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夏の雪は爆弾と  作者: アルパカ
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仲直り

1929年東京のとある病院で三兄弟の1番したとして生まれた山本 勝同い年の友達華子や2番目のお兄ちゃんなどと平和に暮らしていた...そんな彼らの青春物語です...

大本営帝国(だいほんえいていこく)陸海軍部(りくかいぐん)発表(はっぴょう)

その号令は突然だった


―――――1940年大日本帝国 東京(ていと)


(かあ)ちゃん!日本ってまだ支那(しな)と戦争してるの?」

「そうよ。兵隊さん達が頑張ってるから勝っちゃんも頑張らんとねぇ」

「はえー」

僕の名前は”山本 勝”誇り高き日本男児?だ!僕の夢は今、支那で日本のために戦ってる兵隊さんみたいに勇敢な兵士になって日本を守ること!母ちゃんは兵隊さんになって欲しくないって言ってるけどね!

「母ちゃん行ってくる!」

「気を付けて行ってきなさいね」

「はーい!」

僕は元気よく家を飛び出した。友達の華子ちゃんのところへ遊びに向かう。そんな僕の足取りはとても軽い。

「はっなっこちゃーん!」

僕の家と華子ちゃんの家はとても近くにあるから走って5分もあれば直ぐに着く。

「はぁい!」

中ら元気ある可愛い声が聞こえてきた。華子ちゃんの声だ。ドアがガタガタと音を立てながら開く。

「華子ちゃん、おはよう!」

「おはよう勝っちゃん。今日は何して遊ぶ?」

「今日も山で兵隊さんごっこするか、華子ちゃんがやりたいものあったらそれする!何かやりたいことある?」

「うーん」

華子ちゃんは少し考え込んでからこう答えた

「最近お花が綺麗なところ見つけたの。よかったらそこ行ってみない?」

「お花かぁ....」

僕は少し考えてから承諾した。正直、華子ちゃんと行けるのならどこでも楽しいからだ。

「よし決定だね。それじゃあ着いてきて」

「うん!」

華子ちゃんはどんどん進む。そこまで整備されていない道、更にその脇から伸びているケモノ道?のような所をどんどん進む。

「着いたよ!」

僕は思わず「うわっ」と声を出した。そこには山から見える軍港と青い海、そして日章旗を思わせる赤と白の花が綺麗に咲いていた。

「すっげぇ!なにこれ!でもなんでこんなところに...」

明らかに自然に咲いたものでは無いのは見てわかる。

「じ、実はこれ...」

と華子ちゃん。なんとこの花は華子ちゃんがお小遣いで買ったお花のたねから育った花らしい。僕が喜ぶだろうと前からここに植えていたらしい。

「すごいよ!華子ちゃん!僕こんな綺麗な花初めて見た!」

「えへへ...よ、喜んでくれたみたいでよかった...!」

華子ちゃんはとても嬉しそうだ。そんな嬉しそうな華子ちゃんを見てると僕も嬉しくなる。

「ここすごくお気に入りなの。でもね...」

ブオオオオオオ―――――

艦の音が聞こえた。

「軍艦。あれだけが気がかり」

華子ちゃんはそう言った

「どうして?」

「私はね、戦争は良くないことだと思うの。」

「え?」

華子ちゃんはそう言うと話を続けた

「戦争ってのはね人を殺すの。そんなことがいいことだとは思わないでしょ?」

「違うよ!戦争っていうのは悪者をやっつけるんだよ!」

僕は華子ちゃんの意見に反論する

「ううん。それが真実。戦争っていうのはむやみやたらに人を殺すの。私はね、この国が好きなの。でも...勝っちゃんも習ったでしょ。欧米列強と呼ばれた国々の話。」

「うん。でもその悪い奴らを日本が倒したんだ!日露戦争ってやつ!習っただろ?」

少しの沈黙が続く

「でもね...」

華子ちゃんが口を開く

「日清戦争も日露戦争もそして今行われてる支那での戦いも...人対人なの。わかる?」

「?」

「じゃあ勝っちゃん私のことを殺してよ。」

「え?」

僕は意味がわからなかった

「なんでそんなことしないといけないの?僕は華子ちゃんの事を殺したくはないよ!」

「そういうこと」

「?」

「兵隊さんたちはそういうことをしてるの。ねぇ」

「なぁに」

()()()()()()()って知ってる?」

「なに...それ?」

彼女は語り出す

「私達も習った第一次世界大戦。その独逸帝國(ドイツていこく)と英国、その他いくつかの国でクリスマス...長いところは、元旦まで休戦...戦いを辞めたの。」

