001 乙女ゲームの助っ人キャラに転生した
風が吹き、桜の花びらが舞う。
次の瞬間、私は見覚えのある学校の校門前に立っていた。
周りの人達が続々と学校に入って行く。制服にも見覚えがあった。
______間違いない。
私は、『lovelove♡dream』の世界に転生したんだ。
普段からなろう系小説を読み漁っている私はすぐに状況を理解する事ができた。
しかし肝心な“どのキャラに転生したか”が分からない。
立ち止まったまま考えていると後ろから声を掛けられた。
「あの…!」
「はい。誰です…か、」
ふわふわな金髪にうるうるで可愛らしい桃色の瞳。
振り向くと『lovelove♡dream』のヒロインらしき人が立っていた。
衝撃的すぎて思わず尻餅をついてしまう。鞄から生徒手帳が落ちた感覚はあったが固まって動けなかった。
「大丈夫ですか!?」
「…大丈夫です、」
否、全くもって大丈夫なんかではない。
____ヒロイン転生じゃないんかいっ…!!
…悲しいけど、今世はモブとして“自由”な青春をさせてもらいます!!
「生徒手帳落としましたよ。どうぞ」
「ありがとう、ございます」
「あ、自己紹介遅れましたね。私は、ルナ・クロッカスです!貴方は…?」
「私は…」
生徒手帳を開き自分の名前を確認する。
さて、一体どんなモブに転生したのか…。
「ルセ・プリムラ…!?」
聞いたことのある名前に鳥肌が立つ。
もう一度生徒手帳を見る。
ルセは私の前世の名前。プリムラは…助っ人キャラの苗字だ。
「…まじかよ」
どうやら私は一番なりたくなかった、乙女ゲームの助っ人キャラ(笑)に転生しちゃったらしい。
……………………
「始業式長かったですね」
「そうだね、」
転生したのは始業式の直前だったみたい。今は始業式が終わり教室で雑談中。
「あの、ルセちゃんって呼んでもいいですか…?」
「…どうぞ」
「やったぁ!私、ルセちゃんと仲良くなりたいです!」
「…え。」
まさかクラスが同じなだけじゃなくて席まで隣だなんて…。もうモブになれる気がしない。
「私も仲良くしたいなー…、」
「嬉しいです…!」
「よろしく。ルナ」
「よろしくです!ルセちゃん!」
ルナが嫌いな訳ではないが、助っ人キャラはやりたくないのであまり仲良くはしたくないと言うのが本音。好感度を教えるくらいなら全然いい。でも、私は私で青春をしたいのだ。
「皆さん席についてください」
先生が教室に入ってきたことで全員が静かになる。
「これから魔力測定を行います。一人ずつ教卓の前にきてこの水晶に手をかざしてください。この水晶は皆さんの魔力ランクを教えてくれます。授業でも使うので覚えておいてくださいね」
この世界には“魔法”が存在する。風を吹かす事ができる『風属性』、炎を出せる『炎属性』、氷を出せる『氷属性』、人口の半数を占めている草を操る『草属性』。そして、人口のおよそ0.01%しかいない『光属性』と『闇属性』だ。最後の二つはチート能力のようなもので兎に角強い。
因みにヒロインは光属性。主人公補正ってやつね。
魔力ランクはⅮ~Aが一般生徒。Sランクになると生徒会になれる。攻略対象は全員生徒会で、光属性のヒロインは生徒会にスカウトされ、乙女ゲームが始まる。
「次、アクシヤ・スイカズラ」
「はい」
アクシヤ・スイカズラ…。風属性の攻略キャラだ。代々魔力が強い家系の次男で、何でもこなす天才肌の兄と比べられて生きてきたからか、かなりひねくれた性格に育ってしまった。 そう言えば同じクラスだったな。
「…流石スイカズラ家の次男ですね。Sランクです」
「当然ですね」
一年生でSランク…。周りもかなりざわついている。
「次、ルナ・クロッカス」
「は、はい!」
さあヒロイン頑張れ!!
「…」
「こ、これは…Sランク…!?」
「え!?私がSランク!?」
クラス全員が大きく目を開く。アクシヤもかなり驚いている。
「おめでとう。ルナ」
「ありがとうルセちゃん!…えへへなんか自分でも信じられないよ。ルセちゃんも頑張って!」
「うん」
「最後は…ルセ・プリムラ」
「はい」
そっか。助っ人キャラにも魔力はある、でも目立つほどでもなかった気がするし何より助っ人キャラは生徒会にはならない。よし、ぱぱっと終わらせよう。
「…エラー!?」
「え」
「おかしいですね…。測定不能だなんて初めて見ました…」
「もしかしたらこの水晶では測定できない程強い魔力をもっているのかも…」
ルナの言葉でまたクラスがざわつく。でもその考えは恐らくハズレ。私は水晶に手をかざして一瞬で全てを悟った。多分“転生者だから魔力がない”が正解。
「では、アクシヤ・スイカズラ。ルナ・クロッカス。…二人には明日から生徒会の一員になってもらいます」
「はい」
「はい!」
「それからルセ・プリムラ。貴方も生徒会の一員に」
「絶対に嫌ですっ!!」
「「「え」」」
冗談じゃないと私は逃げる様に教室を後にした。
「…なにアイツ」
逆に目をつけられたとも知らずに。
==================================
お読み下さり誠にありがとうございます。
感想、評価等お待ちしております。