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夏の雪は爆弾と  作者: アルパカ
2/4

2話 わかれ

1929年東京のとある病院で三兄弟の1番したとして生まれた山本 勝同い年の友達華子や2番目のお兄ちゃんなどと平和に暮らしていた...そんな彼らの青春物語です...

トントントン――――

「はぁいどちら様でしょうか」


日が最も高く登り下々の人を見下ろす正午。それはやってきた

「山本康二さんはおらっしゃいますか?」

「えっ...康二は...」

うろたえる親を前に軍服を纏った男は言う

「お母様ですか?お気持ちはわかりますが、居るのならよんでください。康二さんへの」


召集令状(あかがみ)ですよ。」


―――――――――――


「母ちゃんいってくる!」

弟の元気な声が聞こえる。おそらく今日も近くに住む華子さんと遊ぶのだろう。

俺は自室で勉強をしていた。

「大東亜新秩序...」

1938年第1次近衛内閣が発表した文言。アジアを日本、満州、中華民国(しな)で防共し東洋を守ろうとするもの。

「俺ももうすぐかなぁかぁ...」

俺の歳になると政府から赤紙が届く。軍人を集めるためだ。俺は長男でもない次男だ。自分で言うのもなんだが頭は割といい方だし体も弱くない。さらに今は戦争中。もっとも、政府は支那事変と呼んでいるが。

(かあ)ちゃんに置き手紙でも書くか。」

うちは基本的に母親と弟、そして俺で暮らしている。父は俺とは違い体がそこまで強くは無いため現在工場でほぼ住み込みで働いているらしい。

「母ちゃんへ...」

俺は筆を動かす。途中、もしも戦地に赴いた際、自分が死んでしまったらと思うと、言葉に出来ない複雑な気持ちになった。何を書けばいいかが分からない。

1枚、また1枚と書いては捨て、書いては捨て。それを繰り返して、ようやく文章が書けた。内容は今までの感謝や思い出なのど他愛もないようなものだったが。

トントントン―――――

玄関を叩く音が聞こえたした。

「はぁいどちら様でしょうか?」

母親が出る。

「山本康二さんはおらっしゃいますか?」

この家は関東大震災から建て直しているので大して古いわけでも、防音性がない訳でもない。だが、俺には、はっきりと聞こえた。知らない男の声。弟でも、兄でも父でもない。

「えっ...康二は...」

小さく、母親が戸惑う声が聞こえる。なおも男は続ける。

「お母様ですか?お気持ちはわかりますが、居るのならよんでください。康二さんへの」

嫌だ。信じたくない。正直、覚悟していた()()()だった。自分がどれだけ甘い人間かすぐ理解出来た。


召集令状(あかがみ)ですよ。」


聞こえた。信じたくなかったものが真実であると。

「...はい」

俺は大き過ぎずも、よく通る声で返事をした。深呼吸をし、部屋から出て、ゆっくり階段を降りた。

「今...行きます」

家での楽しい時間が続いて欲しい、俺の手に直接召集令状(あかがみ)を渡されたら、その全てが終わりそうだったから。少しでも家にいたい。無駄だとはわかっていても歩みを早くすることが出来なかった。たいして長くも無い廊下をゆっくり、1歩1歩を石橋を叩くように歩く。これが夢であって欲しいという淡い期待を持ちながら。されど、まっすぐ軍人の目を見る。おそらく彼もおなじだろうから。

「...私が山本康二です。」

「貴方が康二さんですね。あなた宛の召集令状(あかがみ)ですよ。」

「こういうのって、投函とかじゃないんですね」

「はい。一応...」

むしろ投函じゃなくて良かった。もし投函されたのなら俺は、この血塗れた紙を引きちぎっていたかもしれない。

「受け取りました。」

「...それではこれで」

そういうと軍人は去っていった。後ろ姿は寂れた町を見ているような気分だった。


―――――――


しばらくの間家の廊下には、()()()()()()()一家庭の親子が立っていた。

勝には俺から話すまで内緒にしておいてくれと母親に言った。こんなこと言ってしまうとあいつなら食いついてくるだろうから。あいつにはまだ...
























ガラガラガラ―――――!

