父と息子の秘密のお茶会
更新空いてしまいすみません。
サブタイトルが余りにも素っ気なかったので変更しました。
※内容は変わっていません。
私は『家族』というものを知らない。いや、知らないというのは語弊があるかも知れないけど、まあ知らない。
父である国王は好色男として有名で母である王妃は権力に固執していて、父の寵愛を奪い合う為醜い争いを繰り広げる側室たちと腹違いの兄妹がたくさん。
王族に産まれた時点で家族愛だのどうのこうのは別に興味なくちょっと複雑な家庭事情だってまあそんなもんだろってな感じで特に気にしたことがなかった。だって、それが我が家の普通だ。
でも自分が王になるのなら、まあ王妃一人がいいなと思った。
母や側室たちの熾烈な戦いの末、異母兄を差し置いて王太子になった私に婚約者があてがわれたのはそれからすぐのことだった。
隣国との国境守る国の砦である辺境伯との縁をより強固にすることで最近きな臭い動きをするかの国を牽制しようというよく聞く政略結婚だった。
お互い国を守る良いパートナーとしていい関係が築けたらいいと思っていたのだが、私は存外その婚約者を気に入った。それが愛情に変わるのに時間はかからなかった。
そうそうに父が王位を退き王になった私に妻になった婚約者は私の知らない形の『家族』を教えてくれた。
彼女は7人兄弟の末娘でみんな同じ母親だというので驚いた。
家族みんな仲良くて両親はどんなに忙しくても絶対毎日子供たちと過ごす時間をくれたのだと、自分もそんな両親のようなそんな夫婦になりたいのだと笑う彼女の願いを叶えてやりたいと思った。
愛しい人が命がけで産んだ息子はそれはもう可愛くて愛しくて泣けた。目に入れても痛くないだろう。いや、マジで。
何故、両親はこどもたちにあんな冷たくできたのかなんて一瞬頭によぎったがあいつらは自分の欲と権力のことしか考えてないから仕方ない。
自分が統治するになり内政などもだいぶ落ち着いてきた。大きな天災もなく時勢は平和。
私は今、愛する家族と幸せな日々を送っている。
今朝も妻と息子が可愛かったなんてのほほんと考えながら歩いていると、前方から珍しく俯きながらとぼとぼと歩いてくる息子を発見した。
10歳になったばかりの息子は、ちょっぴりおませさんで何なら私や妻よりしっかりしている。
控えめに言って天才だと思うのは親ばかではないはず。
「うぉ?」
「!!?」
まるで魂が抜けているように生気がない息子は、前から近づく私に気づかずそのままボスンとぶつかってきたのでそれを受け止めた。
「アル、どうしたの?君らしくもないぼうっとして」
「っち、父上・・・」
ビックリしたように目を見開いて私を見上げる息子。
その目は心なしかうるんでいて、この子が娘だったら嫁になど絶対行かせない、断固拒否するところだったので男の子でよかったと内心思う。
息子の肩にそっと手を置いたまま、しゃがんで目線を合わせる。
「今日はシャルロット嬢と定例のお茶会だっただろう?喧嘩でもしたかい?」
幼い息子はその婚約者の名前を出した途端、肩をびくっと震わせた。
ハッハーン。何かあったな、これは絶対。パパと呼んでくれるなら仲を取り持ってもいいな~。
でも面白そうだし放置してみようかな、妻見たいに。
「・・・あ、悪役令嬢とはなんですか?」
「・・・」
今にも泣きだしそうな息子が突然妻の昔の二つ名を口にしたので思わず固まる。
「・・・シャルが・・・あ、悪、悪役れ、令嬢で・・それで」
「(わー息子が可愛い!!誰か絵師呼んできて!!大至急!!今!この瞬間の息子を描いて!!)」
息子が珍しく年相応というか、幼い反応をするので内心大騒ぎである。
しかし妻のように弄りすぎて喧嘩になってはいけないのでカッコいい父上を演じる。
「アル、落ち着いて。ほら、一回部屋に戻ろう。そこでゆっくり話を聞かせて?」
頭を撫でながらそういうとアルは小さく頷く。その拍子に涙が一粒落ちた。
息子の部屋に着き、侍女にお茶を淹れてもらい人払いをする。
親子水入らず。男同士の秘密会議だ。
「さあ、アル。何を困っているのか聞かせて」
紅茶を飲んで少し落ち着いたのか、ゆっくりと頷いて話し始めた
「ことの始まりは、シャルが体調を崩して見舞いに行った時からでした。」
目を伏せて静かに話し出した息子の話を要約すると婚約者が悪役令嬢になると言って婚約解消を求め続けているという。
婚約者至上主義の息子にとってそれは耐え難いことらしい。
「・・・、彼女の為にも婚約を解消した方がいいのでしょうか。」
「いつになく弱気だね、君らしくもない。」
思わず苦笑交じりに言った言葉に息子は不本意そうな顔をした。可愛い。
「アルは彼女と婚約解消したいの「したくないです」
oh・・・食い気味。
「じゃあ、そんなに弱気にならず、どうしたら彼女が婚約解消したくなるのか。作戦を練ってみたらどうかい?」
「作戦?」
「そう、作戦だ。君は得意だろう?」
きょとんとする息子に微笑みながら頭をそっと撫でる。もう嫌がられるかも知れないとヒヤヒヤしたが少し照れくさそうだけど大人しく頭を撫でさせてくれたので安心した。
「因みにね、王妃もそう呼ばれていたよ」
「?」
首を傾げる息子に内緒だよと言って耳打ちする。
「君の母は“悪役令嬢”だったんだよ(うそだけど)」
「母上が?」
それは彼女を気に入らない周りの御令嬢が言い広げた不名誉な呼び名だったけど、彼女はそれを上手く利用していたし私も存外その呼び名が嫌いではなかった事を含ませて当時の話をすれば、息子は妻にそっくりな顔で私と同じ色の瞳を細め思考の海に入っていった。
数分後、悪い笑顔を浮かべた息子が
「父上、有益なお話しありがとうございます。おかげで何とか解決策を練れそうです」
そういったので可愛いけど可愛くないなと苦笑した。
そこでの話を元に彼が作戦を実行し始めたのは12歳の時。
彼がそこからどうその作成を遂行したのかはまた別のお話し。
ブクマ、評価、いいね、ありがとうございます。
あと後2話くらい他者目線の話と3話くらいシャルとアルのお話しを入れて完結となります。
残り5話少々、宜しくお願いします!!