3話 認識と意識
1929年東京のとある病院で三兄弟の1番したとして生まれた山本 勝同い年の友達華子や2番目のお兄ちゃんなどと平和に暮らしていた...そんな彼らの青春物語です...
肌を刺すような冷たい風が吹き、人が温もりを求め始めるような季節
――――1940年 11月10日
「昭和15年 11月10日 国を上げて待望の...」
そんなニュースが流れた。
――――――――――
お兄ちゃんが徴兵されて数ヶ月。大変だけど何とかやっていけてる。たまに来るお兄ちゃんからの手紙をだけが、お兄ちゃんが生きている証拠だった。学校と家事の手伝い。大変だけど毎日。そして華子ちゃんも、お兄さんが亡くなった事から少しづつ傷を癒して行った。
「華子ちゃんの家も来てるらしいけど...」
俺はそんなことを考えていた。俺達は今、帝都 宮城外苑広場にいる。今朝から行われている紀元二千六百年式典に来ている。周りはみな静かだ。今日は天皇陛下もお見えになる。俺は今、 何か神々しい独特な圧を感じる。いや、圧と言うよりかは包容?ただ恐怖とはちがうこの...
「...!」
会場が湧き上がった気がした。内閣総理大臣近衛文麿の先導にて、ついてくる人がいる。
「あ、あれが...」
僕は小さく呟いた。近衛が砂利を踏みしめ、階段を上る。
「これより、紀元2600年祝典を開始いたします。」
と、近衛
<最敬礼>
この放送が流れた瞬間、俺含め全ての人が無意識的に頭を下げた。まるでそうするのを刷り込まれていたように。
「君が代は〜」
国歌斉唱。5000万人を超える人達の合唱は学校でのものとは全く違う。圧巻だ。もちろん、俺も歌っているが。次に近衛総理は寿詞?とやらを読み始めた
「臣文麿、謹みて申す...」
数分間読んだあと紀元二千六百年頌歌というのを歌った。歌詞をよく覚えていなかったが、これもさっきの国歌斉唱に引けを取らないほど、圧倒的だった。
11時25分―――――
「天皇陛下ー」
俺の体に緊張が走った。
『うそっぱち』
そんな言葉が俺の頭をよぎった。だが、ここにいるのは本物の天皇陛下だ。それに俺が万歳をしなければ周りからの目も痛い。
「万歳ー」
「「「万歳!」」」
「万歳ー」
「「「万歳!」」」
「万歳ー」
「「「万歳!」」」
首相の声はなんとも頼りなかったが
言われた瞬間手が上がった。なんだこれは。僕の考えなんてなかったかのように、両手を高くあげた。最敬礼。
「これにて式典を終了いたします。」
なんとも緊張した数時間だった。
―――――――――
今日は家族に言われて紀元二千六百年祝典にやってきた。まだ兄が無くなったことの心の収集着いてないが、勝っちゃんなどが優しく接してくれたりしたおかげで、何とか心の傷も治ってきてる。
「...!」
内閣総理大臣、近衛文麿。あいつだ。支那事変を始めた...私の兄を殺した。なんとも弱々しい雰囲気を感じた。あの男が本当に、2回も総理大臣を務め、この戦争を開始した男なのか?甚だ疑問だ。会場はお見えになった陛下に対して湧き上がっているようだが、私はあの男に対する静かな怒りで震えていた。
「これより、紀元2600年祝典を開始いたします。」
腸が煮えくり返るような思いだ。弱々しい声。なぜあの男が総理大臣なのか。陛下は誰に何を言われ、何を思ってあやつに天命を下したのか。頭の中で何度もそ同じことを考えた。
<最敬礼>
放送が流れた。私は深々と頭を下げた。これは陛下に対してだ。私の兄を殺したあの男は、今すぐにでも、首根っこを掴み、殺してやろうとも思ったが私にはそんな力もないし、なんだかバチあたりな気もする。その後は君が代を歌ったり近衛の寿詞?を聞いたり、また歌を歌った。
「天皇陛下ー」
あー本当にイライラする。何だこの弱々しい声は。これであやつは大東亜新秩序?とやらを発表し、戦争をおっぱじめたのか?
