作戦会議 1
信頼している、いつもの三人をメールで呼んで、お願いをした。
昼休みの呼び出しにここまで気を使っている人は私だけなんじゃないか。
なんか、泣けてくる。
昼休み、あまり人気の無い食堂に集まってもらった。
大きな机には4人、不穏な空気を垂れ流しながら、座っていた。
私はごくり、と唾を飲んだ。
「今日、原ちゃんと話し合いをしたいと思ってるんだけど……」
そろそろとみんなの様子を窺いながら、話をする。
面倒だと言われてしまったら、それまでだけど。
でも、と思う。
みんな大学からのまだ浅い付き合いではあるけれど、困ったときに助けてくれるだけの仲ではあると思う。
「手伝えることがあるなら、手伝うよ」
依莉の言葉に感動し、軽く頬に赤みが差す。
心がぽかぽかと温まってきた。
「うん、私も。けどさ」
「うん?」
美園にじろっと見られて、軽く冷や汗をかいた。
「後ろの男性陣はなに?」
指差す先には、二人の男が仁王立ちをしている
いや、それは私が聞きたい。
特に、藤沢くん。
何で君がここにいるんだ!?
ヒロはというと、やっぱり機嫌が悪く、睨みつけるように周りの空気を陰らせている。
「眼福ではあるけどね!」
美園は眉に寄っていた皺を解き、嬉しそうに顔を緩ませた。しかし、依莉は迷惑そうに、瞑子は困惑しきっていた。
何て説明すれば良いのだろう。
適当に誤魔化すなんてもってのほかだ。
だって、私は彼女たちに助けてもらおうとしているのだ。
嘘をつくなんて、出来るわけない。
「僕は、磨夜ちゃんを守るためにここにいる」
すっと、ヒロのよく通る声がした。
「じゃあ、まあいいんじゃない?」
それは放置して、ってこと?
依莉の言葉にぽかんと口を開けていたら、さらにくんの声がした。
「俺も麻生さんのことを守りたいと思ってる」
やっぱり、戸惑いを隠せない。
何でこの2人、私のためにここまでしてくれるんだろう。
「明るいクリスマス計画のために」
「うえ……?」
何を言ってるのか、さっぱりなんだけど、ヒロ。
あまりに楽しそうだから、ツッコミ入れることもできないよ。
そんな私たちの様子を見て、依莉は一言。
「変なやつだ」
確かに。
「つまり、手伝ってくれるってことなんだよね?」
美園は目を輝かせながら、2人を見ている。
「磨夜ちゃんが望めば」
「とりあえず、見守って欲しいな……」
ヒロの申し出に、そうやって返事をする。
「ちゃんと見ててあげるよ!」
輝く笑顔がむしろ怖いんだけど。
ふうと息を吐くと、依莉が肩に「ぽん」と手を置いた。
むしろ、悲しい気持ちになってくるのは、一体!?
「何を話すんだ?」
藤沢くんが、ヒロの視線から自分に注意を集めさせるように言った。
先に話を進めさせてくれようとしているのが分かって、気が楽になった。
少なくとも、彼は味方のようだ。
「とりあえず、嫌がらせをやめて欲しいってこと。このままだと、原ちゃん自体、周りの人に何か言われて生活することになるよって……」
「それだと、逆上しそうだな」
ふう、とみんなため息を吐いた。
巻き込んでしまってすみません。
心の中で何度も謝った。
「原ちゃんって、ヒロ君のファンなんだから、ヒロ君からお願いしてもらえばいいんじゃない?」
美園の言葉に、胸がざわつく。
ヒロが原ちゃんにお願いする……。
そんなの、嫌だ。
何させられるか、分からないじゃないか。
それだけではない。
私が、私が嫌だった。
我が儘な自分の考えに辟易しながら、私はヒロを見た。
ヒロは私に射抜くような鋭い視線を浴びせている。
私は、どうすればいい?
「磨夜ちゃんのためだったら、何でもするよ」
ヒロはそう言うよね。
分かっていたけど、ちょっと悲しい。
「ダメ。それじゃあ、解決にならない。ヒロと私は幼なじみだし、ヒロのことをお願いされてもっと好きになっちゃった原ちゃんが、エスカレートするのは目に見えているもん」
「なんか、生々しいね」
美園の言葉に、苦笑して返答する。
「実体験だからね……」
「磨夜ちゃん……」
瞑子の痛々しげな視線にやっぱり笑って返す。
「ごめんね、磨夜ちゃん」
「ヒロのせいじゃないよ」
原因の一端はヒロにあるかもしれないけど、それが全てじゃない。むしろ、ほんの一部でしょう?
安心させるために、頭を撫でる。
「ま、ま、ま……」
「大丈夫だよ、ヒロ」
「ち、違っ!」