうに小さな肩をすくめていた。


「やっぱそういう採取とかは本業に任せるしかないってことか…」

「そういうことだ。僕くらいになれば目利きもなんのその…」


 ルドルフが自慢げに言い始めた時、オフィスのドアが叩かれる音がした。


「はい、どなたですかっと…」


 ルドルフがドアを開けると、ルドルフ兄妹と似た髪色の長身でにこやかな細目の女性が立っていた。


「ルドルフ、セリア、経営の方はどうかしら?それと、いい魔導書が手に入ったから、二人にどうかな、と…」

「わわわわ、お母さま!?」


 オフィスを訪れたのはヴェロニカ。ルドルフ兄妹の母親にして、便利屋ゼルトザームの経営顧問である。


「あ、ああ…ここのところは…依頼の件数と解決数は…ここ数か月間、大きく落とすこともなく、かといって大きく上がることもなく…といった感じだよ」


 ルドルフが答えると、ヴェロニカは軽くため息をつき、ルドルフの鼻を指で突きつつ詰め寄る。


「落ちてないのはまあいいとして…上がることもない、というのも実績としてはどうなのかなあ?という部分もあるんだよねー…、二人の力量ならこれで頭打ちとは思えないところあるし」

「そ、それはそう、ではあるけど…」


 母親の言葉にルドルフは思わず返答に窮する。


「まあ、だからこそあたしがいるわけだけど…それなら話は早いわね。明日の早朝から経営会議を行うわ」



さていかがでしたでしょうか?

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