「万歳ー」
まるで赤子に対して「ばんじゃい」とでも言ってるかのような声だ。ここは病院ではないのに。
「「「万歳!」」」
そう思いつつも、陛下に対して私もしっかりと万歳三唱をした。最敬礼。
「これにて式典を終了いたします。」
なんとも締まらない終わり方だ。
帰る時私はとある看板を見た
【祝ひ 終つた さあ働かう!】
あー結局、私達臣民はコマのひとつに過ぎないのか。せっかくの祝典なのに私は、戦争を始めたあの男とその他政府の人間に対する怒りだけが満ちていた。
―――――――――数日後
約5日間にわたる式典も終わり、この国ではまた、質素で我慢の多い生活が始まっていた。そんな中でも俺は家の手伝いをし、華子ちゃんと楽しく生活をしていた。お兄ちゃんからの手紙もこの期間で一通だけ来ていた。嬉しかった。
学校―――――
「ねぇ華子ちゃん」
「どうしたの勝っちゃん」
「今日も学校終わったらどこか遊びに行く?」
「そうだなぁ...」
あの美しい花たちはもう既に枯れてしまっている。叶うことならいつでも見ていたかったが。
「その辺ぶらぶらしようか」
華子ちゃんはそう言う。
「わかった!かけっこでもする?」
僕は冗談交じりによく分からないことを言った。
「いいよ」
即答されて驚いた。こんなへんてこりんな提案を受け入れるとは思っていなかったからだ。
「え?いいの?」
「うん。やることないし。それに勝っちゃんと遊べるなら全部楽しいよ。」
嬉しいし、ちょっと照れくさい。こんな気持ちになったのは初めてだ。
「じゃあ今日華子ちゃんのお家行くね。」
俺はいつも通りを繕いながら話す。
「いや...」
「ん?」
「せっかくなら、集合場所をきめない?」
そんなことは、今までしたことなかった。
「どう?いいでしょう?」
「うん!どこにしようか」
「うーん...い、家のまえの田んぼとか?」
「いつもとあんまり変わらないじゃん」
そんなことを笑いながら話す。
「確かに!でもいいんじゃない?最初だし」
「そうだね。」
そんなことを話しているとすぐ休み時間が終わった。
「じゃあ!」
「うん!」
放課後―――
「母ちゃん!遊び行ってくる!」
「わかったわ。気をつけてね。」
ガラガラガラ―――――トン
扉を勢いよく開け、丁寧に閉める。今日は華子ちゃんの家の前にある田んぼの、あぜ道で待ち合わせなんだ。やることはいつもと変わらないのに、なんだかいつもより楽しみだ!予定より早いけど出発する。数分も歩いてるとあぜ道が見えてきた。
「あっ!」
あぜ道のそばにある電柱に、華子ちゃんがいた。
「はっなこちゃーん!」
俺は大きく元気な声で呼ぶ。僕は駆け寄る。
「あっ!勝っちゃん!」
「おまたせー!」
「ぜーんぜん待ってないよ!いまきたばっかり!」
華子ちゃんは明るく答える。華子ちゃんの笑顔がとても眩しく見えた。
「どうしたの?」
「あぁごめん!つい」
笑顔に見とれてたら返事をするのを忘れてた。
「かけっこするの?」
「あれ適当に言っただけだから...」
「そっかぁ」
少し寂しそうに、どこか遠くの方を見つめる横顔。まだ明るい日がその顔を照らし、陰ができる。
「あ、そうだぁ!」
何かを思いついたようにこっちを見る。目が合った。いやまぁそりゃそうなんだが。
「あの花があった場所まで競争しない?」
「えっ?あ、あぁ!いいよ!」
目が合うなんていつもの事なのに何故か意識してしまって返事が遅くなってしまった。
「どうしたの?さっきから反応変だけど?」
目が合ったのが気になっただけ、とは言えない。なんか本調子にならないなぁ。
「ううん!なんでもない!行こう!」
「そう?じゃあ行くよー?」
「うん!」
僕は構える。
「よーい...どん!」
そういうと俺と華子ちゃんは走り出した。俺の方が早いけれど、負けじと華子ちゃんも着いてくる。そんな健気なあの子を見ていると、なんだか気持ちがほわほわしてくる。
―――――――――
この間の祝典の時の怒りはだいぶ収まっていた。気分転換に今日は勝っちゃんと遊ぶ。勝っちゃんも私もあんまり友達が多い方では無い。だから、私も勝っちゃんも遊べるのは互いだけ。待ち合わせをしよう!なんて言ったけれど、なんでそういったのか、自分でも分からない。たぶん、いつもと違うことがしてみたかったんだろう。それに、なんかいつもより楽しみになってきた。待ち合わせをするからだろうか。
「まだかなぁー」
楽しみすぎて、待ち合わせ時間よりだいぶ早く来てしまった。さすがに来ないだろうけれど電柱に背中を倒しもたれかかっていると、遠くから声かわ聞こえた。