「そうなんだ」

「休戦が終わったあと兵士たちはまた殺し合いをしなくちゃいけない...。休戦中は一緒に遊んでいたの。もうそんなのはお友達だよ...。それを殺せる?」

「で、でも!今はそんなことないじゃん!」

「ちがう。」

「え?」

「どうして本当なら一緒に楽しく遊んだり仲良くできる人達が争わなくちゃいけないの...?」

その事を話す華子ちゃんの目には涙が浮かんでいた。

「どうしてって...」

「勝っちゃんが兵隊さん達に憧れてるのは分かってる。それに私も兵隊さん達を悪く言ったりはしない。でもね...」

華子ちゃんは少し間を開けてから言った

「勝っちゃんには人殺しにはなって欲しくないの...!!!」

「....」僕は震えた

「違う!!!!兵隊さん達は人殺しなんかじゃない!日本のために命を懸けて戦ってる正義の味方なんだ!!!」

僕はそのまま来た道に飛び込み駆け出した。正直華子ちゃんが言ってることが正しいというのはわかってた。でも今まで自分が憧れてたもの、信じてたものを一気に否定された気がして、飛び出してしまったのだ。

「ハァ...ハァ...」

僕は大きく息を切らした。気がつけば家の前まで来ていた。

ガラガラガラ―――――――――!!

僕は勢いよく扉を開け

ドン!!!!

勢いよく閉めた

「ちょ、ちょっと!勝っちゃん!そんなことしたら扉壊れちゃうでしょ!」

居間の方から声が聞こえる

「うるさい!」

僕はつい大切な母ちゃんにまで怒ってしまった。

「勝っちゃん!ちょっとこっちへ来なさい!」

「行くもんか!」

僕はそのまま階段を駆け上がり自分の部屋へ逃げていった。

「おいおいどうしたんだそんなに慌てて」

僕のお兄ちゃん。3人兄弟の真ん中。僕が1番下だ。名前は”山本 康二”頭が良くそのうえ、運動もできる。僕のあこがれのお兄ちゃん。

「う、うるさい」

僕はお兄ちゃんにまで悪態を着いてしまった。

「おいおい...ほんとにどうしたんだよ?ほら話聞くぞ?俺はお前のお兄ちゃんなんだから、何かあったら話せ。ほらほら」

半ば強引に言われたので仕方なくさっきのことを話す。

「華子ちゃんが兵隊さんたちは人殺しだって言うんだ。戦争は良くないものだって。」

僕はお兄ちゃんになら共感して貰えると思っていた。しかし

「そりゃぁまぁ、至極当然のことだな。」

「え?」

「そりゃ俺たちは人間なのになんで意味もなく同じ人間を殺さないといけないんだ。そりゃぁ間違ってるって言われても仕方ないし、間違ってるもんなぁ。」

僕は呆気に取られていた。お兄ちゃんが僕の意見に対してここまで反論するのは初めてだからだ。

「お兄ちゃんまで兵隊さん達を悪者扱いするの!?」

「まーまー待て待て落ち着け餅つけ」

「ふざけないで!」

「ふざけてなんか居ないさ!いいからほんとに一旦落ち着けって...」

僕は兄に諭され落ち着きを取り戻した。

「お前の言いたいことは分かるぞ。俺も祖国の兵隊さん達が悪い人だとは言わない。むしろ正義の味方なことはあながち間違いじゃぁない。」

「どういうこと?」

「あーまぁそりゃあれだよ。ほら大東亜新秩序ってやつだよ。」

「なにそれ」

「簡単に言うとだな...うーん...あぁ」

兄は少し悩んだあとこう続けた

「今まで白い人達に襲われてた俺たち黄色い人を日本が中心となって救い出そう...!みたいな?分かるか?」

「日露戦争みたいなこと?」

「んだ。よくわかってんじゃねぇか。」

「じゃあいい事じゃん!」

「まーまー早まるな。いいか?でも今日本が戦ってる国はどこだ?」

「支那!」

「そうだろうなら支那はどこにある?何色の人が住んでる?」

「えっと...」

僕は考えた。

「あっ!アジアにあって僕たちと同じ色だ!」

「んだ。そういうことよ。俺たちの政府は既に矛盾してるんだ。いいか?黄色い人を救うために戦う。それを大義として戦争をする。これはある種のヒーロー...正義の味方ってところだ。だがしかし今戦ってるのは同じ黄色い人だ。」

「どういうことなの」

「簡単だよ。結局大東亜新秩序なんてのはただの建前に過ぎない。お前が正義だと思ってるそれも所詮は政府が俺たちを都合よく動かすためのプロパガンダってところだな。」

「ぷろぱ...?よく分からないけどつまり?」

「あ?あー...」

(結構短くまとめたつもりなんだが...)

