000 プロローグ
20〷年 12月24日
「疲れた…」
仕事が終わり、終電で帰る。
私、渡辺流瀬は限界社畜OLであった。
電車に揺られて風に吹かれて、手をコートのポケットに入れながら歩く。
曲がり角を曲がるとイルミネーションが見えて、今日がクリスマスイブなことに気づいた。
ここ数年、会社では仕事三昧。家では乙女ゲーム三昧で、クリスマスなんて祝ってなかった。
「明日…ケーキ買って帰るか」
そんな独り言を呟いた時。
(ドン!)
ぼけーとイルミネーションを見ていたはずの私は、何かと衝突し次の瞬間宙を舞っていた。
余りに突然の出来事で、声は出なかったが直感で死期を悟った。
____このまま乙女ゲームの世界に転生したりしないかな。
「ねえ!流瀬はもうあの乙女ゲームやった?」
「やったよ。スチル回収も完璧」
走馬灯だろうか。高校生の頃の友人との会話を思い出した。
”あの乙女ゲーム”とは私が人生で一番ハマった乙女ゲーム、『lovelove♡dream』のこと。
攻略対象が多く、イベントやスチルも豊富でやりがいがあり、乙女ゲームの代表作とまで言われていた。
「すご!また徹夜したでしょ。くまひどいよ」
「まじか。コンシーラーで隠せたと思ったのに」
「全然だよwほら、こっち向いて。私がやってあげましょう」
「助かるー」
今思えば毎日こんな話をしあえた高校時代が1番幸せだった。あの頃は、こんな限界社畜になるなんて思ってもいなかったし。
「流瀬はさ、もし乙女ゲーの世界に入れるとしたらどのキャラになりたい?」
「……」
懐かしい。この話毎日してたな。
「私は絶対にヒロイン!目指せ逆ハー!」
「私は……モブでも男側でもいいけどあれだけはやだな」
そう、ヒロインに好感度やアドバイスをする、利用されて自由に学園生活を送れない…『lovelove♡dream』作中、一番微妙なポジション
「ヒロインの助っ人キャラ(笑)にはなりたくないかな」
暗転
====================================
読んで下さり誠にありがとうございます。
感想、評価等お待ちしております。