「はっなこちゃーん!」
勝っちゃんの声だ。勝っちゃんもだいぶ早いな、なんて思っていると勝っちゃんが
「おまたせー」
いや、まだ時間よりだいぶ早いよ。勝っちゃん。なんとなく勝っちゃんはここ最近人が変わったような気がする。言葉遣いや顔、そんな感じのは変わっていないが、前よりしっかりしてる気がする。何かあったのかな?そんなことをおもいつつ返事をする。
「ぜーんぜん待ってないよ!いまきたばっかり!」
私は最大限の笑顔を作って勝っちゃん見せた。こんな顔するのはちょっと恥ずかしい。
「....」
かっちゃんの反応がない。私の顔になにかついているのだろうか。
「どうしたの?」
「あぁごめん!つい」
なんか今日の勝っちゃん変だなぁ、なんて考えつつ今日の遊びを聞く。
「かけっこするの?」
「あれ適当に言っただけだから...」
なんだ。勝っちゃんの走りが見れると思ってたのに。
「そっかぁ」
私は残念そうに呟きつつ、何をするか考えようと、山の方を見た。
「あ、そうだ!」
私はいいことを思いついた。花は枯れてしまったがあの花があった所まで競走しようと。あそこは花がなくてもとても綺麗な景色だし、かけっこで勝っちゃんが走ってる姿も見れる。私は勝っちゃんの方を向き、提案する。
「あの花があった場所まで競争しない?」
勝っちゃんと目が合った。なんだか変な感じがする。
「えっ?あ、あぁ!いいよ!」
動揺したような返事に私はつい聞いてしまった
「どうしたの?さっきから反応変だけど?」
本人も自分の言動に対して違和感を持ってるような顔で
「ううん!なんでもない!いこう!」
深堀するようなことでもなさそうだし出発させることにした。
「そう?じゃあ行くよー?」
「うん!」
かっちゃんが構える。
「よーい...どん!」
私がそう言うと、勝っちゃんは走り出した。私は勝っちゃんが走ってる姿が見たかったので、少しだけ遅く走った。あれ?そういえばなんで勝っちゃんが走ってる姿が見たいんだろう?突然そんな疑問が降ってきた。ただ、彼が走ってる姿を見てるとなんだか、心がほわほわする。
そんなふうに思って山まで来たある程度の距離走っていると
「いでっ!」
勝っちゃんが目の前で大コケした。途中途中で私のことをチラチラ見ていたので、そのせいでコケたのだろう。私は心配になりすぐに駆け寄った。
「勝っちゃん大丈夫?!」
「いたた...転んじゃったよ...」
少し顔を赤らめてる彼を見て、なんだか私まで恥ずかしくなってきた。しかし怪我はほっとけないので、近くの小川まで勝っちゃんを連れてくことにした。
「勝っちゃん、近くに流れてる小川まだ行こう?そこで血を流そう」
「う、うん...ごめんね」
「謝らなくてもいいよ、別に勝っちゃん何も悪いことしてないんだし。」
私は勝っちゃんを起き上がらせるために、手を差し出す。勝っちゃんも私の差し出した手を握った。
あれ、なんだろう。身体中が暑くなった気がする。鼓動が早くなる。なんでだろう。あれ?
―――――――――
「いでっ」
華子ちゃんが気になり、後ろを向いて走っていたら、そっちに集中してしまい転んでしまった。
「勝っちゃん、大丈夫?!」
華子ちゃんが数メートル離れたところから駆け寄ってくる。かわいい。
「いたた...転んじゃったよ...」
俺は、調子に乗ったせいで転んだ所を見られた恥ずかしさで顔が真っ赤だった。
「勝っちゃん、近くに流れてる小川まだ行こう?そこで血を流そう」
「う、うん...ごめんね」
「謝らなくてもいいよ、別に勝っちゃん何も悪いことしてないんだし。」
そう言うと彼女は俺に手を差し伸べてきた。俺はその手を無意識的に取った。手意外と小さいんだなぁ。
あれ、なんだこれ。急に心臓の鼓動が早くなってきた。なんでだ、怪我をしたからか?違う。手を取った時に急に...。体が急に暑くなってきた。さっきより顔が暑い。
華子ちゃんの顔も赤くなり、暑そうだ。走りすぎちゃったのかな?多分そうだ。そう自分に言い聞かせ俺は彼女のに体重をかけ立ち上がる。途中勢いが強くなり、そのまま華子ちゃんとぶつかってしまった。
「キャッ」
「うわっ、ごめん!」
倒れこそはしなかったが結構な衝撃だった。
「もう、勝っちゃん!気をつけてね」
「ごめん!なんかふらっとしちゃって...」
そういうと俺たちは手を繋いだまま川へ向かった。心臓の鼓動が早い。少し傾いてきた日が俺たちを照らす。多分そのせいだろう。2人の顔が赤いのは。
3話 [完]
句読点が難しいです。次回はお兄ちゃんとお母さんがメイン