玄関が空いた音がした。雑に扉を開け、勢いよく閉めた。

「なんだ?」

下から母親と弟の声が聞こえる。

「こら勝っちゃん!そんなことしたら扉壊れちゃうでしょ!」

「うるさい!」

その声が聞こえたかと思うとドタドタと階段を上る音が聞こえてきた。扉が開き涙目の弟が入ってきた。俺は気になったので声をかけた。

「おいおいどうしたんだ?」

弟は話そうとしなかったが半ば強引に聞き出した。弟は華子さんと喧嘩してしまったらしい。いや、喧嘩というのは弟に失礼かもしれない。

「そりゃまぁ戦争は良くないわな」

そう言ったら弟は泣き出した。俺も戦争が無益だとは思ってないし弟の気持ちも分かる。たがその行為の愚かさを知って欲しかった。あんなこともあったしな。

「簡単だよ。結局大東亜新秩序なんてのはただの建前に過ぎない。お前が正義だと思ってるそれも所詮は政府が俺たちを都合よく動かすためのプロパガンダってところだな。」

正直軍人を目指し、まっすぐ国のために生きようとしている弟にはきつい話だと思うがきちんと話した。最初はわかっていなかったがたゃんと説明すると弟は何かを決心したかのように家を飛び出した。

「あいつちゃんと謝れるかな」

外は雨が降っていた。全く気が付かなかった。まぁ気にするようなことではないかと思いつつ手紙を折りたたみ机の引き出しにしまった。少し引き出しが重たいような気がした。

―――――――――――――――次の日 朝

「母ちゃん!行ってくる!」

「はいはい。夏休みだからってあんまり行くと迷惑なんじゃないの?」

台所で朝ごはんの片付けをしながら母ちゃんが言う。

「いいの!行ってくるね!」

「はいはい。気をつけてね」

昨日お兄ちゃんに赤紙が届いたのを僕は知っている。ただ、僕は動揺してはいけない。2人が隠すということは、僕に知って欲しくないのだろう。それに昨日、お兄ちゃんにあんな話をされてわざわざその話題をだすほうがおかしい。僕はいつものように遊びに行く。

「どうしようかな...」

今までとはうってかわって僕の足取りは重い。昨日のお兄ちゃんの話。あれは赤紙を貰ったあとの話...なのにも関わらず全くその素振りを見せず、いつも通りのお兄ちゃんで接してくれた。本当に僕はお兄ちゃんの弟で良かったと思う。出かけたはいいものの行く場所がないためその辺をぶらぶらしていた。華子ちゃんの話だと今日葬儀を行うらしい。家族の意向で親族だけでやるので僕は今日は遊べない。遊ぼうとも思わない。あんなことがあったんだたまには家族たちとゆっくりした方がいいはずだ。葬儀だからゆっくりはできないけどね。そうだ、と僕は思いついたように昨日の花の所へ向かう。昨日の道を進む途中には僕の家が見える。これからお母さんと二人で暮らす。一瞬足が止まったがそのまま山をのぼりけもの道のようなところを進みついた。

「わぁ」

雨雲なんてものは太陽の前では意味をなさないと、豪語するかのように赤と白の花は日章旗のように綺麗に残っていた。

「あれって...」

山から見える軍港にでかい船があった。戦艦だ。僕たちの国日本が誇る戦艦。この距離だとなんの艦かは見当もつかなかったが、山からでもわかるその大きさ、独特な圧力のようなもので戦艦だということがわかった。

「日本にはこんなのがあるんだ。お兄ちゃんが戦争に行っても、あの艦のように強いやつが敵をやっつけるんだ!!!」

僕はそんなことを山で言って思い出した。昨日の話を。自分の愚かさを思い知った。


『人対人なの』


敵の国と言えど相手は人間。僕たちみたいに家族がいるはずだ。嗚呼、どうしてそんな争いなんてするのだろう。どうして殺し合うのだろう。そんなことを考えると、さっきまで心強かった艦も急に怖く思えた。ただただ怖かった。自分は攻撃されないし、むしろ守ってもらえるはずのあの艦が。