「よ、要するに結局のところ俺たちに正義なんてない。」

「えぇ...」

「お前が信じてる正義とやらは嘘っぱち。多分だが金がないとかそんなような理由だろう。」

「うう...」

僕は目からどんどん涙が溢れ出てきた。

「おいおい...泣くなって、そんなになるようなことか?」

「うわぁぁん...」

僕の今まで信じて、憧れて、目指していたものが全て嘘っぱちであるということを理解すると涙が止まらなかった。

「うぅ...兵隊さんたちは...ヒック...悪者なの...?」

「うーん...」

兄は少し考え込ん出からこう答えた

「兵隊さん達ってよりかは、政府が敵なんだろうな。兵隊さん達は中央政府から言われたことを、忠実に守ってるだけだ。」

「政府が悪者?」

「んだべ。兵隊さん達は何も悪くないさ。多分な」

僕は安心したようなしてないような絶妙な気持ちになった。でも心はすっと軽くなった気がした。本当にお兄ちゃんは話が上手だ。僕の言ったことを真っ向から否定するのではなくちゃんと尊重し、それでかつ正しいことを優しく教えてくれる。本当に尊敬できるお兄ちゃんだ。

「僕華子ちゃんに謝ってくる!」

「おう。あんま遅くなんなよ。」

また僕はドタドタと階段を駆け下りる。廊下に母ちゃんがいた。

「ちょっと、勝っちゃん!」

「さっきはごめん!母ちゃん!でも今急いでるんだ!行ってくる!」

「行くってあんた...今外...!」

ガラガラガラ――――――――

「あっ...」

ザアザア

全然気が付かなかった。雨が降り始めていたのだ。でもそんなことは気にせず走り出した

「ちょ、勝っちゃん!?」

途中泥で転びそうになりながらもさっきの場所に着いた。

「えっ...」

そこにはうつむきずぶ濡れになりながら微動だにしないで立っている華子ちゃんがいた。

「ちょっ...華子ちゃん!」

僕の声でようやくこちらを振り返る

「勝っちゃんごめんね。私が悪かった」

「そんなことない!僕が悪かったと思ってる!だから謝りに来たの!」

「うぅ...勝っちゃん...ごめん...ごめん...本当にごめん...私...私...」

「大丈夫。僕こそごめんね勝手に怒って」

「私...私ね...悲しかったの...」

「どうしたの...?」

「ほら私お兄ちゃんいたでしょ。少し歳離れてるけど」

「うん」

「少し前に赤紙届いて出兵したっていう話も...」

「うん...ま、まさか...」

正直ここまでの流れでどういう結末かわかってきた。

「今日ね...殉職したって...手紙が届いたの...だから...だから....」

雨で分かりにくいが泣いている。確実に。僕はどうしたらいいかわからなかった。

「華子ちゃん...」

ギュッ

「うう...勝っちゃん...」

僕は華子ちゃんを抱きしめた

「勝っちゃん...うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

ザアザアとどんどん強くなる雨の音。かき消されていく華子ちゃんの声。ひとりが声を上げたところで雨は上がらない。争いは止まらない。

―――――数十分後―――――

「ちょっと勝っちゃん!ずぶ濡れじゃないの!だから止めようとしたのに...」

「ごめんね母ちゃん。」

「ほら湧かしたから早くお風呂入りな」

「...うん!入るね!ありがとう母ちゃん!」

「ほら服も脱ぎなさい!新しいの置いとくからね!」

「うん!母ちゃんありがとう!本当に!....ねぇ母ちゃん」

「なぁに忙しいのだけど」

「もし僕や康二兄ちゃんが戦争に行ったら母ちゃんは悲しむ?」

「そりゃそうでしょ。あんたら3人のうち誰かでもいなくなったら、そりゃまあ、母ちゃんは悲しくて悲しくて死んじゃいそうだよ。」

「そうなんだ」

「なんでいきなりそんなこと聞いたん?」

「んーんーなんでも!じゃあ入ってくるね!」

「はいはい。出たらすぐご飯だよ。」

「はーい!」

お風呂の中に入りながら僕は考える。



お兄ちゃんも母ちゃんも、僕相手に隠せてると思ってるけど僕は知ってる。



康二お兄ちゃんにも、



赤紙が届いているということを


1話[完]

読みにくかったり口調が安定しなかったり色々すいません...

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― 新着の感想 ―
[良い点] 考えさせられる作品でした。情景描写がしっかりとしていて場面が想像しやすく読みやすかったです。 [気になる点] 読んでいて特に違和感などはなく非常に読みやすかったです。 [一言] 今後にも期…
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