夕暮れ

僕は今年行われるという紀元2600年式典のことを考えていた。

「式典ってどんなものなんだろうな...きっと、こうすごく大規模にやるんだろうな...」


『お前が正義だと思ってるそれも所詮は政府が俺たちを都合よく動かすためのプロパガンダってところだな。』


結局はそうなのかも。僕が信じていた現人神(てんのうへいか)も所詮はそのプロパガンダの1部にも過ぎないのかな。ぼーっとそんなことを考え歩いていると家が見えてきた


ガラガラガラ―――――


「ただいまー」

「おかえり勝っちゃん。ご飯できてるよ」

「はーい!」

手洗い場で手を洗う。夏なのに冷たく感じた。

「「「いただきます」」」

食卓を囲む家族。雰囲気はどことなく暗い感じがした。国の物資不足らしく、家のご飯も今までよりどんどん質素になってゆく。

「な、なぁ勝っちゃん...」

母ちゃんが話しかけてきた

「...」

お兄ちゃんが母ちゃんの方をじっと見つめる

「あぁごめん、なんでもないよ!ほら、少ないけど早く食べなさい」

僕は一瞬話してくれるのかと期待したがそんなことは無かった。しかし

「なぁ、勝っちゃん」

とお兄ちゃん

「どうしたのお兄ちゃん」

お兄ちゃんは一瞬間を置いてこういった

「お前、俺がもしいなくなったっとしたら、どうする?」

そうお兄ちゃんが口にした瞬間、なんとも形容しがたい空気が流れる。

「い、いきなりどうしたの?」

僕は赤紙の件は知らないフリをした。

「なんとなく、だ」

「そうだなぁ...そうすると、母ちゃんと僕だけになっちゃうから...」

僕は言った

「僕が母ちゃんを支える!そう、補給部隊のようにね!」

僕はなるべくいつもどうりで繕った。

「そうか」

お兄ちゃんは少しニコッとした。そのおかげか空気は少し良くなった気がした。

―――――――数日後

「それじゃあ行ってくるよ」

「康ちゃん...」

「大丈夫だよ。元旦までには帰れるさ。」

少しの間を開ける

「俺、ダメだったわ...。ものすごく情けない」

「どうしたの」

「結局、勝っちゃんには伝えられなかった。赤紙のこと」

「...」

沈黙が続く

「...なぁ母ちゃん」

「どうしたの康ちゃん」

「...勝っちゃんなら大丈夫だから」

「...うん」

「愛してるよ、母ちゃん。ありがとう。そしてこれからも」

この言葉で俺は少し照れくさくなった。感謝の言葉をこんなにも直接、心の底から伝えたのなんていつぶりだろうか。

「康ちゃん...」

母は強い。産まれてくる時も大きな痛みに耐え、家事や育児など、全部請け負う。人一倍悲しみ、辛さを知っている。そんな俺の母親が泣いていた。

「康ちゃん...康ちゃん...」

数分間、別れの挨拶と言わんばかりに抱き締め合った。ちょっぴり痛かった

―――――――――――

「ん...」

いない。部屋にお兄ちゃんがいない。私物の1部もない。嗚呼、そういう事か。なんで何も言ってくれなかったんだろう。嫌だよ。

トン、トン、トン

階段を昇ってくる音が聞こえる。

「お兄ちゃん?!」

僕は淡い期待を込めてそう呼んだ。しかし

「か、勝っちゃん...」

扉を開けたのは康二お兄ちゃんではなく、母ちゃんだった。

「か、母ちゃん...おはよう」

「おはよう母ちゃん...」

なんか少し疲れたような顔をしている

「か、勝っちゃん、あのね康二は...」

母ちゃんが説明しようとする

「大丈夫」

「えっ」

母ちゃんは少し驚いたように声を上げた

「大丈夫だから。全部知ってた」

「え...」

信じていない様子だったが僕の真剣な瞳を見てそれは確信に変わった。赤紙の件から数日空いたおかげで僕は落ち着けている。康二お兄ちゃんがいなくなった。その衝撃は大きい。でもそれは母ちゃんもだ。

「母ちゃん」

「ど、どうしたの」

「今度からは僕...俺が支えるから。」

「....勝っちゃん....」


『そりゃそうでしょ。あんたら3人のうち誰かでもいなくなったら、そりゃまあ、母ちゃんは悲しくて悲しくて死んじゃいそうだよ。』


「母ちゃん」

「勝っちゃん...」

母ちゃんは泣き出した。泣きながらも母ちゃんは言った。康二お兄ちゃんは、自分から僕に赤紙の事を伝えるまで母ちゃんには言わないで欲しいと言っていたこと。でも、赤紙の事を最後まで伝えられなかったこと、そして俺に全てを託したということ。

「...ねぇ母ちゃん。」

「どうしたの...?」

かなり疲れが顔に出ている。

「机を整理しよう。康二お兄ちゃんが帰ってきた時に、綺麗なら嬉しいと思う。」

それを言うと母ちゃんの目には少し元気が戻った気がした。机の引き出しを空けると、そこにはお兄ちゃんが母ちゃん宛に書いた手紙があった。僕も母ちゃんも少し驚いた。

「いいよ。読んできて。」

「でも、整理するんでしょう?」

「康二お兄ちゃんがせっかく書いてくれたんだから、今見よう。」

そういうと母ちゃんは1回にある自室へと戻って行った。今日は久しぶりに華子ちゃんと遊ぼうと思っていたけれど、片付けが先だな。

よし、頑張るぞ


第2話 [完]

今回もよく分からないところあったら教えてくだしい

句読点のつけ方分からない

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